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【レース感想】ツール・ド・フランス2025 3週目振り返り

「予想外」が多かった3週目

超級山岳の山頂へフィニッシュするステージが3つも登場する3週目は、結構意外な展開が多かった印象。

 

・第16ステージ

中盤までの平坦基調から、最後は「魔の山」モン・ヴァントゥーの山頂へとフィニッシュする、シンプルなレイアウト。

モン・ヴァントゥーの入り口で逃げ残っている選手は…追走も含めて7人、先頭とメイン集団のタイム差は6分以上あるので、逃げ切りが濃厚か。

先頭から真っ先に飛び出したのはエンリク・マス(モビスター・チーム)、しかし追走から追い上げてきたヴァランタン・パレパントル(スーダル・クイックステップ)とベン・ヒーリー(EFエデュケーション・イージーポスト)が、マスを追い抜いていく。

このまま2人で…と思いきや、最終盤でサンティアゴ・ブイトラゴ(バーレーン・ヴィクトリアス)とイラン・ファンウィルデル(スーダル)も合流。

ファンウィルデルは最後の力を振り絞ってヴァランタン・パレパントルのために牽引!

ヴァランタン・パレパントルはその働きにしっかり応え、ステージ勝利を掴み取る!!

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エースを失ったチームに歓喜をもたらす、価値ある逃げ切り勝利!

いや~、勝ち方も劇的だった…!

 

そしてメイン集団は、この日もタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツXRG)とヨナス・ヴィンゲゴー(チーム・ヴィスマ・リースアバイク)の一騎打ちに。

ヴィンゲゴーが何度か切れのあるアタックを繰り出していたけれども、ポガチャルは着実にそれを防ぎ切り、逆に最後はスプリントで2秒の差を付けてフィニッシュ。

やはり、ヴィンゲゴーは途中でポガチャルを千切らないことには、どうにもならないな…。

 

・第17ステージ

大きな起伏が登場しない、今大会最後の純平坦レイアウト。

雨の中で意外と粘った逃げも、残り4.3kmでメイン集団に捕まり、勝負はやはり集団スプリントの展開に。

しかし、残り1kmのバナー付近、集団の前方で大規模な落車が発生。

難を逃れたのは…僅か15人ほどと、想定よりもかなり少ない人数でのスプリント勝負に。

残り200m、ポイント賞ジャージを着るジョナタン・ミラン(リドル・トレック)がスプリントを開始!

ヨルディ・メーウス(レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)が追うけれども、そのままミランが勝ち切る!!

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ミラン、ポイント賞獲得にぐっと近づくステージ2勝目!!

やはりそのトップスピードは、限られたごく一部の選手以外は勝負にならないような、別格のものだね~!

あとは…中間スプリントでポイントを積み重ねつつ、タイムアウトにならず完走できるかどうかだ。

 

・第18ステージ

超級山岳が3つも詰め込まれた、今大会の最難関ステージ。

1つ目の超級山岳グランドンでは、なんと総合5位のプリモシュ・ログリッチレッドブル)、ヴィンゲゴーの重要アシストであるマッテオ・ジョーゲンソン(ヴィスマ)、更にはティメン・アレンスマン(イネオス・グレナディアーズ)やベン・オコーナー(チーム・ジェイコ・アルウラー)など、かなりの実力者を含む逃げが形成される。

2つ目の超級山岳マドレーヌ峠では、メイン集団でヴィンゲゴーがアタックを仕掛け、当然ポガチャルとはしっかり反応して、結果的に2人で先頭に合流することに。

3つ目の超級山岳ロズ峠を前にして、ステージ勝利を目指すべく飛び出しを図ったのはオコーナーとエイネル・ルビオ(モビスター・チーム)、そしてこの2人になぜかジョーゲンソンが反応して、3人で新たな先頭集団を形成。

長いロズ峠の中腹、オコーナーが残り16km辺りで仕掛けると、独走に持ち込むことに成功!

オコーナーは3分後方のメイン集団からも逃げ切り、そのままステージ勝利!!

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16kmで3分差だと、結構厳しいかなとも思ったけれども…!

総合争いからは早々に脱落しながら、改めて意地を見せてくれた!

