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【レース感想】ジロ・デ・イタリア2021 第21ステージ

それぞれの物語、それぞれの勝利

ジロ・デ・イタリア2021、長い長い3週間の旅路を締めくくるのは、オールフラットな30.3kmの個人TT

総合トップ3はお互いのタイム差を考えると順位の変動はなさそうだけれども、それでもこの30分超の一人旅を無事に終えなければ、レースは完結しない。

それぞれがどのような締めくくり方を見せるのか、そしてどのような歓喜の瞬間が訪れるのか。

ピンク色に染まったミラノの市街地で、最後のステージが始まった。

 

ステージ優勝争いは、フィリッポ・ガンナ(イネオス・グレナディアーズ)とレミ・カヴァニャ(ドゥクーニンク・クイックステップ)という現役最高峰のTTスペシャリストによる、2人だけの世界に。

 

まずは24番出走、第1ステージの勝者にして現世界王者の「トップガンナ」ことガンナ

マクシミリアン・ヴァルシャイド(チーム・クベカ・アソス)のマークした暫定トップタイムを軽々と上回るペースで中間計測を通過していき、見る人全てが「これは別次元のタイムが出る」と確信していたはず

しかし残り1.5km、まさかのパンクによるタイムロス。

バイク交換を驚くほど(本人曰く「F1のように」)スムーズにこなして再出発するけれども、失ったタイムはどう少なく見積もっても10秒、下手したら20秒はロスしたように見える。

それでも、ヴァルシャイドを33秒上回る堂々のトップタイム。

直後に出走した第1ステージ2位のエドアルド・アッフィニ(チーム・ユンボ・ヴィスマ)も13秒届かない。

トラブルがありつつこのタイムとは…恐るべしガンナの豪脚。

 

このガンナのトラブルで俄然ステージ優勝の可能性が高まったカヴァニャは、74番手で出走。

ガンナと比べると、第1中間計測では14秒遅れ、第2中間計測では18秒遅れと、ペース的には少し劣っている。

しかし、ガンナが最終盤にパンクでタイムを失っている事を考えると、非常に際どいタイム差になりそうな…。

固唾を飲んで見守っていると、残り500mでまさかの事態が起こる。

なんと、カヴァニャが落車。

コーナーを曲がり切れず(…というかコーナーの存在に気が付かず?)アウト側のフェンスに正面衝突という、なんとも珍しい落車をしてしまう。

すぐさま立ち上がりフィニッシュまで走り切るけれども、そのタイムはガンナから12秒遅れ。

カヴァニャは千載一遇の好機を活かせず、悔いが残りそうな結果となってしまった。

 

その後、この2人のタイムを脅かす選手は現れず、最終ステージの勝者はガンナに決定!!

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自らが世界最強だと証明する、第1ステージに続く個人TTでの勝利!!

昨年のジロでも個人TT3ステージ全勝だったので、この2年間ジロの個人TTはガンナしか勝っていないというとんでもない事態に!!

そしてとんでもないと言えば、パンクでタイムを失ったはずなのに勝ってしまうのも、もはや意味が分からないレベル。

ステージ2位のカヴァニャも落車しながらの2位という、2人の突出した力が際立つ結果に。

 

そして終盤に入り、いよいよ総合上位勢が出走。

 

まずは総合9位、トビアス・フォス(ユンボ)。

第1ステージで3位と想像以上の好走を見せ、更にはチームのエースであるジョージ・ベネットがタイムを失う中でもしっかり登り続けて、まさかの総合トップ10入り。

この日もステージ12位と総合勢の中ではかなりの好タイムを叩き出し、今後に期待が持てる素晴らしい締めくくりをしてくれた!

3週間をしっかりと戦い抜いた事は間違いなく大きな経験になったので、総合エースとして覚醒の時は近いはず!

 

続いてスタートしたのは、ジョアン・アルメイダ(ドゥクーニンク)。

昨年のジロを沸かせたTT巧者は、この日も総合勢ではトップとなるステージ5位のタイムを叩き出す!

この好走で、総合8位から総合6位へとジャンプアップ!

序盤の山岳での遅れや、一時はレムコ・エヴェネプールのアシストをしながら、3週目の山岳で一気に順位を上げていいた走りは本当に力強かった!

これだけ登れるなら、TTという大きな武器と合わせてもう間違いなく世界トップクラスの総合系選手だ!!

