激熱な総合争いに期待!
今シーズン最後のグランツール、ブエルタ・ア・エスパーニャ2021が開幕しますね!
波乱の展開や目まぐるしい展開を見せる事の多いブエルタですが、今年は総合系の有力選手が多く出場しそうで、かなりの熱戦を期待してもいいでしょう。
今回も、イメージカラーの赤に相応しい熱い戦いの主役となるであろう注目選手の紹介を行っていきます!
総合系選手
エガン・ベルナル(イネオス・グレナディアーズ)
2020年のケガから復帰し、ジロ・デ・イタリア総合優勝でその才能を改めて証明したベルナルが、初めてブエルタに挑みます。
改めて言及する必要は無いかもしれませんが、ベルナルの最大の強みはその世界最高クラスの登坂力です。
ジロでもその力を遺憾なく発揮して、山岳ステージでライバルを置き去りに姿を何度も見せてくれました。
3週目に少し調子を落としましたが、第17ステージの傷を最小限に留める必死の粘りや、その後のステージでの冷静さを見せて総合首位を守り切った走りは、3週間の長丁場を戦う上でのいい経験になった事でしょう。
ベルナルは今回のブエルタで総合優勝すると、「史上最年少での全グランツール制覇」という偉業を達成します。
ファンとしてはもちろんそれを見てみたいですし、ベルナル自身の力、そしてチーム力的にもその可能性は充分あるでしょう。
ベルナル、アダム・イェーツ、リチャル・カラパスという強烈なトリプルエース体制をイネオスがどのように運用するのかも含めて、大注目です。
不屈の男ログリッチは、ブエルタ3連覇を目指しての出場となります。
今年のツール・ド・フランスは残念ながら落車の影響でリタイアしてしまいましたが、そこからがログリッチの本領発揮というか、本当に凄いところ。
ツール閉幕から約1週間後の東京オリンピックに参戦し、個人TTで金メダルを獲得してしまうそのタフさには、本当に驚きました。
大きな挫折を味わってもその直後に立ち上がり、そしてしっかり結果を残すそのメンタルこそ、ログリッチの真価でしょう。
もちろん、その走りも超一流なのは間違いありません。
元々の世界最高レベルのTT能力だけでなく、近年は登坂力もピュアクライマー顔負けなぐらいにまで強くなっているので、好調時は手が付けられない程の圧倒的な走りを見せてくれます。
また、チームもセップ・クス、ステフェン・クライスヴァイク、ロベルト・ヘーシンクなど、相変わらずイネオスと並ぶような強力なメンバーを揃えてきているので、恐らく今回もレースの主導権をがっちり握りに行くでしょう。
果たして3連覇となるか、注目していきましょう!
地元スペインが誇るクライマーのランダは、ジロでの落車から復帰してブエルタに臨みます。
優勝候補として出場したジロでは、第5ステージで落車に巻き込まれてしまい、その実力を発揮する前に無念のリタイアとなってしまいました。
状態が万全なら、その登坂力と安定感は現役トップクラスと言っていいでしょう。
ブエルタの前哨戦と言えるブエルタ・ア・ブルゴスでは総合優勝に輝き、仕上がりが順調な事をアピールしてくれました。
また、チームもランダの総合優勝一本に絞った、かなり強力な戦力を整えてきました。
ダミアーノ・カルーゾ、ワウト・プールス、ジャック・ヘイグというエース級クライマー、マーク・パデュンにジーノ・マーダーという進境著しい若手、そして新城幸也にヤン・トラトニックという頼れるベテラン平坦役と、イネオスやユンボとも対等に渡り合えると言っていいメンバーでしょう。
新城選手の活躍も含めて、注目です!
