渾身のアタック!!
第2ステージは、ドノストア・サンセバスティアン・クラシコアの舞台としてもお馴染みのサンセバスティアンにフィニッシュする丘陵ステージ。
フィニッシュの20kmほど手前に2級山岳ハイスキベル(登坂距離8.1km・平均勾配5.3%)が登場するので、「登れるスプリンター」…例えばマッズ・ピーダスン(リドル・トレック)でも生き残れるかどうか、正直言ってかなり怪しいところ。
まあ、どうなるかはレース展開次第か。
この日の逃げは、山岳賞ジャージを着るニールソン・パウレス(EFエデュケーション・イージーポスト)に、エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(トタルエネルジー)とレミ・カヴァニャ(スーダル・クイックステップ)を加えた3人。
実力と実績を兼ね備えた強者による逃げは、無駄に争って体力を消耗するようなことをせず、パウレスが山岳ポイント、ボアッソンハーゲンがスプリントポイントを加算させながら順調にローテーションを回していく。
一方のメイン集団を牽引するのは、マイヨ・ジョーヌのアダム・イェーツを擁するUAEチームエミレーツ。
こちらは逃げのように順風満帆では無く、牽引のペースが速すぎる(?)ミッケル・ビョーグをベテランのラファウ・マイカやマッテオ・トレンティンが諭したり、途中トレンティンの落車があったりと、なんだかちぐはぐな様子も…。
それでも、結果としては順調に逃げ集団をコントロールして、ハイスキベル突入までにカヴァニャとボアッソンハーゲンは吸収されることに。
パウレスはメイン集団に1分30秒以上のタイム差を持ってハイスキベルに突入したけれども、メイン集団はユンボ・ヴィスマとUAEの牽引によって、ハイスキベルの登りでもの凄いペースアップをすることに。
いやいや、登り口直後にマチュー・ファンデルプール(アルペシン・ドゥクーニンク)やビニアム・ギルマイ(アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ)がメイン集団から脱落とか、とんでもないペースすぎないか…?
みるみるタイム差を削られたパウレスは、山頂まで残り2.7km辺りであえなく吸収。
メイン集団は、ほぼ総合系の選手と山岳アシストしか残っていないような「惨状」に…。
山頂まで残り700m、マイカが牽引を終えて後方に下がると、集団を牽くのはマイヨ・ジョーヌを着たアダム・イェーツ。
そして山頂まで残り300mを切ったタイミングで、サイモン・イェーツ(チーム・ジェイコ・アルウラー)がアタックすると、タデイ・ポガチャル(UAE)とヨナス・ヴィンゲゴー(ユンボ)の2人が軽々と反応!
残り100mでヴィンゲゴーがカウンターで加速を見せると、サイモン・イェーツは離される一方、ポガチャルはピッタリくっついて行く!
ヴィンゲゴーとポガチャルによるまるで山頂フィニッシュのようなマッチスプリントは、ポガチャルが制してこの日もボーナスタイムを獲得!
そしてポガチャルは、そのままペースを緩めずに後続を突き放しに掛かる…!!
おいおい、まだ第2ステージでしょ…。
下りで先頭交代を促すポガチャルに対して、ヴィンゲゴーは首を横に振り、あくまで「付き位置」を選択する。
そうするとやはりペースは上がり切らなくて、しばらくすると後方から追走集団が合流に成功。
その直後に下りで飛び出しを仕掛けたのは、地元バスク出身でコースを熟知しているペッリョ・ビルバオ(バーレーン・ヴィクトリアス)。
ただ、流石に平坦区間に入るとビルバオは勢いを失ってしまい、残り5.5kmで吸収される。
その後、エマヌエル・ブッフマン(ボーラ・ハンスグローエ)、トム・ピドコック(イネオス・グレナディアーズ)、マティアス・スケルモース(リドル)といった選手が意表を突いたアタックを仕掛けたけれども、残念ながらどれも決まらない。
こうなると、ハイスキベルの登りを生き残った少数精鋭集団によるスプリント争いという展開一択か。
残り1kmのアーチを通過すると同時に猛然とアタックを仕掛ける白いジャージが…、あれは…コフィディスのヴィクトル・ラフェ!?
ラフェはあっという間に10mほどのギャップを作り出すことに成功、集団を牽くウィルコ・ケルデルマン(ユンボ)は限界が近いのか、ペースを上げられない…!!
残り500mを切っても勢いを失わないラフェ、そして集団からは残り200mを切ってワウト・ファンアールト(ユンボ)が発射!!
猛追を見せるファンアールト、ポガチャル、ピドコック!
しかしラフェの脚も衰えない…!!
これぞ渾身のアタック!!
ラフェがあまりにも鮮やかな奇襲で、ステージ勝利をもぎ取った!!
これ勝ち方は凄すぎる!!
あの展開で奇襲を決めるのは、一瞬でギャップを作り出す加速力と、最後まで踏み続ける持続力、そしてなにより特大の勇気が必要でしょ…!!
いや~お見事!!
ラフェはツール初勝利、そしてコフィディスはなんと15年振りのツール勝利!!
序盤からレースが激しく動く今大会、こういった激熱の勝利が生まれるなら大歓迎だ!