 

今大会最強の山岳アシストとして活躍したダニエル・マルティネス(イネオス)は、ステージ14位の好タイムで順位を一つ上げて、総合5位でのフィニッシュ。

山岳アシストとしてエースを見事に守り抜きながら、自身もこの順位にいるのはかなり凄い事だ!

そもそも、昨年のクリテリウム・ドゥ・ドーフィネ覇者なのだから、総合力が相当高いのは間違いない。

イネオスの厚い選手層の中ではエースとして走る機会は限られてしまうかもしれないけれども、これだけの走りを見せたのならきっとどこかで機会は巡ってくるはずだ!

 

第1ステージで11位と「意外な」好走を見せたアレクサンドル・ウラソフ(アスタナ・プレミアテック)は、この日もステージ19位のタイムで走り抜き、総合4位の座をしっかりとキープ。

昨年のジロは胃腸のトラブルによって第2ステージでリタイアと悔しい思いをしていただけに、しっかりと結果を残せて本当に良かった!

登坂力とTT力を高い次元で両立させているポテンシャルは、今後間違いなくグランツールの総合表彰台に、そして総合優勝にも届き得ると、そう思わせるには充分な走りを見せてくれた!

アスタナの新たな総合エースの活躍に期待したい!

 

総合3位で出走したサイモン・イェーツ(チーム・バイクエクスチェンジ)は、少しタイムを失いながらもしっかりと順位をキープしてフィニッシュ!!

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「3年前の忘れ物」には届かなかったかもしれないけれども、3週目に見せた強さと攻めの姿勢、そして第19ステージでの勝利は、「成功」に充分値するものだと思う。

3週目のサイモン・イェーツは、ベルナルのファンとしては本当に怖い存在だった。

コンディショニングという課題は見せつつも、最後はしっかりと上向きに持ってきての総合3位。

胸を張って、またジロに帰ってきてほしい。

 

前日のステージ勝利でイタリアを沸かせたダミアーノ・カルーゾ(バーレーン・ヴィクトリアス)は、ステージ17位の好タイムで走り抜き、最後は少し控えめにサムアップを見せながらのフィニッシュ!!

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エースのミケル・ランダを落車で失った事で急遽代役としてエースを任されながら、常に安定した登坂力を見せて順位を上げ、そして第20ステージで劇的な勝利を上げての総合2位は、本当にお見事!!

プロ通算2勝、ワールドツアー未勝利の「生粋のアシスト」が、その力を見事に結果に変えた、素晴らしい3週間の物語だった!

もちろん日本人としては、新城選手がアシストとしてカルーゾの総合2位獲得に貢献する姿を見せてくれたのも、本当に嬉しい!!

 

最終走者は、総合リーダーの証であるピンク色のスキンスーツを身に纏ったエガン・ベルナル(イネオス)。

カルーゾに対して1分59秒のリードを持っているため、直線ではしっかり踏みつつもコーナーではリスクを取らない、堅実で落ち着いた走りを見せている。

TTが得意なカルーゾに少しづつタイム差を削られながらも、間違いなく順位を守れるペースを保ち、フィニッシュまでの距離を縮めていく。

そして、1分30秒ほどのリードを保ったまま、最終コーナーを抜ける!

体を起こし、両腕を広げ、そして両手を突き上げ、最後は雄叫びを上げる!!

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ジロ・デ・イタリア2021、総合優勝はエガン・ベルナル!!

おめでとうベルナル!!

2019年のツール・ド・フランス覇者が、ケガに苦しんだ2020年を乗り越え、そして3週間の長い激闘を経て、たどり着いたミラノのフィニッシュ地点。

決して、道のりは平坦では無かった。

強力なライバルの台頭による焦りもあっただろう。

痛めた背中の状態に不安もあっただろう。

そんな状況でもエースを任されるプレッシャーもあっただろう。

それでも、登坂でその圧倒的な強さを発揮し、苦しいときは仲間に支えられながら、最後まで冷静に前だけを見据えて、王者としてミラノにたどり着いた!

本当におめでとう!!

今後もまた新たな目標に向かって力強く進んでいく姿を、ずっとずっと応援し続けるぞ!!

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やっぱり、ロードレースは面白い!

