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【選手紹介Vol.7】リッチー・ポート

熱い走りで魅せる小柄な名アシスト

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選手名:リッチー・ポート(Richie Porte)

所属チーム:イネオス・グレナディアーズ

国籍:オーストラリア

生年月日:1985年1月30日

脚質:オールラウンダー

 

主な戦歴

ツール・ド・フランス

 総合3位(2020)

ジロ・デ・イタリア

 ヤングライダー賞(2010)

ツアー・ダウンアンダー

 総合優勝(2017、2020)、ステージ通算8勝(2014~2016、2017 × 2、2018~2020)

パリ〜ニース

 総合優勝(2013、2015)、ステージ通算5勝(2013 × 2、2015 × 2、2017)

クリテリウム・デュ・ドーフィネ

 総合優勝(2021)、ステージ1勝(2017)

ツール・ド・ロマンディ

 総合優勝(2017)、ステージ1勝(2010)

・ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ

 総合優勝(2015)

ツール・ド・スイス

 総合優勝(2018)

 

どんな選手?

そのダンシングを多用した特徴的な走りで、チーム・スカイ(現イネオス・グレナディアーズ)の3度のツール・ド・フランス総合優勝に大きく貢献した名アシスト。

 

2010年にワールドチームであるチーム・サクソバンクと契約すると、山岳ステージも個人タイムトライアルもこなせるオールラウンドな走りを披露して、その年のジロ・デ・イタリアで総合7位となりヤングライダー賞を獲得。

2012年にはチーム・スカイに移籍し、オールラウンダーとしてどの局面でも活躍できる能力を存分に発揮する。

グランツール(3大ステージレース)では「登坂力・牽引力・献身性」を兼ね備えるアシストとして、ブラッドリー・ウィギンス(2012年)とクリス・フルーム(2013年・2015年)によるツール・ド・フランス総合優勝に大きく貢献して評価を高める。

特に、ツール2013の第18ステージではフルームのハンガーノックという最大の危機を、ペナルティ(山岳ステージで残り20kmを切ってからの補給はペナルティの対象)を厭わずチームカーまで戻って補給を受け取りに行き、何とか乗り切る事に成功。

その機転と献身性、そしてチームカーに戻った事で体力を使いながらも最後まで牽引を続けたその実力は、フルーム総合優勝の立役者と言って過言では無いだろう。

その実力はやはりチームからも高く評価されていて、1週間前後のステージレースではエースとして走る機会を与えられ、パリ~ニース(2013、2015)やボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ(2015)といったワールドツアーのステージレースで総合優勝するなど、一介のアシストにはとどまらない能力を有していると証明して見せた。

 

そして迎えた2016年、今度は自身がエースとしてツール・ド・フランスで総合優勝を狙うべく、フルームという絶対的エースのいるチーム・スカイを離れてBMCレーシングチームへと移籍

2016シーズンも開始後からツアー・ダウンアンダー総合2位、パリ~ニース総合3位、ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ総合4位、クリテリウム・デュ・ドーフィネ総合4位と安定した結果を残し、もはやその実力に疑いの余地は無く「打倒クリス・フルームの有力候補」としてツール・ド・フランス2016に挑む事に。

 

しかし、ここからが彼の悲運の始まりだった。

満を持してエースとして勝利を狙いに行ったツール・ド・フランス2016では、第2ステージでメカトラブルにより2分近くもタイムを失ってしまい、最終成績は総合5位。

決してそこまで悪い結果ではないが、期待値が高かっただけに「あのトラブルさえなければ…」と不完全燃焼に終わってしまった。

更にツール・ド・フランスでの悪夢は続き、2017年と2018年は2年続けて第9ステージで落車によるリタイアという、まさかの結果に終わる。

トレック・セガフレードに移籍して臨んだ2019年は3年ぶりの完走を果たすも、特に見せ場もないまま総合11位という残念な結果に終わってしまう。

この2019年は全体的に不調で、3年ぶりにステージレースでの総合優勝無し、ステージ勝利も母国オーストラリアのツアー・ダウンアンダーでの1勝のみという、とても寂しいものになってしまった。

 

結局グランツールでは表彰台に上がる事すら叶わぬまま、2020年シーズンには35歳となるポートは年齢的にもベテランと呼ばれる域に。

更に、チームはヴィンチェンツォ・ニバリという現役屈指の実績を持つ新たな総合エースを獲得する(彼もまたベテランではあるが)。

いよいよポートのチーム内での立場が危ういのかと、不安の声も聞かれる中シーズンはスタート。

しかしそんな周囲の声を跳ね返すかの如く、2020年のツアー・ダウンアンダーでは2つの山岳ステージで快走を見せ、見事に総合優勝を飾り健在をアピール。

大得意の登り坂である「ウィランガ・ヒル」で見せたダンシングを多用したクライミングは、まるで「まだまだ衰えていないぞ」と訴えかけるような渾身の走りだった。

 

