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【レース感想】ツール・ド・フランス2023 第9ステージ

超級山岳ピュイ・ド・ドーム

1週目の最終日となる第9ステージは、超級山岳ピュイ・ド・ドームへの山頂フィニッシュ。

道中は4級山岳が2つと3級山岳が1つ登場するだけで、実質ピュイ・ド・ドーム一発勝負のレイアウトだ。

そのピュイ・ド・ドームは、登坂距離13.3km・平均勾配7.7%という数字以上に、ラスト4kmが常に10%を超える急勾配なのが難易度を高くする、超級と評されるのに不足ないプロフィール。

ここまで1週目とは思えない激しさを見せてきた総合争いは、この日も激化するのだろうか。

 

アクチュアルスタート直後に飛び出したのは、山岳賞ジャージを着るニールソン・パウレス(EFエデュケーション・イージーポスト)、マイケル・ウッズ(イスラエル・プレミアテック)、マッテオ・ヨルゲンソン(モビスター・チーム)、アレクセイ・ルツェンコ(アスタナ・カザクスタンチーム)、ピエール・ラトゥール(トタルエネルジー)といった登坂強者に、マテイ・モホリッチ(バーレーン・ヴィクトリアス)やヴィクトル・カンペナールツ(ロット・デスティニー)などの実力者を加えた14人。

総合争いに関わる選手が逃げに入らなかったことで、メイン集団は逃げに10分以上のタイム差を与えて完全に逃げ切り容認モードに。

4級・4級・3級と3つ登場する途中の山岳ポイントは、全てパウレスが先頭通過に成功。

欲を言えば最後の超級山岳も獲りたいところだけれども、3級山岳を過ぎてからのアタックで抜け出したのは、ヨルゲンソン。

この動きを追走する選手も飛び出して、先頭にヨルゲンソン、1分後方の追走にモホリッチ、パウレス、マチュー・ビュルゴドー(トタルエネルジー)の3人、更に40秒後方に逃げていた他の選手、そしてメイン集団は15分以上後方という形で、ピュイ・ド・ドームの登坂に突入していく。

 

残り47km辺りから独走逃げを敢行しているヨルゲンソン、そのペダリングは超級山岳に入っても意外なほど軽快なまま。

第2集団では、やはり山岳ポイントという明確な目的があるパウレスが積極的にペースメイクをするけれども、あまりヨルゲンソンとのタイム差は動かない。

第3集団では、クライマーではなくTT強者のカンペナールツが一定ペースを刻み、この集団にいるクライマーは上手く力を溜められていればチャンスがあるようにも思いつつ、気が付けばヨルゲンソンとのタイム差は2分を超えているのが、なんとも難しいところ。

そうこうしているうちに、ヨルゲンソンはいよいよ残り4kmの急勾配区間に入っていく。

第2集団は1分20秒後方、第3集団は2分15秒後方と、まだ油断はできないけれども逃げ切りもあり得る展開になってきた。

 

膠着状態が続いていた第3集団が散り散りになり、ウッズやラトゥールというエース級の登坂力を有する選手が第2集団に近づいていくと、第2集団からはモホリッチが飛び出しを敢行。

ヨルゲンソンとモホリッチのタイム差がじわじわと縮まっていくのと同時に、ウッズはあっという間にモホリッチを捕まえて、更にはそのまま難なくパスしていく、驚異の登坂力を披露。

残すは先頭のヨルゲンソンのみ、タイム差は30秒強、そして残り距離は1.3kmほど。

これは…ウッズのペースが凄すぎて、このままだと追いつく感じか…?

一方その頃、12分ほど後方のメイン集団ではいつも通りセップ・クス(ユンボ・ヴィスマ)による絞り込みが掛かっていて…。

生き残っているのは、ヨナス・ヴィンゲゴー(ユンボ)、タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)、アダム・イェーツ(UAE)、ジャイ・ヒンドレー(ボーラ・ハンスグローエ)、サイモン・イェーツ(チーム・ジェイコ・アルウラー)、カルロス・ロドリゲス(イネオス・グレナディアーズ)、トム・ピドコック(イネオス)…ぐらいか。

 

急勾配に苦しむヨルゲンソンがいよいよ残り1kmを通過、後方のウッズは…20秒差まで詰めてきている!!