 

そしてメイン集団は、ヴィンゲゴーのアタックを防ぎ切ったポガチャルが、この日も手痛いカウンターアタックをお見舞いして、9秒のタイム差を付けることに成功。

これで、総合タイム差は4分26秒。

流石にこれは…逆転の可能性がほぼ無くなったか。

 

第19ステージ

コース短縮措置がありながらも、超級・2級と山岳をクリアしてから、最後も超級山岳ラ・プラーニュを駆け上がる、今大会最後の山岳ステージ。

この日もログリッチが逃げに乗るサプライズがありつつ、メイン集団も人数を減らしながらハイペースを刻み、残り21kmでログリッチを吸収。

超級山岳ラ・プラーニュで真っ先に仕掛けたのは、アレンスマン。

このアレンスマンの動きに反応したのは、ポガチャルとヴィンゲゴーのみ。

ステージ勝利を狙うアレンスマンはそこからもアタックを重ね、そしてポガチャルとヴィンゲゴーにはそれを追う強い理由もなく、アレンスマンは残り13kmから独走を開始。

最大で30秒ほどのリードを許されたアレンスマン、最後はペースを上げるメイン集団に迫られながら、なんとか2秒差で逃げ切りに成功…!!

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逃げに乗っていた1勝目と違って、この日はメイン集団から飛び出しての勝利…!!

自ら仕掛ける姿勢も含めて、本当に素晴らしかった!!

 

そしてポガチャルとヴィンゲゴーは、タイム差なしでのフィニッシュ。

残す2ステージは、トラブル以外で大きなタイム差の付きようが無い。

ポガチャル、4度目の総合優勝は実質確定だ。

 

・第20ステージ

4つのカテゴリー山岳を筆頭に、絶え間なくアップダウンが続く逃げ切りに適したレイアウト。

長いアタック合戦の末に形成された逃げは、ジョーゲンソン、ティム・ウェレンス(UAE)、カーデン・グローブス(アルペシン・ドゥクーニンク)など、様々な脚質の実力者を含んだ13人。

雨で路面状態がかなり悪いのが見て取れる中、最後の4級山岳からのダウンヒルで落車が発生してしまい、先頭集団は分断。

そのまま先行する流れになったのは、グローブス、ジェイク・スチュワート(イスラエル・プレミアテック)、フランク・ファンデンブルーク(チーム・ピクニック・ポストNL)の3人。

残り17km辺り、スチュワートとファンデンブルークが先頭交代を巡ってお見合い…と言うかあからさまに「揉めて」ペースを落としたのを尻目に、しっかり踏み続けたグローブスが一気に抜け出す格好に!?

そのまま最後まで独走を維持したグローブス、まさかの独走勝利…!!

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スプリンターが逃げに乗り、小集団でのスプリントではなく、独走で勝ってしまうとは…!!

ヤスペル・フィリプセンにマチュー・ファンデルプールという、チームの2大エースがリタイアしたからこそ巡ってきた望外の好機を、しっかり勝利につなげるその強さよ!

こういったことが起こり得るのが、逃げの醍醐味だ。

 

・第21ステージ

恒例のシャンゼリゼ周回コースが、ラスト3周は石畳の4級山岳「モンマルトルの丘」を含む周回コースへと変更された、ある意味では今大会で最も注目されていたレイアウト。

雨の影響を考慮されてラスト3周はタイム差の付かないニュートラル措置となったこともあり、1度目のモンマルトルの丘の登坂で集団から遅れていく選手がかなり多い展開に。

2度目のモンマルトルの丘では、ポガチャルがペースアップを仕掛け、集団に生き残ったのは僅か6人。

そして最後のモンマルトルの登坂、ポガチャルの加速…にカウンターアタックを見舞ったのは、ワウト・ファンアールト(ヴィスマ)!!

ファンアールトはそのまま独走に成功、最後はお得意のスタンディングガッツポーズでフィニッシュ!!

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ここ数年はケガなどの影響もあってなかなか満足のいくパフォーマンスを見せられていなかったけれども、やはりファンアールトは強い…!

素晴らしいアシスト(牽引、削りのアタック、重石役…!!)をしてくれたジョーゲンソンと共に、最後の最後でポガチャルに特大の一矢を報いてみせた!!

 

そして4位でフィニッシュしたポガチャルは、2年連続、4度目のツール総合優勝!!

