明確にこの日を狙って、しっかり獲りきる強さ
第8ステージは、終盤に細かなアップダウンが登場し、フィニッシュも4%ほどの登り勾配となるレイアウト。
「アルデンヌクラシック」のようなワンデーレーサー向けのレースになる可能性もあれば、スプリンターが生き残って集団スプリントの可能性も…?
この日の逃げは、ティム・デクレルク(スーダル・クイックステップ)、アントニー・ドゥラプラス(アルケア・サムシック)、アントニー・テュルジス(トタルエネルジー)の3人…って、デクレルク!?
「トラクター」の異名を持つ牽引職人、逃げに乗るのは初めて見たかも…。
メイン集団を牽引するユンボ・ヴィスマは、この逃げに対して最大で5分以上のタイム差を容認する。
残り120km地点の中間スプリントポイントでは、この日もメイン集団で先着争いが発生。
メイン集団の先頭(全体4番手通過)で13ptを獲得したのは、ポイント賞争いでトップに立つヤスペル・フィリプセン(アルペシン・ドゥクーニンク)。
本気でポイント賞ジャージを守りに来るフィリプセン、これは手強い…。
終盤のアップダウン区間までは平穏なレースが続くと思われていた矢先、起こって欲しくなかったトラブルが…。
残り62km、メイン集団で落車が発生。
肩を押さえながら倒れ込んでいるのは…マーク・カヴェンディッシュ(アスタナ・カザクスタンチーム)だ…。
この肩の押さえ方は…鎖骨か…。
ツール歴代単独最多勝を目指していたカヴェンディッシュ、無念のリタイア。
現役最終年、最後のツールがこんな形で終わってしまうなんて…。
その後、カスパー・アスグリーン(スーダル)の飛び出しがあったりはしたけれども、レース展開はあまり激しくはならず、結構な人数を残したまま集団スプリントに突入する流れに。
重量級スプリンターの代表格と言えるディラン・フルーネウェーヘン(チーム・ジェイコ・アルウラー)なんかが生き残っているのか…。
スプリントに向けて緊張感が高まる中、残り6kmで落車が発生。
…総合勢のサイモン・イェーツ(ジェイコ)とミケル・ランダ(バーレーン・ヴィクトリアス)が巻き込まれているぞ。
そして、道路脇に倒れ込んで起き上がれないのは…ステフ・クラス(トタルエネルジー)か。
サイモン・イェーツとランダはメイン集団に復帰できずに47秒のタイム喪失、そしてクラスは残念ながらリタイアとなってしまった。
残り5kmを切って、メイン集団前方で隊列を組むのはリドル・トレック。
マティアス・スケルモースを先頭に5人の選手を並べ、当然最後尾は現役屈指の「登れるスプリンター」であるマッズ・ピーダスンだ。
残り4.5km、大きなラウンドアバウトを利用してトレインを前方へ上げてきたのはアルペシン。
3人のアシストの後ろにフィリプセン…、エースはマチュー・ファンデルプールではなく、あくまでフィリプセンのスプリント狙いか。
リドルとアルペシンが張り合うように最前列で隊列を展開、リドルはコーナーが続くレイアウトでも上手く集団先頭をキープし続ける。
最終コーナーを抜けて残すは800mの緩い登り、リドルはピーダスンの前に未だに2人のアシストを残す完璧な格好だ。
残り400m、ここまでは静かにしていた黄色いジャージ…ユンボのクリストフ・ラポルトがワウト・ファンアールトを引き連れて先頭を奪取!
ファンアールトの背中を捉えるのはピーダスンとファンデルプール、もちろんファンデルプールの後ろにはフィリプセンが控えている。
残り300mを切って、真っ先に仕掛けたのはピーダスン!!
遅れてフィリプセンもファンデルプールの背中から発射!!
ピーダスンを追いかけるのはフィリプセン、ファンアールト、そしてフルーネウェーヘンの3人!!
緩い登り勾配、誰もが苦悶の表情でペダルを踏みこむ…!!
登りスプリントを制したのは…ピーダスン!!
早めの仕掛けから、最後の最後まで粘り切った!!
いやいや、よく最後まで勢いを失わなかったなぁ…!
登りスプリントで残り250mからの仕掛けは、正直言って「…早すぎないか?」と思ったけれども、これはお見事!
これは恐らく、リドルのアシスト陣の奮闘により最終局面でほぼずっと最前線をキープできたことが、ピーダスンの脚を残すことに繋がっている。
ピーダスンに向いたこの日のレイアウトに、チーム全体で懸けていたいたのだと思う。
そしてピーダスンは、これでポイント賞ランキング3位(143pt)に浮上。
昨年のブエルタ・ア・エスパーニャでポイント賞を獲得した登りスプリントの名手、ここまで盤石に見えるフィリプセン(258pt)を脅かす存在となるのか楽しみだ。