登坂力に、勇気を込めて
第17ステージは、超級・1級・3級・2級・1級とカテゴリー山岳が登場する、これまたかなり高難度な山岳ステージ。
ちなみに、最初に登る標高2,244mの超級山岳パッソ・セッラは、本来は2級山岳扱いだったけれども、前日の第16ステージが短縮されて本来の超級山岳を通過しなかったことにより、急遽超級山岳扱いに変更。
一応、数字の上では山岳賞逆転の可能性は残っているから、スタート直後から動きが見られるかも…?
逃げ切りもあり得るレイアウトなので、スタート直後のアタック合戦は激しくなり、その結果としてなかなか逃げが決まり切らない展開に。
そんな中、超級山岳の先頭通過を争ったのはジュリオ・ペリツァーリ(VFグループ・バルディアーニCSF・ファイザネ)とナイロ・キンタナ(モビスター・チーム)。
ハンドルを投げ合うほどの接戦を制したのは、前日もステージ2位と好調だったペリツァーリ。
ペリツァーリは続く1級山岳も1位で通過して、山岳賞争いで2位に浮上してきた。
超級山岳を越えてから形成された10人の逃げ集団には、ペリツァーリ、キンタナの他に、ジュリアン・アラフィリップ(スーダル・クイックステップ)やアマヌエル・ゲブレイグザビエル(リドル・トレック)などの姿が。
そのまましばらく逃がしてもらえそうな展開にも見えたけれども、メイン集団はチームDSM・フェルミニッヒ・ポストNLの牽引でペースを上げてくる。
3級山岳の登坂に入ると、一旦逃げは捕まってしまったけれども、山頂付近でゲブレイグザビエルが再度飛び出しを敢行。
この動きにゲオルグ・シュタインハウザー(EFエデュケーション・イージーポスト)が反応して、2人で先行する格好に。
先頭の2人は、メイン集団から40秒弱のリードで2級山岳パッソ・ブロコンに突入。
このままだと逃げ切りは厳しいようにも思えたけれども、雨の影響もあってかメイン集団はあまりペースを上げず、タイム差は登坂区間で徐々に拡大していく。
そして残り34.3km、2級山岳の頂上まで2.5kmの位置から、シュタインハウザーが加速して独走を開始!
これは…メイン集団のペースが「緩い」ままなら、もしかして逃げ切れるのか…?
しっかりとペースを刻み続けるシュタインハウザーは、ゲブレイグザビエルに30秒、メイン集団に1分40秒ほどのタイム差を付けて2級山岳の山頂を通過。
シュタインハウザーはダウンヒルも順調にクリアして、1級山岳…先ほどとは違うルートで登るパッソ・ブロコンの入り口に到着。
メイン集団がダウンヒルを「安全に」下ったことで、タイム差は2分30秒に拡大している!
これは…可能性が出てきたぞ!
1級山岳パッソ・ブロコンの登坂で、メイン集団のペースを作るのはイネオス・グレナディアーズ。
ただやはり、「先頭のシュタインハウザーを捕まえてやろう」という意思は見えず、残り9kmでタイム差は3分を越えてくる。
残り2.8km、メイン集団から千切れる姿が映し出されたのは…総合4位のベン・オコーナー(デカトロン・AG2R・ラ・モンディアル)。
順位を守るためにはタイム差を最小限にとどめたいところ、なんとか粘れるか。
その直後、アタックを見せたのは総合2位のダニエル・マルティネス(ボーラ・ハンスグローエ)。
ただ、総合首位のタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)、総合3位のゲラント・トーマス(イネオス)、総合5位のアントニオ・ティベーリ(バーレーン・ヴィクトリアス)といったライバルを引き剝がすことはできない。
そして残り2.1km、この日もこの選手が…マリア・ローザを着用するポガチャルが加速!
集団の選手は誰もついていけない…!!
ポガチャル、またしても単独走りでフィニッシュを目指す!!
それでも、先頭のシュタインハウザーは2分ほど先行している。
残り2kmで2分は…さすがのポガチャルでも届かなそうだ。
シュタインハウザーは、ポガチャルから1分30秒以上のリードを保って、残り1kmのアーチを通過。
これはもう間違いない!
残り500mを切ると、シュタインハウザーも勝利を確信して、笑顔でフィニッシュに向かっていく!!
最後は両腕を突き上げながらフィニッシュ!!
シュタインハウザー、鮮烈なグランツールデビュー!!
積極的な走りで、見事に逃げ切り勝利!!
第15ステージでも3位に入っていて「これはかなり強いぞ…」なんて思っていたけれども、ステージ勝利までしてしまうとは、お見事!!
今シーズンで23歳の若手、今後の走りが本当に楽しみだ!!
シュタインハウザーの1分24秒後、ポガチャルが余裕綽々といった感じでフィニッシュ。
後続の集団…ダニエル・マルティネス、トーマス、ティベーリ、エイネル・ルビオ(モビスター・チーム)、ロマン・バルデ(チームDSM)は、ポガチャルから18秒遅れでのフィニッシュに。
そして早々に遅れたオコーナーは…ダニエル・マルティネスなどの集団から更に41秒遅れてフィニッシュラインに到達。
総合4位の座はなんとか守ったけれども、ティベーリとの差は42秒と、結構近づいてしまった。