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【レース感想】ジロ・デ・イタリア2024 第20ステージ

今大会を象徴するような展開

第20ステージは、登坂距離18.1km・平均勾配8.1%の1級山岳モンテ・グラッパを2回登る、難関山岳ステージ。

実質、総合争いは「終幕」している状況で、その状況を作った張本人…総合首位のタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)が、またしても「やってくれた」。

今大会の総括とも言えるような、またしても圧倒的な実力差を見せつけるその走り。

本当に、なんという男だろうか。

 

展開次第では逃げ切りの可能性もあるレイアウトということで、この日もスタート直後のアタック合戦は活発なものに。

出来上がった逃げは11人、前日のステージ勝者アンドレア・ヴェンドラーメ(デカトロン・AG2R・ラ・モンディアル)や、第6ステージを勝ったペラヨ・サンチェス(モビスター・チーム)などが注目すべき選手だろうか。

メイン集団を牽引するのは、前日と同様にUAEのアシスト陣。

しかし、早々に逃げ切りを完全容認した前日とは異なり、逃げに大きなタイム差を与えていない。

1回目の1級山岳入り口で、先頭とメイン集団のタイム差は1分45秒ほど。

これは…「そういうこと」か。

この日も、ポガチャルがステージ勝利を狙っているということか。

 

1級山岳の登坂では、UAEヴェガースターケ・ラエンゲンとミッケル・ビョーグの牽引でメイン集団のペースを上げて、先頭とのタイム差を縮めていく。

先頭集団はペラヨ・サンチェス、アレッサンドロ・トネッリ(VFグループ・バルディアーニCSF・ファイザネ)、ジミー・ヤンセンス(アルペシン・ドゥクーニンク)が粘っているけれども、下手したらこの登坂で捕まってしまうような勢いにも見える。

そんな中、メイン集団から飛び出しを敢行したのは、第16ステージでポガチャルに続いてステージ2位に入ったジュリオ・ペリツァーリ(バルディアーニ)。

ペリツァーリは逃げている選手を次々とかわしていき、先頭を走る3人に追いつく…どころか、そのままかわして先頭で山頂を通過。

山頂を越えると、ペリツァーリにペラヨ・サンチェスとトネッリが追いつき、先頭は3人に。

そしてメイン集団は…僅か1分後方にまで迫っている。

 

先頭の3人は、トネッリがアシストとして尽力したこと、そしてメイン集団がダウンヒルでリスクを冒さずにペースを上げなかったことで、タイム差を2分30秒にまで広げた状態で2度目の1級山岳に突入していく。

トネッリは登り始めてすぐ力尽き、そして山頂まで残り16kmというかなり早い段階で、ペリツァーリはペラヨ・サンチェスが突き放し、独走を開始。

後方のメイン集団は、ここでもまたラエンゲンとビョーグが牽引を担ってペースを作る。

ラエンゲンとビョーグが仕事を終えると、UAEはフェリックス・グロスシャートナー、ドメン・ノヴァク、そしてラファウ・マイカと、自慢の山岳アシスト陣による牽引を開始。

先頭のペリツァーリとの差を、グロスシャートナーが20秒縮め、ノヴァクが30秒以上縮め、そしてマイカがそれ以上のペースを刻む。

山頂まで残り6km、既に半壊状態だったメイン集団が…更に千切れる。

イカの牽引に付いていけているのは、エースのポガチャル以外には、総合2位のダニエル・マルティネス(ボーラ・ハンスグローエ)と、総合5位のアントニオ・ティベーリ(バーレーン・ヴィクトリアス)、総合8位のエイネル・ルビオ(モビスター・チーム)と、少し遅れてくらいついてきた総合12位のマイケル・ストーラー(チューダー・プロサイクリング)しかいない。

総合3位のゲラント・トーマス(イネオス・グレナディアーズ)と、総合4位のベン・オコーナー(デカトロン)は、苦悶の表情で遅れている。

そしてその直後、ペリツァーリとのタイム差が48秒にまで縮まった状況で、ポガチャルがアタック。

ライバル…もはや総合争いの「ライバル」ではない存在だった同行者は、誰も付いていけない。

一気に飛び出し、そのまま明らかに他の選手より速いペースを維持して…、なんと1kmも走らないうちにペリツァーリに追いついてしまう。

そしてポガチャルは、ペリツァーリに「後ろに付けるか?」といった感じの仕草を見せる。

山頂まで5km弱、ペリツァーリが遅れずに同行できるなら、ステージ勝利を譲っていいという事か。

しかし…ポガチャルのペースは速すぎた。

アタックではなく、ポガチャルは自分のペースで走っているだけなのに、ペリツァーリがは山頂まで残り3.4km辺りで千切れてしまう。

またしても、独走。

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ポガチャルはまたしても圧倒的な力を見せつけて、ステージ6勝目に向かって単身突き進んでいく。

 

ポガチャルは、総合2位のダニエル・マルティネスに1分44秒もの差を付けて、山頂を通過。

残りは約30km、長いダウンヒルと、ごく短い平坦区間

決してリスクは侵さず、それでいながらしっかりと踏み込んで、フィニッシュへの長い「ウィニングラン」をこなしていく。

残り1km、後続とのタイム差は、気が付けば2分以上。

正直言って、この日これだけタイム差を付けることは、総合争いの上ではもはや意味がない。

それでも、この走り。

これぞ、王者の走り。

これこそが、現役最強のロードレーサー、ポガチャルの走り。

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フィニッシュシーンは、実に優雅に。

「ポガチャルが圧倒的な力の差を見せつける」という、今大会を象徴するようなレースになった。

ステージ6勝に、9分56秒という信じ難い総合2位とのタイム差。

確かに、ライバルとかなりの実力差があるだろうと、開幕前から言われてはいたけれども…。

ここまで鮮やかに、やってのけてしまうものなのか。

改めて、ポガチャルの凄さを思い知らされた3週間だった。

 

後方の集団は、登坂で遅れていたトーマスとオコーナーもなんとか合流を果たし、総合2位から総合5位までの選手は、同タイムでのフィニッシュに。

今大会、かなり早い段階でポガチャルと大きな差が開いてしまい、実質「総合争い」が起こらなかったのは、当然彼らも無念だろう。

それでも、最終第21ステージを胸を張って走り、堂々とフィニッシュしてくれたらと願う。

特に、初の総合表彰台となるダニエル・マルティネスや、初めての総合争いながら総合5位でヤングライダー賞受賞となるティベーリは、この結果を誇っていいはずだ。

ポガチャルに敗れはしたけれども、ベストを尽くした彼らにも、大きな賛辞を贈りたい。