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【レース感想】ツール・ド・フランス2025 2週目振り返り

「宇宙人」どころの話ではない

5日間の変則日程ながら、濃厚と言うか激熱と言うか…とにかくタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツXRG)が衝撃的だった2週目。

その衝撃を、ある程度予想していたはずなのに…ここまで凄すぎるとはね。

 

・第11ステージ

コース終盤は小刻みにアップダウンを繰り返す、アルデンヌクラシック風であり逃げにも向いたレイアウト。

残り15km、逃げ切りを容認された先頭集団から4級山岳で飛び出すのは、ヨナス・アブラハムセン(ウノエックス・モビリティ)とマウロ・シュミット(チーム・ジェイコ・アルウラー)。

2人はマチュー・ファンデルプール(アルペシン・ドゥクーニンク)の猛追もかわし切り、最後はスプリント勝負!

長距離逃げで両者疲弊し切った状態でのスプリント、最後の最後で押し切ったのはアブラハムセン!

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アブラハムセンはこれがワールドツアー初勝利、そしてウノエックスとしてもツールでの初勝利と、メモリアルな1勝に!!

ちなみにメイン集団では、残り5km辺りでポガチャルが落車したけれども、大きなケガはなく、そしてタイムロスもなくフィニッシュ。

この時点では、翌日から始まる「ピレネー3連戦」への影響を心配する声もあったけれども…。

 

・第12ステージ

今大会最初の本格的な山岳ステージは、超級山岳オタカム(登坂距離13.5km・平均勾配7.8%)の山頂へとフィニッシュする、激しい総合争い必至のレイアウト。

道中の1級山岳では、ヨナス・ヴィンゲゴーを擁するチーム・ヴィスマ・リースアバイクが積極的な牽引を行い、攻撃の意思を見せてくる。

しかし、超級オタカムに入るとUAEのティム・ウェレンスが牽引を開始、ヴィスマのアシストが次々と零れ落ちていく。

そして、ウェレンスから牽引を引き継いだジョナタン・ナルバエスが、まるでフィニッシュ直前のような猛牽引を見せると、そのままポガチャルがアタック!!

ポガチャルはヴィンゲゴーを一瞬で突き放し、そのまま11km以上の距離を独走!!

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ポガチャル、強すぎる…!!

ステージ2位のヴィンゲゴーとのタイム差は、なんと2分10秒。

ヴィスマが「動きすぎて」失敗した感があるのを差し引いても、ちょっとこれは…強すぎる。

 

・第13ステージ

ピレネー山脈3連戦の2つ目は、1級山岳ペイラギュード(登坂距離8km・平均勾配7.9%)を駆け上がる、10.9kmの山岳タイムトライアル。

ポガチャルにとって前日のオタカムは、2022年第18ステージのリベンジだった。

そしてこの日は、2023年第16ステージのリベンジ。

山岳タイムトライアルで、暫定トップタイムを44秒も上回るヴィンゲゴー。

そしてそれを、更に36秒上回るポガチャル。

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あまりにも圧倒的。

あまりにも別次元。

ヴィンゲゴーとの総合タイム差は、もう4分7秒にまで広がっている。

ちなみに、ステージ12位に終わったレムコ・エヴェネプール(スーダル・クイックステップ)だけれども…個人タイムトライアルでトップ10に入れなかったのは、プロ初年度の2019年に1度あっただけなので、これが6年ぶり2度目という、異例の大失速。

…前日も早々にペース走に切り替えていたし、少しコンディションが心配ではある。

 

・第14ステージ

ピレネー山脈3連戦の締めくくりは、超級・1級・2級と3つのカテゴリー山岳を越えてから、最後も超級山岳の山頂へとフィニッシュする今大会屈指の難関ステージ。

1つ目の超級山岳トゥールマレーに入ると、第12ステージから明らかに不調だったエヴェネプールがメイン集団からずるずると遅れていき、リタイアを選択する事に。

一方の逃げ集団では、積極的な動きを続けるレニー・マルティネス(バーレーン・ヴィクトリアス)が有力に見えたけれども、1級山岳の登坂で飛び出したのはティメン・アレンスマン(イネオス・グレナディアーズ)。

アレンスマンは、メイン集団に対して3分強というなんとも言えないタイム差で最後の超級山岳に突入。

メイン集団ではポガチャルとヴィンゲゴーがそれなりにバチバチと勝負をしたけれども、アレンスマンは素晴らしい粘りの走りを見せて、そのまま逃げ切りに成功!!

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今大会はかなりの苦戦を強いられているイネオスに、価値ある1勝をもたらした!

そして総合争いを繰り広げている2人は…ポガチャルがフィニッシュ手前でスプリントを仕掛けて、4秒差を付けてのフィニッシュ。

やはりポガチャルは強し、しかしヴィンゲゴーも闘志は失っていない。

 

・第15ステージ

コース中盤に3つのカテゴリー山岳が登場する、かなり逃げ切り向けに見えるレイアウト。

スタートからの1時間で50kmも消化するハイスピード展開を経て、そして2つの3級山岳を越えると、8人の先頭集団が逃げ切り勝利を目指す格好に。

残り43.6kmのアタックで抜け出したのは、今大会ここまでポガチャルのアシストとして活躍を見せているウェレンス。

2級山岳を越えてからの緩い登り、そしてその後の長いダウンヒル区間を快調に飛ばし、リードを確定的なものへと広げる!

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ウェレンス、嬉しいツール初勝利!

そしてこの勝利で、全グランツールのステージ勝利を達成!

ベテランらしい機を見ての飛び出し、そして力強い独走、素晴らしかった!

 

3週目の見どころは?

総合首位ポガチャルと総合2位ヴィンゲゴーのタイム差は、既に4分13秒にまで開いている。

よほど大きなトラブルやとんでもないレベルのバッドデイ、もしくはリタイアがない限り、「決まった」と言っていいはず。

しかしそれでも、ヴィンゲゴーはポガチャルを崩すために、攻撃を続けるはずだ。

シチュエーションも両者のコンディションも違うけれども、狙うは2023年の再現。

2023年のツール第17ステージ、特大のバッドデイにより、ポガチャルが5分45秒の遅れを喫したあの大事件。

ただ、あの時のような「綻び」は、今のポガチャルには見受けられない。

極めて難易度の高い…ほぼ現実的ではないミッションへの挑戦になりそうだ。

まずは、第16ステージの超級山岳モン・ヴァントゥー。

そして第18ステージは、奇しくも2023年ツール第17ステージと同じく、超級ロズ峠へのフィニッシュ。

とにかく…、どれだけ両者のタイム差が開いていようとも、ハイレベルな山岳勝負を期待したい。

 

そして、総合争い以外…、ポイント賞、山岳賞、ヤングライダー賞は、どれも混戦模様。

これらに関しては、現段階で誰が有利なのか、最終的に誰が勝つのか、全く分からないと言っていいレベル。

それぞれの思惑がぶつかり合い、更にはステージ勝利争いや総合争いと絡み合い、一体どんな展開になるのか。

きっと、ロードレースの醍醐味と言えるような、筋書きのないドラマが待っている。

 

残り6ステージ、楽しんでいこう!