これまた何という展開…!
第19ステージは、カテゴリー山岳は4級と3級がそれぞれ1つずつだけれども、結構細かいアップダウンが続く、何とも形容しにくいレイアウト。
集団スプリントの可能性もあれば、逃げ切り勝利、はたまた残り28km地点の3級山岳(登坂距離2.3km・平均勾配5.9%)での飛び出しもありえそうな…。
前日はかなり難易度の低いレイアウトで逃げ切りを許してしまったスプリントチーム、一体どのように戦うのか。
アクチュアルスタート直後、激しいアタック合戦の幕開けを告げたのは、前日の逃げ切りの立役者であるヴィクトル・カンペナールツ(ロット・デスティニー)。
細かいアップダウンが続く中、なかなか安定した逃げ集団が形成されなかったけれども、4級山岳を越えてから出来上がった先頭集団は9人。
カンペナールツ、ジュリアン・アラフィリップ(スーダル・クイックステップ)、マッズ・ピーダスン(リドル・トレック)、ティシュ・ベノート(ユンボ・ヴィスマ)、マッテオ・トレンティン(UAEチームエミレーツ)、ニルス・ポリッツ(ボーラ・ハンスグローエ)、ジャック・ヘイグ(バーレーン・ヴィクトリアス)、ゲオルグ・ツイマーマン(アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ)、ワレン・バルギル(アルケア・サムシック)と、ここから誰が勝っても驚かないような、かなり強力なメンバーだ。
最大で1分強のリードをメイン集団につけたこの9人だったけれども、ポリッツは残り90.5kmでチェーン切れというトラブルに見舞われてしまい、残念ながら脱落してしまう。
メイン集団は、タイム差を徐々に削りながらレースを進めていくと、残り75kmの中間スプリントポイントを通過した直後、結構な人数が抜け出しにトライ。
この日スプリントで勝負したいであろうアルペシン・ドゥクーニンクからマチュー・ファンデルプールとエースのヤスペル・フィリプセン、同じくスプリントチームのチーム・ジェイコ・アルウラーがエースのディラン・フルーネウェーヘンを含む3人、他にスプリンターとしてはクリストフ・ラポルト(ユンボ)にヨルディ・メーウス(ボーラ)、更には前日勝者のカスパー・アスグリーン(スーダル)などなど…、20人強の割と不思議なメンバーの追走集団だ。
残り65.5km、この追走集団が先頭集団に合流し、先頭は30人前後の大所帯に。
追走集団が合流した直後、カウンターアタックで抜け出しを見せたのは、なんとここでもまたカンペナールツ…!
カンペナールツの動きに飛び乗ったのは、サイモン・クラーク(イスラエル・プレミアテック)1人のみ。
そして50秒ほど後方のメイン集団は、ここから意欲を見せるチームが現れず、一気にペースダウン。
勝負は、先頭の2人と、追走集団に絞られたか。
残り32.6km、最後の勝負所となる3級山岳に突入する直前、先頭ではクラークが脚を攣ってしまい、無念の脱落…。
カンペナールツと追走集団のタイム差は20秒強と、アタック一発で追いつける距離。
そんな局面で仕掛けたのは…前日の勝者アスグリーン!
このアスグリーンの動きに追随したのは、マテイ・モホリッチ(バーレーン・ヴィクトリアス)とベン・オコーナー(AG2Rシトロエン)という、超強力な2人!!
3人はあっと言う間にカンペナールツに追いつき、そしてそのままぶち抜いていく…!!
そのまま3級山岳を3人で通過、後方とのタイム差は20秒前後。
これはまた…なんとも言えないタイム差で、残り28kmの追いかけっこだ。
前日の勝者、2021年ロンド・ファン・フラーンデレンの覇者アスグリーン。
2022年のミラノ~サンレモ覇者、2021年にはツールでステージ2勝を挙げているモホリッチ。
2021年ツール、ステージ1勝を挙げて総合4位に入ったオコーナー。
やはり猛者3人による先頭集団は相当に強く、追走集団とのタイム差は…徐々に広がっていく。
残り20km、25秒差。
そこから追走集団は割れて、追いかける余力のあるメンバーだけで迫って来るけれども、タイム差は大きくは動かない。
一旦は若干の減少傾向になりつつ、残り10kmで28秒差。
そして残り5kmで…32秒差。
この推移の仕方は…逃げ切りだ!
先頭の3人は変わらず30秒以上のリードを保って、残り1kmを通過。
残り500m、並び順は前からアスグリーン、モホリッチ、オコーナー。
残り400m、スプリント力では劣るオコーナーが、一縷の望みを込めて早駆けを敢行!
しっかり合わせてその背中に入るアスグリーン、もちろんモホリッチもアスグリーンの背中を捉え続ける!
残り200m、オコーナーが勢いを失うと同時に、アスグリーンが最終スプリントを開始!
モホリッチはギリギリまでその背中に隠れて、残り50mで飛び出そうと試みる!
完全に横並び、ハンドルを投げ合う2人!!
…どっちだ!?
連日のもの凄い展開…!!
写真判定の結果、数cmの差を制したのは…モホリッチ!!
勝利の報せを聞いたモホリッチは、号泣しながらチームメイトと抱き合う…!
ツール直前、ジーノ・メーダーを事故で亡くしたバーレーンにとって、今大会はいつもと違った意味を持っている。
第10ステージのペッリョ・ビルバオ、第15ステージのワウト・プールス、そしてこの日のモホリッチ。
メーダーに捧げる、大きな大きな3勝だ。