アダム・イェーツ(イネオス・グレナディアーズ)
イネオス待望のイギリス人エース候補として注目されていたアダム・イェーツは、今回のブエルタがイネオス移籍後初グランツールになります。
2016年のツールで総合4位となって以降、グランツールでの成績では双子の兄であるサイモン・イェーツ(チーム・バイクエクスチェンジ)に水をあけられてしまった感がありましたが、グランツール(というかツール)に照準を合わせるイネオスに移籍という事で、色々と話題を集めていました。
2021シーズンに入ってみると、アダム・イェーツはUAEツアー総合2位、ヴォルタ・ア・カタルーニャ総合優勝と、春先のステージレースでしっかりと結果を残し、イネオスのエースに相応しいだけの力があると証明する事に成功しています。
前述のように、イネオスはエース候補としてアダム・イェーツだけでなく、ベルナルにカラパスという2人のグランツール覇者も同時に出場させます。
重複しますが、このトリプルエースの力関係がどうなるのか、イネオス首脳陣がどのように運用するのかは、色々な意味で注目するべきでしょう。
山岳アシストのメンバーも、パヴェル・シヴァコフ、ジョナタン・ナルバエス、平坦も兼務でディラン・ファンバーレと決して悪くないメンバー(もしかして、トム・ピドコックも山岳アシスト?)ですが…、正直なところ、中盤以降はトリプルエースのうち誰か1人がアシストに回らないと厳しいようにも見えます。
イネオスのチームマネージメント、そしてそれがレース全体にどのような影響を与えるのか、必見です。
その他の総合系注目選手
上述の4人以外にも、やはりかなり良い選手が出場します。
- 昨年ブエルタ総合3位のヒュー・カーシー(EFエデュケーション・NIPPO)
- 前年ブエルタと今年のツール総合2位、そして東京五輪金メダル、イネオストリプルエースの一角リチャル・カラパス
- ジロ総合4位の経験が更なる飛躍を期待させるアレクサンドル・ウラソフ(アスタナ・プレミアテック)
- パリ~ニース2連覇のマクシミリアン・シャフマン(ボーラ・ハンスグローエ)
- モビスター・チームのダブルエース、エンリク・マスとミゲルアンヘル・ロペス
- ジロ総合7位と復活の兆しを見せているロマン・バルデ(チームDSM)
- 遂に単独エースとしてグランツールに参戦するジュリオ・チッコーネ(トレック・セガフレード)
こうやって改めて書き連ねてみると、錚々たるメンバーですね!
いや~、本当に楽しみです。
スプリンター
今年のブエルタは、珍しく「100%スプリンター向け!」みたいなステージがいくつかありますので、ブエルタらしからぬ激熱なスプリントが見られるかもしれません!
あの悲惨な落車から1年、よくぞ戻ってきてくれました。
昨年8月のツール・ド・ポローニュでの「ショッキングな事故」の直後、一時は人工的な昏睡状態措置が必要なほどの重傷を負いながら、ヤコブセンは4月からレースに復帰していました。
そして復活の勝利は意外にも早く、7/21のツール・ド・ワロニー第2ステージで手にする事が出来ました。
更に、勢いそのままに第5ステージでも勝利を挙げ、その勝利がまぐれやラッキーパンチではない事も証明してくれました。
体の状態を戻す事もそうですが、スプリントでの事故に対する恐怖心をこんなにも早く克服しているのは、個人的にはかなり凄い事だなと思います。
本当に、復活出来て良かったです!
今回のドゥクーニンクは総合は一切狙わずに、ステージのみを獲りに来ている布陣で臨みます。
ヤコブセンにとってブエルタは、2019年にグランツール初出場ながらステージ2勝を挙げた相性のいいレースですし、思い入れも深いでしょう。
苦境を乗り越えたヤコブセンの再出発に期待しましょう!