これは…残している脚が違いすぎる。

ウッズは残り500mでヨルゲンソンを捉えると、そのまま更に加速してヨルゲンソンを突き放す…!!

単独先頭に立ったウッズ、フィニッシュへ向かう激坂をダンシングで勢いよく駆け上がっていく!!

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ピュイ・ド・ドーム山頂フィニッシュを制したのはウッズ!!

勝負所を見極めた熟練の登坂力で、自身初となるツールでのステージ勝利!!

ヨルゲンソンの飛び出しに慌てず、モホリッチなどの第2集団も冷静に見送って、後方で力を溜めておいてからの、この走りよ!!

いや~、痺れるね!!

そして、ステージ2位にはウッズと同じく第3集団で温存していたラトゥールが入り、更にモホリッチがフィニッシュ間際でヨルゲンソンを抜き去りステージ3位に入ったのも、かなり示唆的で面白いところ。

しかしそれでも、無念のステージ4位となったヨルゲンソンの果敢な走りは、最大限に称えたい。

と言うか、普通に相当強かったしね。

既に総合タイムを失っているけれども、元々は総合上位入りもあり得ると言われていた期待の若手であるヨルゲンソン。

2週目以降もまた色々トライして欲しいところだ。

 

そして、メイン集団の総合争いは…。

残り2kmを切った辺りでクスが牽引を終え、生き残っているのはヴィンゲゴー、ポガチャル、サイモン・イェーツ、ロドリゲス、ピドコックの5人だけ。

総合3位のヒンドレーは…10秒ほど後方で、なんとか粘ろうともがいているけれども…。

残り1.5km、鋭いアタックを見せたのはポガチャル。

食らいつけるのは…やはりヴィンゲゴーのみだ。

と思ったら、しばらくするとポガチャルとヴィンゲゴーの間にギャップが生じる…!?

その様子を振り返って確認したポガチャルは、更にペースを上げようと踏み込む!

ただ、流石のポガチャルも既に限界寸前で急加速は見せられない、そしてヴィンゲゴーは大きくは離されないようペース走で粘る!!

そんな2人の差は…少しずつ、本当に少しずつだけれども開いていく…!!

スタート前の2人のタイム差は25秒、それを超えるようなことは無さそうだけれども…?

ポガチャルも最後にスパートを掛ける余裕が無いぐらいには限界、そしてヴィンゲゴーはなんとか大きく崩れないままフィニッシュまでたどり着いた結果…この日のタイム差は8秒。

これで、総合首位ヴィンゲゴーと総合2位ポガチャルの差は、17秒にまで縮まった。

 

一応、総合10位までのタイム差を改めて確認。

  • 総合首位:ヴィンゲゴー
  • 総合2位:ポガチャル(+17秒)
  • 総合3位:ヒンドレー(+2分40秒)
  • 総合4位:ロドリゲス(+4分22秒)
  • 総合5位:アダム・イェーツ(+4分39秒)
  • 総合6位:サイモン・イェーツ(+4分44秒)
  • 総合7位:トム・ピドコック(+5分26秒)
  • 総合8位:ダヴィド・ゴデュ(グルパマFDJ、+6分1秒)
  • 総合9位:クス(+6分45秒)
  • 総合10位:ロマン・バルデ(チームDSMフェルミニッヒ、+6分58秒)

いや~、最強の2人による総合争い、1週目から激しすぎるでしょ…!

あれだけやり合って、特に第5ステージでポガチャルがあれだけのタイムを失っていて、結果として17秒しか差が無いのは、見ている側からすると面白すぎる。

そして、総合優勝争いは完全に「2人の世界」になってしまっているけれども、もう一つ注目なのが総合3位争い。

ヒンドレーを1分42秒差で追いかけるロドリゲスは、チームメイトのピドコックが総合8位にいるだけでなく、山岳アシストの陣容では質も量もボーラを圧倒している。

もしかしたら、総合優勝争いとはまた別の、チームの総力を挙げた激しい争いが起こるかも…?

 

いずれにしても、ツールはまだ1週目が終わったばかり。

2週目も3週目も、変わらず素晴らしいレースが繰り広げられることを期待したい!