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【レース感想】ツール・ド・フランス2022 第7ステージ

Super Tadej!!

1級山岳ラ・プランシュ・デ・ベルフィーユ…改め、ラ・「シュペール」・プランシュ・デ・ベルフィーユにフィニッシュする、今大会最初の本格的な山岳ステージ。

登坂距離7km・平均勾配8.5%という基本プロフィール以上に、終盤になるほど増す勾配(最大勾配24%)、そして頂上付近には未舗装路区間が選手の前に立ちはだかる。

"Super"(シュペール、英語で言えば「スーパー」、日本語に直訳すれば「超」)と主催者側が名づけるのも納得するような、激戦必至のレイアウトだ。

 

長めのアタック合戦の末に出来上がったこの日の逃げは、総勢11人。

2019年に同じフィニッシュ使用時にステージ1位・2位だったディラン・トゥーンス(バーレーン・ヴィクトリアス)とジュリオ・チッコーネ(トレック・セガフレード)、山岳逃げのスペシャリストレナード・ケムナ(ボーラ・ハンスグローエ)など、かなり良いメンバーが入っている。

一方のメイン集団をコントロールするのは、前日にポガチャルがマイヨジョーヌを獲得したUAEチームエミレーツ

逃げに総合2分7秒遅れのマクシミリアン・シャフマン(ボーラ)がいた事もあってか、タイム差は大きくても3分ほどに留めている。

 

中盤に設けられた2つの3級山岳を越え、人数を4人にまで減らした先頭集団はいよいよラ・「シュペール」・プランシュ・デ・ベルフィーユに突入。

生き残っているのは、ケムナ、トゥーンス、シモン・ゲシュケ(コフィディス)、ルーク・ダーブリッジ(チーム・バイクエクスチェンジ・ジェイコ)、メイン集団とのタイム差は1分30秒ほどにまで縮まっている。

先頭で動きがあったのは残り6.4km辺りの、勾配が10%を超える区間

ゲシュケがアタックを仕掛けて抜け出すと、ケムナとトゥーンスはペース走で追走の構え、ダーブリッジは力なく遅れていく。

残り5.7km、ケムナが加速してトゥーンスを突き放すと一気にゲシュケに合流、そして残り5kmを切るとさらに加速を見せて独走を開始!!

メイン集団とのタイム差は1分10秒程、山岳逃げ切りの名手ケムナなら、逃げ切る可能性も…?

 

メイン集団は相変わらずUAEによるペースメイク、ブランドン・マクナルティ→ジョージ・ベネット→ラファウ・マイカと、牽引を継いでいく。

対して、イネオス・グレナディアーズやチーム・ユンボ・ヴィスマは上手く集団内で力を温存し、最終局面まで人数を残す事に成功している。

先頭のケムナが残り1kmを通過、メイン集団とのタイム差は35秒…。

逃げ切れるかかなり際どい状態で、勾配が厳しくなっていく未舗装路という、地獄のような区間に突入していく。

メイン集団では、残り1kmを切った直後にマイカが「もう限界だ、行ってくれ!」というジェスチャーを見せ、ポガチャルが早くも加速し始める展開に!

その背中を捉えるのは、ユンボからヨナス・ヴィンゲゴーとプリモシュ・ログリッチ、イネオスからゲラント・トーマスとアダム・イェーツ、更にはロマン・バルデ(チームDSM)、ダヴィド・ゴデュ(グルパマFDJ)、エンリク・マス(モビスター・チーム)も食らいつく。

先頭ではケムナが最も勾配が厳しい区間でもがき、その頃後方ではポガチャルのペースにアダム・イェーツ、ゴデュ、マスが千切られている。

残り300mを切ると、ポガチャルは腰を上げてもう一段階加速!

ケムナはもう目の前、しかし残り距離もあと僅か…!!

残り250m、ヴィンゲゴーがアタック!!

反応できたのはポガチャルのみだ…!!

残り100m、ヴィンゲゴーとポガチャルはもの凄い勢いでケムナをぶち抜く!!

そして、なんとここでポガチャルがほんの少し離されている…!?

しかし、ポガチャルは冷静に一瞬息を整え、残り50mから加速してヴィンゲゴーを捉える…!!

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これがマイヨジョーヌの力!!

ポガチャルが激戦を制してステージ2連勝!!

いやいやいや、ちょっとありえない走り…。

先に仕掛けたヴィンゲゴーは、決して最後に失速したようには見えない。

ヴィンゲゴーの加速に離されかけたポガチャルが、あの一瞬で息を吹き返して、まだしっかりと踏めているヴィンゲゴーを抜き去るのは…、正直言ってありえない。

いや、起こってしまったんだけれども…。

"Super"を冠するステージで起こったのは、王者の"Super"すら超えたような走り。

またしても、我々はとんでもないものを目撃してしまったのかもしれない。

 

そして、最後の最後に敗れてしまったヴィンゲゴーだけれども…、絶対王者ポガチャルに対して、自らアタックを仕掛けてあと一歩まで追いつめたその走りは、本当に素晴らしかった。

この日改めて見せたそのポテンシャルが、ポガチャル攻略の糸口となり得るのか。

"Super"な争いが繰り広げられる事を期待したい。