アルノー・デマール(グルパマFDJ)
ツールを無念の途中リタイアで終えたデマールは、意外にも今回がブエルタ初出場になります。
昨年ジロでの圧倒的な勝利から、今年のツールではポイント賞の有力候補と言われていたデマールでしたが、落車の影響もあり勝負に絡めないまま山岳ステージでタイムアウトと、非常に残念な結果に終わってしまいました。
そして急遽決まった今回のブエルタ参戦ですが、それなり以上の登り適正がありつつかなりのスプリント力も有しているデマールは、ブエルタのステージを狙うには向いていると捉える事も出来ます。
悔しさをバネに変えて大爆発となるか、要注目です。
マイケル・マシューズ(チーム・バイクエクスチェンジ)
今年のツールでポイント賞2位だったマシューズは、2014年以来のブエルタ出場になります。
ツールではステージ勝利こそありませんでしたが、中間スプリントでポイントをコツコツと稼ぎ続け、最後まで逆転を諦めずに頑張る姿が印象的でした。
そんなマシューズですが、実はグランツールでの最後のステージ勝利は2017年のツールまで遡り、つまりグランツールでは4年間勝利を挙げられていないのです。
そんな状況で、実に7年ぶりとなるブエルタ出場。
そして、その7年前のブエルタではステージ勝利をしっかりと挙げています。
当時と比べると純粋なスプリント力は若干衰えたようにも見えますが、その「登れるスプリンター」っぷりは健在です。
どのステージでどのような勝利を狙ってくるか、注目したいと思います。
ジャスパー・フィリプセン(アルペシン・フェニックス)
ツールで悔しいリザルトが続いたフィリプセンは、昨年に続いてのブエルタでの勝利を狙います。
フィリプセンは今年ツールで良い走りは見せたものの、2位が3回に3位が3回と、勝利まであと一歩手が届かないまま終わってしまいました。
スプリントステージでは常に3位以内に入った安定感は評価されるべきだと思いますが、そこに「何か」が足りなかったのもまた事実でしょう。
最終ステージも僅差の2位に終わり、中継には写っていませんでしたが座り込んで悔しがるその姿は、勝負の残酷さがよく表れていたと思います。
そして、ツール終了直後の独特な雰囲気の中、本気で悔しがっているフィリプセンのその熱い思いというのは、これこそがプロのスポーツ選手なのだとも感じました。
このツールでの悔しさを力に変え、2年連続となるブエルタでの勝利を挙げてくれることを期待しています。
その他注目選手
その他にもちょっと気になる選手が何人かいるので、紹介してみます。
ファビオ・アル(チーム・クベカ・ネクストハッシュ)
2015年に25歳でブエルタ総合優勝を飾ったアルですが、近年は病気やケガに苦しんだこともあり低迷しています。
それでも今シーズン、直近のレースで少し復調の兆しも見えてきました。
7月のシビウ・ツアーで総合2位になると、ブエルタの前哨戦と言われる8月のブエルタ・ア・ブルゴスでも総合2位と、悪くない結果を残しています。
全盛期のような力が戻ってきた…かどうかはまだ分かりませんが、ここ数年の山岳ステージで全くインパクトを残せていなかった状態よりは、良くなってきていると思います。
まだ31歳と老け込むには早いので、なんとか復調してもらいたいところです。
※追記
なんと、アルが今回のブエルタを最後に引退する事を発表しました。
思い入れのあるブエルタを、存分に楽しんでほしいです。
26歳でプロ入りした2019年に、いきなりブエルタの山岳賞を獲得した「遅れてきた新人」ブシャールは、今年のジロでも山岳賞を獲得する活躍を見せてくれました。
ステージレース全体を通じての総合成績ではあまりいい成績が残せていないブシャールですが、そうなると今回も狙うのは山岳賞か、もしくはグランツール初勝利…というかプロ初勝利を狙って、どこかのステージで果敢に攻める事になるでしょうか。
いずれにしても、積極的な走りを見せてくれそうであり、非常に楽しみな選手の1人です。
クイン・シモンズ(トレック・セガフレード)
今年プロ2年目を迎えるシモンズは、2019年のジュニア世界選手権を制した実績を誇る、まだ20歳の新星です。
SNSで人種差別的な投稿をしたとして1ヶ月の謹慎処分を受けたりもしましたが、その実力は間違いなく本物で、今年のツール・ド・ワロニーでプロ初勝利となるステージ勝利と総合優勝を飾りました。
昨年ツール・ド・ハンガリーの山頂フィニッシュで上位に入ったり、今年のストラーデ・ビアンケでメカトラと落車に見舞われるまで先頭集団に生き残っていたりと、未だその脚質の全容は見えていませんが、どんな走りを見せてくれるのか楽しみにしています。
熱い戦いが見たいのだ!
既に書きましたが、今年のブエルタは総合争いが激熱になりそうな、かなり良いメンバーが揃っています!
きっと、期待に違わぬ熱い戦いが繰り広げられると思います!
ジロやツールとはまた一味違ったブエルタの魅力を、存分に楽しんでいきましょう!