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【レース感想】ジロ・デ・イタリア2024 第1ステージ

開幕からフルスロットル!

いよいよ開幕したジロ、その第1ステージは…結構な難易度のある丘陵ステージ。

4級・3級・2級とカテゴリー山岳が続くだけでなく、2級山岳の前後に計2度登場する「カテゴリーの付かない登り」が、かなりの曲者。

この登り、登坂距離1.4km・平均勾配9.8%・最大勾配16%というプロフィールもなかなかの威力だけれども、問題は2回目の位置。

頂上がフィニッシュまで残り3kmというのは、まあ間違いなく「荒れる」よねぇ…。

「荒らしそうな選手」…総合優勝の筆頭候補タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)もいるし、いきなりテンションの高いレースになりそうだ。

 

アクチュアルスタート後、意外とすんなり決まった逃げに乗ったのは6人。

メイン集団の牽引は、中盤まではUAEのヴェガースターケ・ラエンゲンがほぼ一人で担い、逃げ集団とのタイム差を最大で2分半ほどにコントロール

先頭集団で大きな動きがあったのは、コース中盤の3級山岳。

リリアン・カルメジャーヌ(アンテルマルシェ・ワンティ)とアマヌエル・ゲブレイグザビエル(リドル・トレック)という実力者2人が、力の差を見せて他の4人を置き去りにする。

2級山岳の手前にある「カテゴリーの付かない登り」では、カルメジャーヌが一旦引き離されるけれども、直後の下りで再合流に成功。

そのままメイン集団から1分50秒ほど先行して2級山岳に突入した2人は、山岳賞ジャージ着用を目指して登坂勝負を開始。

山頂まで残り2.9km、ここで動いたのは…先ほどは遅れそうになったカルメジャーヌ!?

ゲブレイグザビエルを完全に突き放し軽快に踏み続けるカルメジャーヌ、先ほど遅れたのはまさか「ブラフ」か…?

ただ、カルメジャーヌにとって問題なのは、メイン集団のペースアップ。

UAEはミッケル・ビョーグ、フェリックス・グロスシャートナー、ラファウ・マイカと牽引を繋ぎ、ティメン・アレンスマン(イネオス・グレナディアーズ)、ロマン・バルデ(チームDSMフェルミニッヒ・ポストNL)、ルーク・プラップ(チーム・ジェイコ・アルウラー)など、登れる選手を振るい落とすぐらい、高速ペースを刻んでいる。

残り2kmで30秒差と結構微妙なタイム差、しかしUAEはマイカ以外のアシストを使い切ってしまい、ここはあまり無理してペースを上げない格好に。

そのお陰で、カルメジャーヌはなんとか山頂まで逃げ切り、山岳賞ジャージ獲得に成功しただけでなく、ダウンヒルでもそのまま踏みを緩めない。

 

ダウンヒルでメイン集団のペースが少し落ち着くと、メイン集団からは数人の選手が飛び出していく流れに。

飛び出したのは、ニコラ・コンチ(アルペシン・ドゥクーニンク)、マクシミリアン・シャフマン(ボーラ・ハンスグローエ)、ミッケルフレーリック・ホノレ(EFエデュケーション・イージーポスト)、アレックス・ボウダン(デカトロン・AG2R・ラ・モンディアル)、アレッサンドロ・デマルキ(ジェイコ)、ダミアーノ・カルーゾ(バーレーン・ヴィクトリアス)、ジュリオ・ペリッツアーリ(VFグループ・バルディアーニCSF・ファイザネ)の7人という、なかなか強力なメンバー。

残り10kmでカルメジャーヌを吸収すると、残り6.8kmではコンチが抜け出しを敢行。

コンチはそのままフィニッシュ直前に登場する2度目の「カテゴリーの付かない登り」へ、単独先頭で突入。

追走とのタイム差は約25秒、メイン集団とのタイム差は…50秒ぐらいか。

 

登りに入ると、メイン集団からポガチャルがアタック!!

…速いぞ、これは!!

背中を捉えているのは…ジョナタン・ナルバエス(イネオス)、そして追い抜かれざまに食らいついたシャフマン、この2人だけ!?