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リードを築いてからの「ディフェンシブな走り」は、新境地であると同時に、想定していた通り…いやそれ以上に、盤石すぎる強さ。

今までも散々言われてきたけれども、今まで以上に、まさに圧倒的な3週間。

現役最強の評価に、一切の疑念無し。

本当に、ただただ強かった。

 

変わるもの、変わらないもの

改めて、最終成績を確認してみよう。

 

  • 総合優勝:タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツXRG)
  • 総合2位:ヨナス・ヴィンゲゴー(チーム・ヴィスマ・リースアバイク)
  • 総合3位:フロリアン・リポヴィッツレッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)
  • ポイント賞:ジョナタン・ミラン(リドル・トレック)
  • 山岳賞:タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツXRG)
  • ヤングライダー賞:フロリアン・リポヴィッツレッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)
  • チーム総合賞:チーム・ヴィスマ・リースアバイク

 

総合優勝のポガチャルに関しては…もう、何を語ればいいかね?

ジョアン・アルメイダの早期リタイアもあって、山岳アシストがそこまで機能しない中、それでも余裕で総合首位を守り切るとか…ちょっと訳が分からない強さ。

3週目に「ディフェンシブな走り」に徹したのは、また一つ高みへと上昇した感もある。

 

総合2位のヴィンゲゴーは、第5ステージと第12ステージ、明らかなバッドデイが2つもあったのが痛すぎた。

しかし…グランツールで総合エースを務め始めてもう5年、バッドデイを初めて見た気がする。

それでも、やはり長い登坂ではポガチャルに全く引けを取らないので、覇権奪還に向けてまた頑張ってほしい。

 

今ツール最大のサプライズと言っていいのが、総合3位に入ったリポヴィッツ

昨シーズンまでより明らかに実力が高まった状態で迎えたツールだったから、期待はしていたけれども、ここまでやるとは!

登坂力よし、TT力もよし、安定感も証明、経験も積んだ…ということで、今後が本当に楽しみだ。

 

乱戦も予想されていたポイント賞は、ミランが初受賞

平坦スプリントステージが「荒れる」ことも多かった中、しっかりステージ2勝するだけでなく、中間スプリントでも積極的に稼いでこの結果に。

大きな体を揺らしながらの大迫力スプリントは、やはり強かった。

 

この5年ほどで、ステージレースにおいて展開の激化と高速化が進んだのは、間違いない。

「休息日のような平坦ステージ」というのは激減して、選手は常に緊張感を漂わせながらレースを走っている。

その影響もあってか、それとも強すぎる個の存在の影響か、「実質的な総合優勝争いに加わっている選手の少なさ」は…総合3位のリポヴィッツでさえ11分遅れと、まあ驚くようなことになっている。

この状況が続くのか、それともさらに加速していくのかは、まだ分からない。

近い将来、ポガチャルとヴィンゲゴーの時代が終わりを告げたとき、一体どうなるのかは、誰にも分らない。

どうなるのか分からない…何かしらの変化が起こるというのは、ロードレースに限らず、スポーツの常ではある。

それでも、変わらず存在する魅力も、当然存在するはずだ。

エースとアシストの役割分担、目指すものの異なる各チームの思惑、コースレイアウトと脚質の妙など…、そういった「ロードレース特有の要素」が絡み合って生まれる筋書きのない展開は、変わらず魅力的なはずだ。

それに、もしかしたら変化によって新たなる魅力がもたらされる可能性もある。

変化を避けられないかもしれないけれども、それによって生まれた新たな側面をしっかりと受け止めて、楽しんでいくことは…きっと悪くない体験になるはずだ。

 

ロードレース観戦歴が長くない自分がこんなことを言うのはあれだけれども…、きっと我々は、過渡期の中にいる。

変化の真っ最中を、目撃している。

色々と戸惑うことも多い。

意見や好みが衝突することも、時折ある。

誤解を恐れずに言えば、もどかしさや物足りなさを感じる瞬間もある。

それでも、ロードレースは面白い。

完璧ばかりではないかもしれないが、やはりロードレースは面白い。

個人的には、改めてそんなことを感じる3週間だった。

 

とにかく…これからもロードレース観戦を楽しんでいこう。

この素晴らしいスポーツを、存分に楽しんでいこう。

それでは、また!!

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