改めて、最終成績を確認。

 

総合優勝:エガン・ベルナル(イネオス・グレナディアーズ

総合2位:ダミアーノ・カルーゾ(バーレーン・ヴィクトリアス

総合3位:サイモン・イェーツ(チーム・バイクエクスチェンジ)

ポイント賞:ペテル・サガン(ボーラ・ハンスグローエ)

山岳賞:ジョフリー・ブシャール(AG2Rシトロエン

ヤングライダー賞:エガン・ベルナル(イネオス・グレナディアーズ

総合敢闘賞:ドリース・デボンド(アルペシン・フェニックス)

チーム総合:イネオス・グレナディアーズ

フェアプレー賞:バーレーン・ヴィクトリアス

 

総合優勝は、エガン・ベルナル!

個人としての強さは勿論、最強のチーム力と共に、王者らしい走りで見事に頂点に輝いた!

ケガに苦しんだ王者が、しっかりと力を取り戻して、そして更なる強さを身につけて帰ってきた!

そしてイネオスは、昨年のテイオ・ゲイガンハートに続いてのジロ2連覇を達成!

やはり、イネオスは強い!

 

総合2位は、ダミアーノ・カルーゾ!

「代役エース」が、本人も想像できなかったほどの大きな結果を掴み取った!

常に上位でフィニッシュした安定感、そして痺れるような第20ステージの攻めは、本当に素晴らしかった!

 

総合3位は、サイモン・イェーツ!

少し苦しみながらも、自身2度目のグランツール総合表彰台の座を手に入れた!

今後も切れのあるアタックで見る者を魅了しながら勝利を目指してほしい!

 

ポイント賞はペテル・サガン

7度獲得したツールに続き、2度目の挑戦でジロのポイント賞を獲得!

やっぱりサガンは強かった!

 

山岳賞はジョフリー・ブシャール!

2019年のブエルタ・ア・エスパーニャに続く、2度目のグランツール山岳賞!

26歳からプロキャリアをスタートさせた遅咲きのクライマーは、一体今後どんな活躍を見せてくれるのか楽しみだ!

 

総合敢闘賞は、ドリース・デボンド!

プロチームのアルペシンは、ステージ1勝と共に大きなインパクトを残す事に成功!

個の力もチーム力も全くワールドチームに劣らない、最強のプロチームだ!

 

チーム総合賞は、イネオス・グレナディアーズ

イネオスはベルナルだけでなくマルティネスも総合トップ5に送り込む圧倒的な力を披露!

 シヴァコフを失いながらもレースをコントロールし続けたそのチーム力は、やはり王者と呼ぶに相応しい!

 

フェアプレー賞は、バーレーン・ヴィクトリアス

落車などで3人を失いながらもカルーゾの総合2位と言う結果を残すだけでなく、大会を通してペナルティがゼロでの受賞!

そして、フェアプレー賞の表彰で新城選手もポディウムへ!

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リタイアした選手のゼッケンを掲げながら、チームの雰囲気の良さが伝わってくるいい写真だ!!

そして新城選手は、これで14回連続のグランツール完走!

今後も最前線で頑張る姿が見られそうで何よりだ!!

 

今回のジロは、個人的には色々な選手の「物語」がよく見えたような気がして、見ていて本当に面白かった。

もちろん、自分がベルナルを応援していて強く感情移入していたこともその要因の一つなんだろうけれども、それとは関係なく、かなりのめり込んで見ていたと思う。

イネオス、バーレーン、ドゥクーニンク辺りの「エースとアシスト」の関係性は、これこそがロードレースの妙、ロードレースの難しさ、ロードレースの美しさと言いたくなるような、本当に見入ってしまうシーンの連続だった。

特に、第17ステージのベルナルを鼓舞するマルティネスと、第20ステージのビルバオを労うカルーゾは、「ロードレースを見ていてよかった」と本気で思える、素晴らしい瞬間だったと言いたい。

他にも、苦労人の勝利やプロチームの躍進など、本当に見どころが多くて感情が揺さぶられるような3週間だった。

…なんだか話のまとまりが無くなってきたので、とりあえずこれだけは声を大にして言いたい。

 

やっぱり、ロードレースは面白い!!

 

そう改めて実感させてくれる、最高の3週間をありがとう!

さあ、次はツールだ!!

熱くて濃密な3週間の物語を、また楽しんでいきたい!!

それでは、また!!

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