そして、ポガチャルは頂上付近でさらにペースを上げ、コンチをぶち抜いて先頭へ!!

しかしナルバエスはしっかり反応、少し離されたシャフマンもダウンヒルで何とか再合流に成功。

フィニッシュまでの距離はもう僅か、ステージ勝利の権利、そしてマリア・ローザ着用の権利は、この3人に絞られた!

 

登りの頂上からフィニッシュまでの3km弱、ナルバエスもシャフマンも前に出る意思を見せず、ポガチャルが先頭固定で前を牽かされる格好に。

これは…ステージ勝利に向けた駆け引きだけではなく、ナルバエスとシャフマンとしては、後方の集団にいるそれぞれの総合エース、ゲラント・トーマスとダニエル・マルティネスのために、タイム差が広がらないようにする意図もあるか。

最後までその動きは変わらず、前からポガチャル、ナルバエス、シャフマンという並びで、フィニッシュスプリントのタイミングを探り合う。

残り200m、先頭のポガチャルと最後尾のシャフマンがほぼ同時に加速を開始!

ポガチャルの動きに合わせ、スリップストリームを上手く利用したナルバエスが前に出る!

…ポガチャルが思ったほど伸びないか!?

そして、シャフマンもナルバエスの背中から飛び出しを図る!

しかしナルババエスの勢いは衰えない!!

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三つ巴のスプリントを制して、ナルバエスがステージ勝利とマリア・ローザを獲得!!

ナルバエスは2020年のジロ以来となる、グランツール2勝目!!

ポガチャルのアタックにしっかり食らいつき、そして最後のスプリントでも勝つとは…お見事!!

レース後のインタビューによると、「第1ステージが自分に向いているのは分かっていたから狙っていた」とのこと。

いやいや、狙っていても勝つのはそうは簡単ではないでしょうに…、しかもポガチャルを相手にしてさ。

しかも更に素晴らしかったのは、残り3kmから一切前に出なかった動き。

ポガチャルは少し踏みを緩めざるを得なくて、後方の集団とのタイム差は結局10秒に抑えられる結果に。

先着してポガチャルのボーナスタイムを削ったのも含めて、エースのトーマスにとってはかなり大きいアシストだ。

 

あと個人的には、不振に苦しんでいたシャフマンが2位に入ったのも嬉しいな~!

こちらもナルバエス同様、ダニエル・マルティネスへの大きなアシストであると同時に、今後のステージでもその働きを計算できるような走りを見せたのは、かなり意味があるはず。

好きな選手だから、この先も頑張って見せ場を作ってほしいな。

 

しかしポガチャルは…相変わらず強烈だね~。

2度目の「カテゴリーの付かない登り」でのアタック、当然総合争いのライバルたちは警戒していただろうけれども、誰も付いていけないのだから、本当に恐ろしい話だよ…。

ただ少し気になるのは、この日のレイアウト…そこまで厳しくない難易度の丘陵ステージで、アシストを「使い切る」ような格好になってしまったこと。

山岳アシストの量と質、もしかしたら付け入る隙になり得るかも…?

(ただ、実は他のチームも「超強力な布陣」みたいな感じではなかったり…)

 

そして、10秒差でフィニッシュした集団内にいる主な総合系選手は、カルーゾ(集団より3秒前でフィニッシュ)、トーマス、アントニオ・ティベーリ(バーレーン)、ダニエル・マルティネス、キアン・アイデブルックス(チーム・ヴィスマ・リースアバイク)、エディ・ダンバー(ジェイコ)、エステバン・チャベス(EF)、ベン・オコーナー(デカトロン)、エイネル・ルビオ(モビスター・チーム)、アレクセイ・ルツェンコ(アスタナ・カザクスタンチーム)、ここまでか。

バルデ、プラップ、ナイロ・キンタナ(モビスター)の3人は57秒、アレンスマンは2分17秒も遅れてのフィニッシュに…。

バルデ、直近のリエージュ~バストーニュ~リエージュで2位に入っていたので、期待していたんだけれども…。

ただ、まだジロは始まったばかり。

ここからどんな展開になるのか、楽しみにしていようではないか!