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【レース感想】パリ~ルーベ2024

美しき完全制圧

荒れた石畳が選手に襲い掛かる、「北の地獄」ことパリ~ルーベ。

モニュメント(5大ワンデーレース)の1つであるこのレースは、まるで前週のロンド・ファン・フラーンデレンの焼き直しのような展開になった。

つまり…マチュー・ファンデルプールに、アルペシン・フェニックスというチームに、抗えるライバルはいなかった。

ロンドと同じように、ファンデルプールによる圧倒的な独走勝利。

前年と同じように、ファンデルプールとヤスペル・フィリプセンによるワンツーフィニッシュ。

同じような展開、同じような結果になった理由は、一体どこにあったのか。

少しいつもの感想記事とは違うテイストで、振り返っていこうと思う。

 

ライバルの戦力

まず、やはり大きかったのは、ライバルの不在

ファンデルプールと真っ向からやり合える数少ない存在であるワウト・ファンアールト(チーム・ヴィスマ・リースアバイク)が、骨折のために出場できなかったのは、かなり大きな影響があった。

更に言うと、ヴィスマはファンアールトの不在だけでなく、代役エース候補の2人、クリストフ・ラポルトとディラン・ファンバーレも欠くという、「飛車角落ち」どころではない、とんでもなく厳しい状況に。

はっきり言って、勝負できる体制ではなかっただろう。

 

マッズ・ピーダスンを筆頭に数の利で戦いたかったであろうリドル・トレックも、ヤスペル・ストゥイヴェンを欠いての戦いを強いられていた。

その上に、ジョナサン・ミランを落車により序盤で失ってしまったのだから、こちらもまたかなり苦しい台所事情での勝負に。

マティアス・バチェクの奮闘もあり、ピーダスンを3位に送り込めただけでも御の字と言うべきかもしれない。

 

他には、UAEチームエミレーツがニルス・ポリッツとティム・ウェレンスのコンビで、グルパマFDJがシュテファン・キュングとローレンス・ピシーのコンビで、積極的な攻めを見せるシーンはあったけれども、ファンデルプールに対して力不足なのは否めなかった。

それぞれ、ポリッツの4位にキュングの5位という順位は、望み得る最大限の結果だっただろう。

 

アルペシンの戦力

ロンド同様、アルペシンはチーム力でレースを完全に掌握したと評価していいだろう。

シリヴァン・ディリエ、ティモ・キーリッヒ、エドワルド・プランカールト、オスカー・リースビークの4人は、序盤の展開を厳しくする役割を担った。

彼らの身を粉にした牽引に横風の影響も加わり、5つ星の難易度を誇る「アランベール」突入時には、集団の人数は20人ほどという恐ろしく少ない数に削られていた。

レース後のフィリプセンのインタビューで、「アランベール入り口に設置された減速用シケインまでに集団の人数を減らす」というプランだったと明かされたけれども、ここまで理想的な形で実行できたのは、選手の力だけでなく戦略面のマネージメントも含めた、まさにチーム力の賜物と言っていいだろう。

 

そして、アランベールを抜けてからの「本番」とも言えるレース中盤では、ファンデルプールの他に、フィリプセンと、ジャンニ・フェルミールスが集団に生き残っていた。

現役最強のスプリンターであるフィリプセンに、グラベル世界選手権優勝者のフェルミールス。

フェルミールスは、そのタフさと悪路での安定感を存分に生かして、徹底的に「潰し役」を担う。

フェルミールスだけでは対応できないタイミングではフィリプセンが補う、全く隙のない構え。

結局、アランベールを抜けてからはただの一度も、「危険な抜け出し」というものは許されなかった。

そしてフィリプセンは、ファンデルプールが独走を仕掛けた後に形成された追走集団に、しっかりと入り込む。

ライバルは当然ファンデルプールを追いかけたいけれども、それと同時に世界最強のスプリンターをフィニッシュまで同行させたくはない。

万が一トラブルなどでファンデルプールが追い付かれたとしても、まず間違いなく、脚を温存していたフィリプセンがスプリントで勝つ。

この展開に持ち込まれた時点で、はっきり言って「終戦」だった。

 

ファンデルプールの個の力

そして当然、ファンデルプールの抜きん出た実力が、この結果を掴み取った最大の要因なのは間違いない。

残り59.7km、3つ星の第11セクター「オルシ」で加速した際の、あの出力とスムーズさ。

明らかに他の選手とはレベルの違うバイクコントロール技術により、まるで一人だけ整った舗装路を走っているようなスピードと安定感は、美しさを感じさせるほどだった。

レース後のインタビューで「あそこからの独走を狙った訳では無く、レースを厳しくしようとしただけ」と語る、その恐ろしさ。

相変わらず、一人だけ別次元だ…。

 

そして、約60kmの独走を、なんだか余裕の表情で完遂させてしまうのも、本当に恐ろしいところ。

フィニッシュ地点のヴェロドロームを悠々と走る姿は、およそパリ~ルーベのフィニッシュとは思えないものだった。

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まさに、完全制圧。

ファンデルプールの個の力と、アルペシンのチーム力が融合することによって成された、美しい勝利。

思わず「あっさり勝った」とでも表現しそうになるほど、余裕を持っての勝利にも見える。

しかし、当然ながら「あっさり」などという、勘違いをしてはいけない。

アランベール入り口に新設されたシケインがもたらすものを、驚くほどの的確さで活かした、素晴らしいチーム戦略。

その展開に持ち込むための、4人のアシストの奮闘。

グラベル世界選手権覇者フェルミールスによる、完璧な「潰し役」の遂行。

現役最強のスプリンターでありながら追走の「重石役」を担い、最後のスプリントではしっかりと2位の座を射止めたフィリプセンの強さ。

そして、ファンデルプールの、惚れ惚れするような走り。

ファンデルプールが、アルペシンが、的確な準備をして、多くのものを積み重ねて、その結果として掴み取った勝利なのだ。

その部分に対して、最大級の称賛を送りたい。

素晴らしいレースを見せてくれたことに、本当に感謝したい。

ファンデルプール、そしてアルペシン、本当におめでとう!

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モニュメント3連勝!!

アルペシンはこれで、ミラノ~サンレモ、ロンド・ファン・フラーンデレン、パリ~ルーベと、モニュメント3連勝!!

いや、凄すぎる…!

2年前まではワールドチームではなかったのが、信じられないぐらいだ…。

 

ここまで強いと、「圧倒的すぎてつまらない」とか、「もっと競ったレースを見たい」みたいな意見もあるのだろうけれども…。

個人的には、こういうレースも普通に楽しめるかな。

 

なにはともあれ、4/14のアムステルゴールドレースからは、アルデンヌクラシックがスタート!

こちらは恐らく、アルペシンは戦力的にそこまで活躍は見込めない…はず。

どんなレースになるのか、楽しみにしていよう!!

 

それでは、また!!

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おまけ

レース前の予想ポスト。

1位から4位まで完全的中、どやぁ…!

 

…え?

シンプルに有力選手を並べただけ?

それは、そう。