初心者ロードレース観戦日和

初心者でもいいじゃない!ロードレース観戦を楽しもう!

【レース感想】ジロ・デ・イタリア2024 第21ステージ

今大会3人目のハットトリック達成!

第21ステージは、ローマを舞台にしたスプリントステージ。

美しきローマの周回コースは、やはり3週間の旅を締めくくるのにぴったりだ。

 

スタートからしばらくの間は、恒例の「パレード」区間

まずは、袖にピンク色をあしらった特別ジャージを用意してきたUAEチームエミレーツが、マリア・ローザを着用したタデイ・ポガチャルを中心に記念撮影。

ポガチャルの強さが凄かったのと同時に、アシストの働きも一級品だった印象のUAE

しっかり計算され、統率の取れた動きは、本当に素晴らしかった。

 

続いて、マリア・チクラミーノを着用するジョナサン・ミランを中心としたリドル・トレック、マリア・ビアンカを着用するアントニオ・ティベーリを中心としたバーレーン・ヴィクトリアスも、前方に出てきて記念撮影。

そして、ポガチャル、ミラン、ティベーリの3人に、繰り下がりでマリア・アッズーラを着用するジュリオ・ペリツァーリ(VFグループ・バルディアーニCSF・ファイザネ)が加わり、特別賞ジャージを着る4人での撮影も。

その後も集団は、しばらく和やかなムードでゆっくりと進行。

しっかりと「レース」をするのは、市街地の周回コースに入ってから。

しばらくは、選手も3週間の「お祭り」の余韻を楽しむ時間だ。

 

9.5km×8周の周回コースに入ると、まずは今シーズン限りでの引退を表明している大ベテラン、ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(バルディアーニ)が単独で先頭へ。

グランツール出場25回、ジロにはなんと18回出場し、総合トップ10を7回も経験しているのは、本当に凄いリザルトだ。

41歳ながら、今ジロも総合20位と堂々たる成績。

地元イタリアの大声援に応えながら、最後のグランツールを嚙みしめるように走り抜けていく。

ポッツォヴィーヴォが集団に戻ると、最後の勝負に向けて選手たちはペースを上げる。

果敢なアタックを見せたのはアレックス・ボーダン(デカトロン・AG2R・ラ・モンディアル)、そこにミッケルフレーリク・ホノレ(EFエデュケーション・イージーポスト)、エウェン・コステュー(アルケア・B&Bホテルズ)、マルティン・マルチェリージ(バルディアーニ)が同調して、4人で逃げを試みる。

メイン集団を引っ張るのは、スプリンターを抱えるスーダル・クイックステップやリドルといったチーム。

途中、スーダルはエースのティム・メルリールがパンクに見舞われたけれども、ここは問題なく復帰。

残り13.3kmで逃げは捕まり、いよいよ最後の集団スプリントに向けて、もう一段ペースが上がっていく。

 

スプリンターチームと総合勢が集団前方で入り乱れる中、マリア・チクラミーノを着るミランが、残り9kmでメカトラに見舞われてしまう。

タイム差は50秒、戻れるか結構際どいぞ…。

当然リドルは、アシストを使ってミランを引っ張り上げて、残り4.5kmで集団の最後尾への合流に成功。

そこからリドルは、4枚のアシストの最後尾にミランというトレインを組んで、猛然と集団の前方へ!

これは…スプリントに絡めるかもしれないけれども、果たして勝負できる脚は残っているか。

残り2km、先頭を牽くのはなんとポガチャル!

危険回避の意味合いだけでなく、第9ステージと同様にフアン・モラノのアシストだ!

その後ろで数を揃えていたのはスーダルとアルペシン・ドゥクーニンクのトレイン、ポガチャルの両サイドから被せるように位置を上げていく。

その動きとほぼ同時に、外側から一気に最前線に上がってきたのは…リドルのトレイン!

残すは1.6km、アシスト3枚という体制は通常なら盤石と言っていいけれども…脚を使ってしまっている今回はどうなるか。

残り1km、先頭は依然リドルのジャスパー・ストゥイヴェン、その高速牽引で集団は縦に引き伸ばされている!

残り700m、コーナーに入る直前で被せてきたのはアルペシン、しかしアルペシンもしっかりとしたトレインは組めていない、かなり混沌とした状況だ…。

最後の緩いコーナーを抜けて残り150m、石畳の路面をものともせず飛び出していくのはメルリール!

良い位置にいたはずのティム・ファンダイケ(チーム・ヴィスマ・リースアバイク)が全く反応できない、その背後にいたグローブスも付いていけない、ただ一人ミランが追うけれども、追いつく気配は全くない!!

Embed from Getty Images

後ろに付くことすら許さない、まさに圧勝!!

