2週目も激しい幕開け!
第10ステージは、5つのカテゴリー山岳を中心に絶え間なくアップダウンが続く、結構険しい丘陵ステージ。
スタート直後に3級山岳を登ることもあり、逃げ切りが決まりやすそうなレイアウトだ。
大方の予想通り、アクチュアルスタート直後から、逃げたい選手による激しいアタック合戦の展開に。
一旦ミハウ・クフィアトコフスキ(イネオス・グレナディアーズ)などを含んだ7人での抜け出しが決まったかと思いきや、メイン集団はペースを落とさずにこの動きを吸収。
どうやら、総合優勝争いをしているヨナス・ヴィンゲゴー(ユンボ・ヴィスマ)やタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)が自ら動いたこともあり、ペースが上がっている?
そうこうしているうちに、メイン集団からダヴィド・ゴデュ(グルパマFDJ)やロマン・バルデ(チームDSM・フェルミニッヒ)、更にはイネオスの選手達が遅れているとの情報が…。
ただ、流石にこの混乱状態もずっとは続かず、カテゴリー山岳を3つ越えた頃には収まり(いやまぁ、そこまでバチバチでやり合ったのか…という話ではあるけれども)、遅れていた主要選手たちはメイン集団に合流。
そして逃げ集団は、クフィアトコフスキ、ジュリアン・アラフィリップ(スーダル・クイックステップ)、マティアス・スケルモース(リドル・トレック)、ベン・オコーナー(AG2Rシトロエン)、ペッリョ・ビルバオ(バーレーン・ヴィクトリアス)、エステバン・チャベス(EFエデュケーション・イージーポスト)など、かなり強力なメンバーが揃った14人で形成されることに。
3分のリードを持って先行する逃げに対して、メイン集団からワウト・ファンアールト(ユンボ)とマチュー・ファンデルプール(アルペシン・ドゥクーニンク)が飛び出してタイム差を詰めるシーンもあったけれども、流石にこれは届かず。
ステージ勝利は先頭集団で争われるのが確実な状況で、この日最後のカテゴリー山岳である3級シャペル・マルクス(登坂距離6.5km・平均勾配5.6%)に向かっていく。
シャペル・マルクスの登坂で攻撃を仕掛けたのは、クリスツ・ニーランズとニック・シュルツの2人を逃げに乗せたイスラエル・プレミアテック。
まずはシュルツが強烈な牽引でペースを上げ、集団を絞り込みに掛かる。
このペースアップに、アントニー・ペレス(コフィディス)、クフィアトコフスキ、スケルモース、アラフィリップなどは早々に遅れていく。
そして山頂まで残り4km、フィニッシュまで32.5kmの位置から、お膳立てを受けたニーランズがアタック!
ニーランズに追随する選手は…いない!
あっと言う間に30秒ほどのタイム差を作り出したニーランズ、このまま逃げ切りもあり得るか…!?
力強い踏みでそのまま山頂を先頭通過したニーランズに対して、ビルバオ、チャベス、オコーナー、ゲオルグ・ツイマーマン(アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ)、アントニオ・ペドレロ(モビスター・チーム)の5人のみとなった追走集団は、40秒弱のタイム差で下りに突入。
そして更にその30秒ほど後方には、アラフィリップやクフィアトコフスキを含む第3集団もいるけれども…。
フィニッシュまで残すはダウンヒルと平坦区間、ニーランズと追走5人のタイム差は…じわじわ縮まっていく。
ニーランズのペースは決して悪くはなさそうだけれども、下り巧者のビルバオを中心にしっかりと協調している追走の方が、やはりやや強いか。
残り15km、タイム差は18秒。
残り10km、タイム差は14秒。
残り5km、タイム差は僅か8秒。
残り3.2km、遂にニーランズは吸収される。
そして後方の集団とは、未だに20秒以上のタイム差。
これで、ステージ勝利争いは6人での小集団スプリントにもつれ込むことになった。
残り1.8km、スプリントを嫌って早めの仕掛けを見せたのはオコーナー!
ただ、この動きはビルバオが悠々とキャッチ。
このメンバーの中では最もスプリント力があるように思えるビルバオ、冷静で的確な判断だ。
残り1kmではツィマーマンがアタック、しかしこれもビルバオが自らの脚でしっかり封じ込め、文字通り抜け駆けは許さない。
最終コーナーを抜けて、6人での牽制モードに突入。
しびれを切らして残り200mで仕掛けたのは、先頭に出ていたツィマーマン!
その背中にしっかり張り付いていたビルバオは、ツィマーマンの動きに合わせ、腰を上げてスプリント!
一気にツィマーマンを抜き去るビルバオ!!
脚が違いすぎる…!!
強さも判断力も、格の違いを見せつけての快勝!!
ビルバオはこれが意外にもツール初勝利!!
登坂力、スタミナ、パンチ力、そして最終局面での落ち着いた立ち振る舞い。
いや~、見事な勝利だった!!
フィニッシュ後、ビルバオはカメラに向かってヘルメットを指さす。
そこには、つい先日ツール・ド・スイスでの落車で命を落としたチームメイト、ジーノ・メーダーの名が刻まれていた。
インタビューで「ジーノのためにどうしても勝利が欲しかった」と語ったビルバオ。
ビルバオにとって、そしてバーレーンにとって、何としてでも欲しかった、メーダーに捧げるツールでの勝利。
レース前日の休息日にコースを試走するほど、チームはこの日に懸けていた。
改めて、本当に素晴らしい勝利だったと称えたい。