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【レース感想】ジロ・デ・イタリア2024 第3ステージ

なんだこの展開…

第3ステージは、今大会初の集団スプリントが予想される平坦基調のレイアウト。

ただ、フィニッシュの2.8km手前に登場する登坂距離1.5km・平均勾配5.3%の起伏が、少しスプリンターの脚を削りそうな感じか。

 

すんなり逃げが決まったここまでの2日間と違い、この日はなかなか逃げが決まらない。

超スローペースでの展開が50km以上続いてから、なんだかゆるっとしたアタックにより、ようやくリリアン・カルメジャーヌ(アンテルマルシェ・ワンティ)とダヴィデ・バッレリーニ(アスタナ・カザクスタンチーム)の2人が飛び出す格好に。

いやしかし、それにしても緩い雰囲気…。

逃げる2人も談笑しながらのスローペース、そしてその逃げを1分半も先行させるメイン集団という、なんだかあまり見ない展開だ。

しかも、残り108kmの位置に設定されたこの日唯一のカテゴリー山岳(4級)を超えると、カルメジャーヌは踏まずに…メイン集団に戻ることを選択。

1人先頭に取り残され(先行しているからこの表現は変か?)、なんだか困惑気味のバッレリーニ…。

集団が来ないか頻繁に振り返り、なんとも言えない表情で首をかしげながら、無線でチームカーとやり取りをして…、ペースを上げない。

残り100kmを切ると、もうあからさまに踏みを止め、結局集団に追いつかれるのを待つような格好に。

いやはや、なんだこの展開は…。

 

残り90km辺りから、やっと緊張感が高まってきたのは…3km先に控える中間スプリントポイントに向けての動き。

逃げがいないので先着によりポイントを多く獲得できる展開、先行したエドワルド・プランカールト(アルペシン・ドゥクーニンク)を、ジョナサン・ミラン(リドル・トレック)が刺して先頭通過に成功(というか、アルペシンはエースのカーデン・グローブスではなくプランカールトが先行したのか…)。

以下、プランカールト、オラフ・コーイ(チーム・ヴィスマ・リースアバイク)、ティム・メルリール(スーダル・クイックステップ)、ビニアム・ギルマイ(アンテルマルシェ)という順番での通過に。

その直後に加速を見せたのは、繰り下げでポイント賞ジャージを着るフィリッポ・フィオレッリ(イタリア、VFグループ・バルディアーニCSF・ファイザネ)。

そしてその動きをスプリンター陣が追いかけて…え?

有力スプリンターを多数含んだ先頭集団が、メイン集団から1分以上先行するというこれまた謎な展開に…?

メルリール、ミラン、グローブス、コーイ、ギルマイ、ダニー・ファンポッペル(ボーラ・ハンスグローエ)、カレブ・ユアン(チーム・ジェイコ・アルウラー)、アルベルト・ダイネーゼ(チューダー・プロサイクリング)といった、この日のステージ勝者候補がアシストを引き連れて先頭集団に乗っているって、今までに見たことがない、本当に不思議な状況だ…。

もしかして、一応「逃げとメイン集団」という形にはなったから、そこまでおかしくないのか…?

なんて思っていたら、いつの間にかメイン集団では分断が発生。

総合4位のキアン・アイデブルックス(ヴィスマ)なんかが後方集団に取り残されていて、一気に緊張感が高まったけれども、ここはアシストの頑張りにより無事に合流に成功する。

結果的にペースを上げることになったメイン集団は、残り43.5kmで逃げ集団を吸収。

そこからはまたスローペースのまま、選手たちは一塊の集団になってレースを進めていく。

 

スプリントチームよりも、総合のための危険回避の意図を持つイネオス・グレナディアーズの牽引が目立つ状況で、残り4.3kmからの小さな起伏に突入。

登りに入ってもイネオスは集団前方をキープ、ただあまり集団を引き千切るようなペースでもなく、このまま平穏に丘を越える…と思っていたら、EFの選手が1人飛び出す!

アタックを仕掛けたのは…ミッケルフレーリック・ホノレ!

そしてこのホノレの動きに、なんと総合リーダーのタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)が反応!!

更には総合2位のゲラント・トーマス(イネオス)も飛び乗り、3人で先行する!!

しかも、残り2.2kmからはポガチャルが先頭に出て牽く!!

ホノレが千切れるほどのペースで踏むポガチャル、トーマスはしっかり付いていく!

メイン集団はリドルが牽くけれども、アシストの枚数は残り僅かだ…!

残り1kmでタイム差は4秒、ここでリドルは一旦後退、代わってバーレーン・ヴィクトリアスのアシストが集団を引っ張るけれども…ペースが上がり切ってはいない。

痺れを切らして集団から飛び出したのはポルティ・コメタの選手、この動きを上手く利用して集団を引っ張り上げるのは、袖に元世界王者の証である虹色のラインが入ったジュリアン・アラフィリップ(スーダル)!

残り500m、一旦休んでいたリドルのアシスト陣が再び集団先頭に戻り、最後の一踏み!

そして逆サイドからは、マッテオ・トレンティン(チューダー)が別のラインを作って猛然と加速!!

トレンティンは残り300mでポガチャルとトーマスをキャッチ、そのトレンティンの動きを利用して早めの仕掛けを見せたチームDSMフェルミニッヒ・ポストNLのジャージは…トビアスルンド・アンドレースン!

先頭で粘るアンドレーセン、しかし両サイドから猛スピードで駆け上がってくる2人…メルリールとミランのトップスピードが段違いだ!!

最後はメルリールとミランによるハンドルの投げ合い…!!

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勝利のガッツポーズを見せたのは…メルリール!!

混戦を制して、3年ぶりのジロステージ勝利!!

これでメルリールは、4回のグランツール出場で3度目の「最初のスプリントステージ勝利」と、相変わらずの「開幕男」ぶり!!

なかなか混沌とした展開の中、最後は単騎での勝負になったけれども…。

リドルが作ったラインよりトレンティンが牽くラインの方が優勢と判断すると、ミランに張り付いていたギルマイの背中から、逆サイドのコーイの背中へ乗り換え、そしてコーイの加速をリードアウトとして利用して、一気に先頭へ!

そのトップスピードだけでなく、判断力が光っての勝利だ!

 

そして、この混沌とした展開を生み出した「犯人」…あ、ホノレではなく、ポガチャルのことね。

スプリントステージが、ミラノ~サンレモのような展開になってしまったではないか…。

いや別に、それは悪いことではないんだけれども、相変わらず「やんちゃ」だねぇ…。

そして、本当に凄かったね。

マジで逃げ切る可能性を一瞬感じさせただけでも、それは相当凄いことだよなぁ…。

スプリントチームのアシスト陣の、心の悲鳴が聞こえるようだったよ。

外野から「このハイテンションで3週間もつのか?」という声も聞こえてるけれども、まあポガチャルはこのまま行くんだろう。

レースを全力で楽しむ、それこそがポガチャル。

どうなるのか、見届けようではないか。