登坂力もタイムトライアル能力も一級品の実力を見せ続けてきたその172cmという小さな体には、オールラウンダーとして抜群の能力が備わっていることは疑いようがない。

足りないのは僅かな運だけだと、多くの人がそう思っている。

年齢的に残されたチャンスは少ないのかもしれないが、そのチャンスを掴むだけの資格は有している筈だ。

もしツール・ド・フランスの表彰台に立つ日が来たとしても、それは決してサプライズなどではなく、「元・名アシスト」が自らの力で勝ち取ったサクセス・ストーリーとして記憶されるだろう。

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※2021年1月1日追記

ついにこの日がやってきた。

これまで何度も挑みながら、様々な不運も重なり届かなかったツール・ド・フランスの表彰台。

そのシャンゼリゼの表彰台に上がる日が、ついにやってきた。

 

1月のツアー・ダウンアンダーでステージ1勝と総合優勝、8月6日のモン・ヴァントゥー・デニヴェレ・チャレンジでも2位と、状態がいい事を伺わせていたポート。

ツールに向けて「エースとしてグランツールに挑戦するのはこれが最後」と宣言し、選手生活の集大成として相当な覚悟でツールに臨んだ。

第7ステージでは横風分断で少しタイムを失ってしまうも、そこ以外では安定した走りを披露。

第15ステージ3位、第17ステージ5位と、重要な超級山岳フィニッシュのステージでしっかり上位に残る流石の登坂力を発揮して、第19ステージ終了時点で総合4位。

残すは第20ステージの個人タイムトライアルのみ、総合3位のミゲルアンヘル・ロペスとのタイム差は1分39秒。

ロペスはタイムトライアルが苦手とはいえ、逆転は少し難しいようにも思えるタイム差が開いていたが、この厳しい状況でポートは渾身の快走を見せる。

ロペスがステージ45位に沈むのを尻目に、ポートはステージ3位に入るかなりの好タイムで走り抜け、土壇場での逆転を成功させた。

続く第21ステージも無事に走り切り、総合3位が確定。

ついに、シャンゼリゼの表彰台の座をその手に掴み取った。

 

キャリア序盤では、名アシストとしてチームメイトのツール総合優勝に大きく貢献し、評価を高めた。

キャリア中盤では、自身の栄冠を掴むためにツールに挑むも、なかなか思うような結果が残らなかった。

そして35歳を過ぎて、そろそろ競技人生の終わりも見えてくる年齢になり、キャリアの集大成として臨んだ最後の挑戦。

その最後のチャンスを、見事に掴み取ったのだ。

ついに登った表彰台で見せた穏やかな笑顔には、本当に多くの思いが詰まっていただろう。

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おめでとう、ポート!

 

2021年シーズン、ポートは古巣スカイの後継チームであるイネオス・グレナディアーズへの移籍が決定。

若かりし日のように、エースをアシストする役割が予想されている。

酸いも甘いも、挫折も栄光も味わってきた経験値、そして前年ツール総合3位に輝いた未だ衰えぬその力は、王者イネオスの復権に向けて大いに役立つだろう。

その走りとキャラクターで、文字通りチームを牽引してくれるはずだ。

 

※2021年12月2日追記

古巣に復帰となった2021年、ポートは前年同様に好調な走りを披露。

ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャではアダム・イェーツ、ツール・ド・ロマンディではゲラント・トーマスと、それぞれ総合優勝したチームメイトをアシストしつつ総合2位と、頼れるベテランとして絶大な存在感を発揮する。

更にツールの前哨戦であるクリテリウム・デュ・ドーフィネでは、第7ステージでライバルを突き放す強さをしっかりと見せて、見事総合優勝に輝く。

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上記3レースいずれもステージ勝利こそ無かったものの、タイムトライアルステージと山岳ステージで必ず上位に入るその安定感は、オールラウンダーのお手本とでも言うべき素晴らしいものだった。

 

エース級の働きを見せていたポートだが、ドーフィネ終了後に「ツールではアシストとして働く」と、その力を自らの結果の為ではなくチームの為に使う事を改めて宣言する。

イネオスとしては3年振りの覇権奪回に向けて、前年総合3位のポートというスーパーアシストの存在は、前年の陣容と比べて大きなプラスになるはず。

そんな期待感も抱かせつつツール第1ステージを迎えたイネオスだったが、ポートは第1ステージの落車に巻き込まれ、初日から2分以上のタイムを失う事になってしまう。

ポートは「アシスト兼エースにトラブルがあった際の保険」という役割を早々に果たせなくなってしまっただけでなく、落車の影響かその後は調子が安定しない様子も見せてしまう。

それでも、要所ではエースのリチャル・カラパスをアシストして総合3位に送り込んだのは、とりあえず最低限の仕事を果たす事が出来たと評価してもいいだろう。

 

もちろん、イネオスにとって最大の目標が「ツール総合優勝」である事は間違い無いはずだ。

そういう意味では、2021年もイネオスとしては決して100%満足のいくシーズンだった訳では無い。

2022年、改めて覇権奪回を試みるイネオスにとって、未だ衰えぬ力を見せるポートの重要度はかなり高いだろう。

1週間規模のステージレースではエースを担う事もありつつ、ツールではエースの為に全力を尽くす。

そんな全盛期と変わらぬポートの働きを、来シーズンも期待したい。