メルリール、素晴らしいスプリントで今大会3勝目!!

石畳系のレースでも結果を残しているメルリール、ここでその強みを存分に活かしてきた…!

ティム・ファンダイケとグローブスとは明らかに初速が違い、そして追いすがろうとしたミランは…さすがに今回は脚が残っていなかったか。

いやしかし、ミランが万全でも勝てたかどうかはかなり怪しい気がする。

そう思わせるぐらい、メルリールのスプリントは素晴らしかった!!

 

そして、総合首位のポガチャルも無事にフィニッシュ!!

Embed from Getty Images

ジロ・デ・イタリア2024、総合優勝はタデイ・ポガチャル!!

予想されていた通り…いやそれ以上の、圧倒的な大差をつけての勝利!!

本当におめでとう!!

 

それでも、ジロは面白かった

改めて、最終結果を確認。

 

総合優勝は、圧倒的な力を見せ続けたポガチャル!

いや~、強すぎ…!

ステージ6勝、そして総合2位と9分56秒差…ちょっと意味が分からないレベルだよね。

どこまで「やってくれる」のか期待していた部分もあったけれども、その期待の遥か彼方をかっ飛んでいったような印象だ。

 

総合2位は、自身初のグランツール総合表彰台となるダニエル・マルティネス!

ずっと期待していた選手だから、やっとそのポテンシャルをしっかり発揮してくれて、本当に嬉しいぞ…!!

この経験と自信を新たな力に変えて、これからも頑張ってくれ~!!

 

総合3位に入ったトーマスは、2年連続でのジロ総合表彰台!

昨年から1つ順位を落とした格好にはなるけれども、38歳でこの成績は本当に凄い…!

どうやらツール・ド・フランスにアシストとして出場するようなので、そこでもまた力を発揮してくれそうだ。

 

ミランは、2年連続でのポイント賞獲得!

移籍しながらもこの結果はお見事!

昨年はステージ勝利が1つだけだったけれども、今大会は3勝と明確に数字を伸ばしたのも素晴らしいところ。

そのパワフルで大迫力なスプリントで、ぜひともトップスプリンターの1人として活躍を続けてほしい。

 

ヤングライダー賞は、今シーズンで23歳になるティベーリ!

過去の過ちは消せないけれども…今回の走りが素晴らしかったのは事実で、そこは素直に称賛したい。

久々にイタリアから表れた期待の総合系選手として、自覚を持ってプロ生活を送ってくれることを願うばかりだ。

 

総合敢闘賞は、復活のアラフィリップ!!

積極的な走りを続けて、第12ステージでは持ち味を存分に発揮してのステージ勝利!

いや~、あれは痺れたよねぇ…!

ケガで苦しんだ時期を乗り越えて獲得したこの結果、ここから更なる爆発を待っているぞ!

 

チーム総合賞は、デカトロン!

総合4位に入ったベン・オコーナーを筆頭に、ヴァランタン・パレパントルとアンドレア・ヴェンドラーメがステージ勝利を挙げるなど、3週間を通してチーム全体が目立っていた印象だ。

特にヴァランタン・パレパントルは、第20ステージでオコーナーを救ったスーパーアシストも特筆もの。

そのヴァランタン・パレパントルも含めて今回のメンバーには若手が多くて、これから更なる活躍も期待できそうだ。

 

今大会の総合争いに関しては、ポガチャルが圧倒的すぎる1強状態だったので、実質「争い」にならなかったのは、否定しようがない。

「総合優勝をめぐるバチバチの争い」という、多くの人がグランツールに求めるであろうものが起こらなかったのは、少し寂しいのは間違いない。

それでも、「このジロが”面白くないもの”だったか?」と問われると…どうだろうか。

それは…「否」だろう。

今回も、やはりジロは面白かった。

ミランとメルリールを中心としたハイレベルなスプリント勝負は、特大の熱量を放っていた。

アラフィリップやジョナタン・ナルバエス(イネオス)などアタッカーの活躍も、レースを華やかに彩ってくれた。

アンドレア・ヴェンドラーメやゲオルグ・シュタインハウザー(EF)やペリツァーリといった若手の台頭は、今後への大きな期待を抱かせてくれた。

そして何より、ポガチャルが見せる唯一無二で圧倒的な走り。

それは「争い」を奪ってしまったかもしれないけれども、その代わりに何か特別なものを、私たちファンに提供してくれたはずだ。

ありがとう、ポガチャル。

ありがとう、選手たち。

今回も素晴らしいジロを、ありがとう。

 

さあ、ジロが終わったら…もう約1か月後にはツールが開幕だ~!

まずは6月頭からの前哨戦をしっかりチェックして、ツールに向けて「見る側」も仕上げていこう~!

それでは、また!!

Embed from Getty Images