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【レース感想】ツール・ド・フランス2023 第12ステージ

ベテランの一撃!

第12ステージは、3級・3級・3級・2級・2級と絶え間なくカテゴリー山岳が登場する丘陵ステージ。

当然スプリンターが生き残るには厳しく、そして総合争いが活発になるほどの難易度ではない、逃げ切りに向いたレイアウトだ。

 

予想通りアクチュアルスタート直後から活発なアタック合戦が繰り広げられ…いや待て、こんなに活発というか、ここまで逃げが決まり切らずにアタック合戦が続くとは聞いていないぞ…。

レースがある程度落ち着いたのは、なんと90kmも走ってから。

マチュー・ファンデルプール(アルペシン・ドゥクーニンク)、ティシュ・ベノート(ユンボ・ヴィスマ)、マッズ・ピーダスン(リドル・トレック)、ディラン・トゥーンス(イスラエル・プレミアテック)、ティボー・ピノ(グルパマFDJ)などが抜け出した動きに、ジュリアン・アラフィリップ(スーダル・クイックステップ)とヤスペル・ストゥイヴェン(リドル)が遅れて乗り込み、合計15人の先頭集団を形成する。

複数の人数を逃げに送り込んだのは、リドル(ピーダスンとストゥイヴェン)、モビスター・チーム(マッテオ・ヨルゲンソンとルーベン・ゲレイロ)、コフィディス(ギヨーム・マルタンとヨン・イサギレ)の3チーム。

対するメイン集団は、途中までは総合リーダーのヨナス・ヴィンゲゴーを抱えるユンボが牽引していたけれども、途中からは何故かAG2Rシトロエンが牽引を開始。

あまり逃げを捕まえたいようにも見えない不思議な牽引だと思っていたら、J SPORT中継解説の別府史之さんが「メイン集団から遅れている選手がいるので、フェリックス・ガル(総合16位)の順位を上げようとする狙いではないか」とコメント。

なるほど…。

 

先頭で動きがあったのは、3つ目の3級山岳(残り59km地点)を越えた先にあるダウンヒル区間

ファンデルプールとアンドレイ・アマドール(EFエデュケーション・イージーポスト)が2人で抜け出し、30秒ほどのリードを作り出すことに成功。

そのまま2人で1つ目の2級山岳に突入すると、そこで同行者を突き放したのは…クライマーのアマドールではなく、なんとファンデルプール。

ファンデルプールはそのまま20秒弱のリードを持って2級山岳を通過。

登坂で人数を減らした追走集団からは、ヨルゲンソンとピノの2人が飛び出しを敢行。

この日最後のカテゴリー山岳、2級山岳クロワ・ロジエ(登坂距離5.4km・平均勾配7.6%)の登りに入ると、残り32.3km地点でヨルゲンソンとピノがファンデルプールに合流。

更にその直後、マルタン、ヨン・イサギレ、ベノート、マチュー・ビュルゴドー(トタルエネルジー)、トビアス・ヨハンネセン(ウノエックス・サイクリングチーム)が追いつき、先頭は8人に。

ステージ勝利の権利は、この8人に絞られた。

 

残り30.9km、真っ先にアタックを仕掛けたのはヨン・イサギレ!

ファンデルプールが反応して食らいつこうとするけれども、ヨン・イサギレの踏みは鋭く、そのまま振り切って独走を開始!

山頂までの2km強の登坂で20秒ほどのリードを作り出したヨン・イサギレは、自慢のダウンヒルテクニックを存分に発揮して10kmほど続く下り勾配を激走!

ファンデルプールが脱落して6人になった追走集団は、ヨン・イサギレのチームメイトであるマルタンが控えているのもあり、ペースが上がらないか…?

ヨン・イサギレの踏みは平坦区間に入っても快調そのもの。

そして追走集団は、やはりマルタンがローテーションを阻害して、タイム差は広がっていく!

残り15kmで50秒差は、まず埋まらないはず…!

残り5kmを切ってから、追走集団で飛び出しを図る動きが活発になったけれども…、これは決まり切らないと逆に集団のペースダウンに繋がる上に、やはり肝心の飛び出しがなかなか決まらない。

ヨルゲンソンとビュルゴドーがなんとか2人で飛び出したけれども、残り3kmでタイム差は1分と、時すでに遅し…。

ヨン・イサギレの逃げ切りで決まりだ!

 

大きなリードを保ちながら、笑顔で最終コーナーを抜けたヨン・イサギレ!

観客の声援に応え、長めのガッツポーズとパフォーマンスを見せながら、悠々とフィニッシュ!!

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ヨン・イサギレ、これぞベテランの妙技!!

実に7年振り、自身2度目のツールステージ勝利は鮮やかな30km独走勝利!!

アタック一発で決め切ったそもそもの強さ、それまでは集団内でかなり静かにしているしたたかさ、そして勝利を決定づけたダウンヒル激走は、果敢さと熟練の技術の結晶…!

「強さ」には色々な種類があると思うけれども、この日のイサギレは本当に色々な強さを融合させての見事な勝利だったと称えたい!