今大会3人目のハットトリック達成!
第21ステージは、ローマを舞台にしたスプリントステージ。
美しきローマの周回コースは、やはり3週間の旅を締めくくるのにぴったりだ。
まずは、袖にピンク色をあしらった特別ジャージを用意してきたUAEチームエミレーツが、マリア・ローザを着用したタデイ・ポガチャルを中心に記念撮影。
個人総合優勝を獲得したチームの記念写真
— J SPORTSサイクルロードレース【公式】 (@jspocycle) May 26, 2024
UAEチームエミレーツ🩷
Cycle*2024 ジロ・デ・イタリア 第21ステージ
【ローマ 〜 ローマ】
125 km(平坦 ★☆☆☆☆/獲得標高 300 m)#GirodItalia #jspocycle
〜J SPORTSオンデマンドでLIVE配信中〜https://t.co/JISzVn8NAn pic.twitter.com/wPqymCVzwC
ポガチャルの強さが凄かったのと同時に、アシストの働きも一級品だった印象のUAE。
しっかり計算され、統率の取れた動きは、本当に素晴らしかった。
続いて、マリア・チクラミーノを着用するジョナサン・ミランを中心としたリドル・トレック、マリア・ビアンカを着用するアントニオ・ティベーリを中心としたバーレーン・ヴィクトリアスも、前方に出てきて記念撮影。
そして、ポガチャル、ミラン、ティベーリの3人に、繰り下がりでマリア・アッズーラを着用するジュリオ・ペリツァーリ(VFグループ・バルディアーニCSF・ファイザネ)が加わり、特別賞ジャージを着る4人での撮影も。
その後も集団は、しばらく和やかなムードでゆっくりと進行。
しっかりと「レース」をするのは、市街地の周回コースに入ってから。
しばらくは、選手も3週間の「お祭り」の余韻を楽しむ時間だ。
9.5km×8周の周回コースに入ると、まずは今シーズン限りでの引退を表明している大ベテラン、ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(バルディアーニ)が単独で先頭へ。
グランツール出場25回、ジロにはなんと18回出場し、総合トップ10を7回も経験しているのは、本当に凄いリザルトだ。
41歳ながら、今ジロも総合20位と堂々たる成績。
地元イタリアの大声援に応えながら、最後のグランツールを嚙みしめるように走り抜けていく。
ポッツォヴィーヴォが集団に戻ると、最後の勝負に向けて選手たちはペースを上げる。
果敢なアタックを見せたのはアレックス・ボーダン(デカトロン・AG2R・ラ・モンディアル)、そこにミッケルフレーリク・ホノレ(EFエデュケーション・イージーポスト)、エウェン・コステュー(アルケア・B&Bホテルズ)、マルティン・マルチェリージ(バルディアーニ)が同調して、4人で逃げを試みる。
メイン集団を引っ張るのは、スプリンターを抱えるスーダル・クイックステップやリドルといったチーム。
途中、スーダルはエースのティム・メルリールがパンクに見舞われたけれども、ここは問題なく復帰。
残り13.3kmで逃げは捕まり、いよいよ最後の集団スプリントに向けて、もう一段ペースが上がっていく。
スプリンターチームと総合勢が集団前方で入り乱れる中、マリア・チクラミーノを着るミランが、残り9kmでメカトラに見舞われてしまう。
タイム差は50秒、戻れるか結構際どいぞ…。
当然リドルは、アシストを使ってミランを引っ張り上げて、残り4.5kmで集団の最後尾への合流に成功。
そこからリドルは、4枚のアシストの最後尾にミランというトレインを組んで、猛然と集団の前方へ!
これは…スプリントに絡めるかもしれないけれども、果たして勝負できる脚は残っているか。
残り2km、先頭を牽くのはなんとポガチャル!
危険回避の意味合いだけでなく、第9ステージと同様にフアン・モラノのアシストだ!
その後ろで数を揃えていたのはスーダルとアルペシン・ドゥクーニンクのトレイン、ポガチャルの両サイドから被せるように位置を上げていく。
その動きとほぼ同時に、外側から一気に最前線に上がってきたのは…リドルのトレイン!
残すは1.6km、アシスト3枚という体制は通常なら盤石と言っていいけれども…脚を使ってしまっている今回はどうなるか。
残り1km、先頭は依然リドルのジャスパー・ストゥイヴェン、その高速牽引で集団は縦に引き伸ばされている!
残り700m、コーナーに入る直前で被せてきたのはアルペシン、しかしアルペシンもしっかりとしたトレインは組めていない、かなり混沌とした状況だ…。
最後の緩いコーナーを抜けて残り150m、石畳の路面をものともせず飛び出していくのはメルリール!
良い位置にいたはずのティム・ファンダイケ(チーム・ヴィスマ・リースアバイク)が全く反応できない、その背後にいたグローブスも付いていけない、ただ一人ミランが追うけれども、追いつく気配は全くない!!
後ろに付くことすら許さない、まさに圧勝!!
メルリール、素晴らしいスプリントで今大会3勝目!!
石畳系のレースでも結果を残しているメルリール、ここでその強みを存分に活かしてきた…!
