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【レース感想】ツール・ド・フランス2023 第15ステージ

まさかの「ワウト」対決…!?

2週目の最終日は、1級・1級・3級・2級・1級と、5つのカテゴリー山岳が登場するハードな山岳ステージ。

特に、フィニッシュに向けて連続して登場する2つの山岳、2級山岳アムラン(登坂距離2.7km・平均勾配10.9%)と、1級山岳サンジェルヴェ・モンブラン(登坂距離7km・平均勾配7.7%)は、実質1つの超級山岳のような難易度だ。

 

逃げ切りも充分に可能なレイアウトということで、アクチュアルスタート後のアタック合戦はかなり活発に。

そうして出来上がった逃げは…なんと35人という超巨大なもの。

ワウト・ファンアールト(ユンボ・ヴィスマ)、マルク・ソレル(UAEチームエミレーツ)、オマール・フライレ(イネオス・グレナディアーズ)と言った総合争いの「前待ち」の可能性がある選手、激しい山岳賞争いを繰り広げるニールソン・パウレス(EFエデュケーション・イージーポスト)とジュリオ・チッコーネ(リドル・トレック)、そしてステージ勝利を狙うべく数多くのクライマー勢と、これは人数もその質もかなり強力な逃げだ。

一方のメイン集団では、コース上に身を乗り出した観客に起因する落車が発生してしまう…。

今大会、観客のせいでの落車が結構起きているのは、本当に残念すぎる…。

この落車の影響もあり、メイン集団はペースをかなり落として、逃げ集団に最大で8分以上のタイム差を容認。

これは…逃げ切り勝利の展開か。

そして山岳賞争いは、1つ目の1級山岳を3位、2つ目の1級山岳を1位で通過したチッコーネが、なんとパウレスと同点に並ぶことに。

同点だと、ポイントを獲得した山岳の等級の関係で順位が決まり、首位は…チッコーネ。

総合争いだけでなく、山岳賞争いもかなり拮抗した勝負になってきた…。

 

ステージ勝利に向けて大きな動きがあったのは、意外にも3級山岳。

ソレルが抜け出し…え?

ソレル!?

…前待ちの可能性も考えられたソレルが、意外な抜け出しを見せて先行を開始。

単独で山頂を通過したソレルに下りで追いついたのは、ファンアールト、ワウト・プールス(バーレーン・ヴィクトリアス)、クリスツ・ニーランズ(イスラエル・プレミアテック)の3人。

このまま4人で最終盤に突入する…と思った矢先、ニーランズは残念ながら落車…。

幸い大事には至らなかったけれど、勝負権は失ってしまった。

そして、ソレルはダウンヒルでファンアールトとプールスから若干離されてしまう、少し苦しい展開に…。

 

2級山岳アムランの登坂口でソレルはなんとか2人の背中を捉えた…ように見えた瞬間、プールスが切れのあるアタックを繰り出す!!

プールスはそのままファンアールトとソレルを突き放し、ステージ勝利に向けて独走を開始!!

そしてファンアールトを抜いたソレルだったけれども、その後少し不可解な失速…?

ステージ勝利は、先頭で軽快に踏み続けるプールスと、その後方で黙々とペース走を続けるファンアールト、「2人のワウト」に絞られたか。

 

プールスの踏みは1級山岳サンジェルヴェ・モンブランに入っても衰えず、ファンアールトとの差は徐々に拡大。

残り3kmでその差は1分強と、これは決まった…!!

最後までしっかり踏み続けたプールス、両腕を力強く掲げながらフィニッシュ!!

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プールスによる鮮やかな10km登坂独走!!

チームスカイ(現イネオス・グレナディアーズ)の全盛期を支えた名アシストが、ベテランになってから掴んだ嬉しいグランツール初勝利!!

急勾配の2級山岳で仕掛け、そのままペースを崩さず独走勝利は本当にお見事!!

2010年代の盟主スカイの最強アシスト陣の1人が、改めてその強さを証明してくれたのはなんと感慨深いことか!!

「その頃のスカイのアシスト」という意味では、第13ステージでのミハウ・クフィアトコフスキ(イネオス)に続く今大会での勝利。

こうなると…、次はミケル・ランダ(バーレーン)やジャンニ・モスコン(アスタナ・カザクスタンチーム)にも期待したくなる…。

 

プールスよりも6分以上後方のメイン集団は、気が付けば前日同様アダム・イェーツ(UAE、総合5位)、タデイ・ポガチャル(UAE、総合2位)、ヨナス・ヴィンゲゴー(ユンボ、総合首位)の3人に。

ポガチャルとヴィンゲゴー、どちらがどこから仕掛けるのか…と思いながら見ていたら、意外にもアダム・イェーツが少し抜け出して先行。

ポガチャルとヴィンゲゴーはお互いに牽制状態でペースが落ち、カルロス・ロドリゲス(イネオス、総合3位)が追いついて来る。

そしてアダム・イェーツは、なんと逃げから降りてきたソレルとドッキング…!?

少し不可解な失速を見せていたソレル、まさかアダム・イェーツとの前待ちを狙っていたとは…!!

総合トップ3の集団では、残り900mでポガチャルが強烈なアタックを仕掛けるけれども、ここはヴィンゲゴーもしっかり反応。

ペースが上がったことでアダム・イェーツとソレルを一気に抜き去った2人は、そのまま差が付くことなくフィニッシュ。

その20秒後にアダム・イェーツが、そして更に18秒後にロドリゲスがフィニッシュ。

総合4位のジャイ・ヒンドレー(ボーラ・ハンスグローエ)がそこから更に1分以上遅れてフィニッシュしたことで、アダム・イェーツは総合4位に順位を上げただけでなく、ロドリゲスとの総合タイム差は僅か19秒。

総合優勝争いに続いて、表彰台のもう一枠を巡った争いもかなり激化してきた…!

 

2週目を終えたツール、総合首位ヴィンゲゴーと総合2位ポガチャルの差は10秒と、総合優勝の行方はまだ全く分からない。

そして総合3位争いも19秒差、山岳賞争いはなんと同点と、色々なものがあまりにも接戦すぎる…!

泣いても笑っても、残すは6ステージのみ。

3週目、一体どんな展開になるのか本当に楽しみだ。