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【レース感想】ツール・ド・フランス2023 第11ステージ

「スプリンター戦国時代」に終止符か

第11ステージは、4級山岳が3つ登場するけれども全体の難易度はそこまででもなく、集団スプリントが予想されるレイアウト。

スプリンターにとっては、この日を逃したら次のチャンスは第18ステージまで待たなければいけないので、チーム総力を挙げて獲りにくるはずだ。

 

この日の逃げは、アンドレイ・アマドール(EFエデュケーション・イージーポスト)、ダニエル・オス(トタルエネルジー)、マティアス・ルーヴェル(アルケア・サムシック)の3人。

最近の傾向通り、メイン集団はこの3人に最大でも3分を超える程度…と言うか、殆どの時間帯で2分以内のタイム差しか許さず、ガッチリとコントロール

中盤以降の細かいアップダウン区間に入るとメイン集団はペースを上げ、逃げるためには更なるペースアップを求められたルーヴェルとアマドールはたまらず先頭から零れ落ち、気が付けばオスの単独逃げに。

オスは雨の中で1人奮闘を見せ、一時はタイム差を拡大するような動きも。

ただ、流石にこの日のレイアウトでメイン集団の力に抗える訳はなく、残り13.5kmでオスも吸収。

やはり集団スプリントに向けて、レースは進んでいく。

 

残り10kmを切ってくると、アルペシン・ドゥクーニンク、スーダル・クイックステップ、ロット・デスティニー、バーレーン・ヴィクトリアスなど、有力なスプリンターを抱えたチームが集団前方で隊列を展開。

ただ、アルペシンのトレインには、これまでのステージで強烈なリードアウトによってヤスペル・フィリプセンの勝利をお膳立てしていたマチュー・ファンデルプールがいない…?

残り5km、先頭に出てきたのはユンボ・ヴィスマのトレイン。

ワウト・ファンアールトでのスプリント勝利を狙うと同時に、総合首位ヨナス・ヴィンゲゴーを危険回避のために前に連れてきた。

残り3km、ラウンドアバウトをいくつか通過した事で各チームの隊列が乱れる中、未だにユンボが先頭をキープ。

ただ、クリストフ・ラポルト、ヴィンゲゴー、ファンアールトと並べるトレインは、ヴィンゲゴーの危険回避としては100点だけれども、ファンアールトのスプリントに向けては既に力を使いすぎている気も…。

残り2km、綺麗なトレインを組めているチームがいないやや混沌とした状態、前方に人数を集められているという意味ではいい格好なのはアルペシン、ロット、ユンボ辺りか。

集団先頭を牽くのはスーダルの選手だけれども(カスパー・アスグリーン?)、肝心のファビオ・ヤコブセンは結構位置を下げている。

残り1km、集団先頭はヨナス・リッカールト(アルペシン)に交代、エースのフィリプセンは…ん?

前から6番目、そして他にアシストはいない?

これは…単騎での勝負になってしまうか?

残り800mでリッカールトは下がっていき、先頭はロットのヤスペル・デブイスト、その後ろにはユンボラポルトとファンアールトが連なっている。

残り600m、両サイドからリドル・トレックとチーム・ジェイコ・アルウラーの隊列が一気に位置を上げ、ユンボの2人は挟まれて身動きが取れないような格好に…。

そのままジェイコのルカ・メスゲッツが先頭を奪取、当然その背中にはエースのディラン・フルーネウェーヘンが控える、かなり良い態勢だ!

残り350m、メスゲッツが下がると同時に先頭へねじ込んできたのはウノエックス・サイクリングチームのソーレン・ヴァーレンショルト、そしてそのままエースのアレクサンダー・クリストフを発射!

このクリストフの動きを利用して絶好のタイミングでスプリントを開始したのはフルーネウェーヘン!

しかしその背中には虎視眈々と機を窺っていたフィリプセン…!!

残り100mからフィリプセンはもの凄い伸びを見せる!!

フィリプセンのトップスピードが違いすぎる…!!

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リードアウターがいなくても問題なし!!

フィリプセンが改めて個の強さを見せつけて、今大会4勝目!!

上手い!

そして強い!

これまでの3勝とは違って、残り1km以降は単騎での戦いになったけれども、まずは上手かった!

残り1kmではカレブ・ユアン(ロット)の背後に付けていたけれども、ジェイコのトレインが横から上がって来た瞬間、フルーネウェーヘンの背中に絶妙なタイミングで乗り換えようとトライ。

ここは一旦フィル・バウハウスバーレーン)に位置取り争いで敗れてしまうも、即座にファンアールトの背後を選択すると、先程とは逆サイドから結局はフルーネウェーヘンの背後に飛び乗る事に成功。

あとはフルーネウェーヘンの動きを利用するだけだったので、この形に持ち込んだ的確な判断は本当に素晴らしかった。

そして、「利用するだけ」とは言ったものの、結局はフルーネウェーヘンを上回るスピードを出す必要があり、そしてそれも当然ながら決して簡単なことではない。

フルーネウェーヘンも直前までクリストフの動きを利用してから万全のタイミングでスプリントを開始、最後まで大きな失速は見せずに2位でフィニッシュと、決して悪い走りでは無かっただけに尚更だ。

それを軽々と…最後は横並びではなく完全に前に抜け出す格好でのフィニッシュに持ち込んだ、フィリプセンの純粋なスプリント能力の高さは、本当に凄いとしか言いようがない。

早くも今大会4勝目を挙げ、ポイント賞争いでも2位のブライアン・コカール(コフィディス)に145pt差の323ptで首位独走と、絶好調のフィリプセン。

もしかしたら、今回のツールを経て「スプリンター戦国時代」に終止符を打つ存在へと成るのかもしれない。