ティム・ファンダイケとグローブスとは明らかに初速が違い、そして追いすがろうとしたミランは…さすがに今回は脚が残っていなかったか。
いやしかし、ミランが万全でも勝てたかどうかはかなり怪しい気がする。
そう思わせるぐらい、メルリールのスプリントは素晴らしかった!!
そして、総合首位のポガチャルも無事にフィニッシュ!!
ジロ・デ・イタリア2024、総合優勝はタデイ・ポガチャル!!
予想されていた通り…いやそれ以上の、圧倒的な大差をつけての勝利!!
本当におめでとう!!
それでも、ジロは面白かった
改めて、最終結果を確認。
- 総合優勝:タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)
- 総合2位:ダニエル・マルティネス(ボーラ・ハンスグローエ)
- 総合3位:ゲラント・トーマス(イネオス・グレナディアーズ)
- ポイント賞:ジョナサン・ミラン(リドル・トレック)
- 山岳賞:タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)
- ヤングライダー賞:アントニオ・ティベーリ(バーレーン・ヴィクトリアス)
- 総合敢闘賞:ジュリアン・アラフィリップ(スーダル・クイックステップ)
- チーム総合賞:デカトロン・AG2R・ラ・モンディアル
総合優勝は、圧倒的な力を見せ続けたポガチャル!
いや~、強すぎ…!
ステージ6勝、そして総合2位と9分56秒差…ちょっと意味が分からないレベルだよね。
どこまで「やってくれる」のか期待していた部分もあったけれども、その期待の遥か彼方をかっ飛んでいったような印象だ。
総合2位は、自身初のグランツール総合表彰台となるダニエル・マルティネス!
ずっと期待していた選手だから、やっとそのポテンシャルをしっかり発揮してくれて、本当に嬉しいぞ…!!
この経験と自信を新たな力に変えて、これからも頑張ってくれ~!!
総合3位に入ったトーマスは、2年連続でのジロ総合表彰台!
昨年から1つ順位を落とした格好にはなるけれども、38歳でこの成績は本当に凄い…!
どうやらツール・ド・フランスにアシストとして出場するようなので、そこでもまた力を発揮してくれそうだ。
ミランは、2年連続でのポイント賞獲得!
移籍しながらもこの結果はお見事!
昨年はステージ勝利が1つだけだったけれども、今大会は3勝と明確に数字を伸ばしたのも素晴らしいところ。
そのパワフルで大迫力なスプリントで、ぜひともトップスプリンターの1人として活躍を続けてほしい。
ヤングライダー賞は、今シーズンで23歳になるティベーリ!
過去の過ちは消せないけれども…今回の走りが素晴らしかったのは事実で、そこは素直に称賛したい。
久々にイタリアから表れた期待の総合系選手として、自覚を持ってプロ生活を送ってくれることを願うばかりだ。
総合敢闘賞は、復活のアラフィリップ!!
積極的な走りを続けて、第12ステージでは持ち味を存分に発揮してのステージ勝利!
いや~、あれは痺れたよねぇ…!
ケガで苦しんだ時期を乗り越えて獲得したこの結果、ここから更なる爆発を待っているぞ!
チーム総合賞は、デカトロン!
総合4位に入ったベン・オコーナーを筆頭に、ヴァランタン・パレパントルとアンドレア・ヴェンドラーメがステージ勝利を挙げるなど、3週間を通してチーム全体が目立っていた印象だ。
特にヴァランタン・パレパントルは、第20ステージでオコーナーを救ったスーパーアシストも特筆もの。
そのヴァランタン・パレパントルも含めて今回のメンバーには若手が多くて、これから更なる活躍も期待できそうだ。
今大会の総合争いに関しては、ポガチャルが圧倒的すぎる1強状態だったので、実質「争い」にならなかったのは、否定しようがない。
「総合優勝をめぐるバチバチの争い」という、多くの人がグランツールに求めるであろうものが起こらなかったのは、少し寂しいのは間違いない。
それでも、「このジロが”面白くないもの”だったか?」と問われると…どうだろうか。
それは…「否」だろう。
今回も、やはりジロは面白かった。
ミランとメルリールを中心としたハイレベルなスプリント勝負は、特大の熱量を放っていた。
アラフィリップやジョナタン・ナルバエス(イネオス)などアタッカーの活躍も、レースを華やかに彩ってくれた。
アンドレア・ヴェンドラーメやゲオルグ・シュタインハウザー(EF)やペリツァーリといった若手の台頭は、今後への大きな期待を抱かせてくれた。
そして何より、ポガチャルが見せる唯一無二で圧倒的な走り。
それは「争い」を奪ってしまったかもしれないけれども、その代わりに何か特別なものを、私たちファンに提供してくれたはずだ。
ありがとう、ポガチャル。
ありがとう、選手たち。
今回も素晴らしいジロを、ありがとう。
さあ、ジロが終わったら…もう約1か月後にはツールが開幕だ~!
まずは6月頭からの前哨戦をしっかりチェックして、ツールに向けて「見る側」も仕上げていこう~!
それでは、また!!