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ブエルタ・ア・エスパーニャ2020 注目選手紹介

ジロと並行開催!

ジロ・デ・イタリアが絶賛開催中ですが、10/20からブエルタ・ア・エスパーニャが開幕します!

新型コロナウィルス感染拡大の影響でまさかのジロとの並行開催となり、選手やチームだけでなく見る側にも優しくない設定ですが、頑張って応援したいと思います(笑)

 

元々は開幕からの3ステージがオランダで開催予定でしたが、コロナの影響でこれはキャンセルとなり、全18ステージで行われます。

結果的に、本来は第4ステージの予定だった厳しい山岳ステージが第1ステージになるという、なかなか荒れた展開になりそうな開幕となっています。

 

例年以上に波乱となりそうなブエルタ、注目選手を挙げていきたいと思います。

 

総合系選手

プリモシュ・ログリッチ(チーム・ユンボ・ヴィスマ)

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今回の総合優勝の本命は、間違いなく昨年の覇者ログリッチでしょう。

ツール・ド・フランスではまさかの逆転負けを喫しましたが、それでも冷静に考えれば総合2位というのは素晴らしいリザルトですし、ここ2年のグランツールでの安定感は群を抜いています。

 

昨年のブエルタ総合優勝は、ジロで終盤失速して総合3位に転落した事を踏まえて、かなり安定感を意識して走って勝ち取ったものでした。

そして、今年のツールでは結果的にその走り方が裏目に出てしまい、保守的過ぎた事が敗因の一つとも言われています。

ということは、昨年のジロで「攻めすぎての失敗」を経験して走り方を改善させて勝利したように、今年のツールで「守りすぎての失敗」を経験したログリッチユンボはその走りを更に進化させる可能性があると思っています。

アシスト陣もツールに続いて「ガチ」な選考で、強大な戦力を揃えてきました。

トム・デュムラン、セップ・クス、ジョージ・ベネット、ロベルト・ヘーシンクというツールでも働きまくった優秀なアシストたちが、ブエルタでもログリッチをしっかりと支えてくれそうです。

 

エンリク・マス(モビスター・チーム)

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チームのレジェンド、アレハンドロ・バルベルデがツールで振るわなかった代わりに、総合5位に入ったのがスペイン期待の若手であるマスです。

そもそも2018年のブエルタでは総合2位に入賞しているように、その実力は既に証明済みで、スペイン籍チームであるモビスターとしては、バルベルデに代わる新たなスペイン人エースとして大きな期待をしているはずです。

マスとしても総合優勝争いをするためにドゥクーニンク・クイックステップから移籍してきたので、そろそろ大きな結果を残したいところでしょう。

 

モビスターのメンバー選出も、ツールから1人だけ入れ替え(!)というかなり「ガチ」なものなので、全力でマスを勝たせに来た場合はかなり強力になりそうです。

ただ、問題は「1人のエースを勝たせる為に全力を注ぐ」という事をしっかりできるかどうかという、チームマネージメントの不安があるという部分ですが…。

これまで絶対的エースだったバルベルデ、マスと同じく新エース候補のマルク・ソレルと、なかなかアクの強い2人の有力な選手がいますので、果たしてどのようなオーダーが出るのか、チームの手腕にも注目です。

 

アレクサンドル・ウラソフ(アスタナ・プロチーム)

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元々は並行開催のジロに参加していて、若手の注目株として期待されていたウラソフですが、第2ステージで胃腸系のトラブルによってリタイアしてしまいました。

しかし、その実力と今年の調子は素晴らしいものがあります。

ツール・ド・ラ・プロヴァンス総合2位、ルート・ド・オクシタニー総合2位、モン・ヴァン・トゥー・チャレンジ優勝、イル・ロンバルディア3位、ジロ・デッレミリア優勝、ティレーノ~アドリアティコ総合5位と、今年出場した山岳系のレースでことごとく上位に入っています。

特に、イル・ロンバルディアヤコブ・フルサンの優勝をしっかりアシストしつつ、自身もしっかりと3位に入賞したタフさは本当に素晴らしかったです。

 

ジロは途中リタイアでしたが、早期でのリタイアだった事が幸いして2週間以上の間隔が空いたため、コンディションは問題ないでしょう。

アシスト陣もルイスレオン・サンチェス、ヨン・イサギレ、ゴルカ・イサギレ、オマール・フライレなど、これまたかなりのメンバーを揃えてきましたので、チーム力にも期待できそうです。

 

他の総合勢注目選手としては、遂にグランツールで単独エースとして走れそうなワウト・プールス(バーレーンマクラーレン、ツールでは落車で総合は振るわなかったもののステージ勝利をもぎ取ったダニエル・マルティネス(EFプロサイクリング)、ツールとジロでエースが離脱してしまい責任重大なリチャル・カラパス(イネオス・グレナディアーズ、どちらがエースか分かりませんが実力・実績共に十分なミッチェルトン・スコットのミケル・ニエベとエステバン・チャベス、ログリッチに不測の事態があれば代わりにそのままエースとして優勝しそうなトム・デュムラン(チーム・ユンボ・ヴィスマ)辺りが挙げられるでしょうか。

 

スプリンター

サム・ベネット(ドゥクーニンク・クイックステップ

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ツールではステージ2勝を挙げてポイント賞を獲得し、当代最強のスプリンターとして名乗りを上げたベネット。

ブエルタは配点の関係でスプリンターのポイント賞獲得は難しいですが、昨年のブエルタでも2勝を挙げていて、2年続けての活躍となるでしょうか。

 

ドゥクーニンクの最強アシスト陣も健在で、ツールでも大きく貢献したミケル・モルコフ、7年来の相棒であるシェイン・アーチボルドといったお馴染みのメンバーをしっかり連れてきていて、準備は万端です。

本人の純粋なスプリント力、ロングスプリントや登りスプリントもこなせる勝ち方の幅の広さ、そして最強のチーム力と、勝つための要素は満遍なく高い水準にあります。

ツールで結果を残したという自信もあり、大暴れする可能性は高いでしょう。

 

パスカル・アッカーマン(ボーラ・ハンスグローエ)

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昨年のジロでステージ2勝にポイント賞獲得、そして年間13勝を挙げて一躍トップスプリンターの仲間入りを果たアッカーマン。

今回のブエルタで、ベネットと正面から対抗できる実力を持った唯一の選手と言っていいでしょう。

先月のティレーノ~アドリアティコでステージ連勝したように、ベネットよりも爆発力があるタイプだと思うので、上手く波に乗れば勝ちまくる可能性もあると思います。

 

もちろんボーラもしっかりと良いメンバーを選出していて、リュディガー・ゼーリッヒやミヒャエル・シュバルツマンと言ったアシスト陣容は、ドゥクーニンクと比べても決して見劣りしません。

ツールに続いて「ベネットVS古巣ボーラ」という構図ですが、果たして今回はどちらに軍配が上がるか注目です!

 

ジャスパー・フィリプセン(UAEチームエミレーツ

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実績では前述の2人には劣りますが、今もっとも期待の若手スプリンターの1人であるフィリプセン。

昨年のツアー・ダウン・アンダーで20歳という若さながらステージ1勝を挙げる活躍を見せ、そしてなんとツール・ド・フランスのメンバーにも選出されて1桁フィニッシュを連発する安定感を披露してくれました。

今年も出場したワールドツアーのステージレースでは、全てのスプリントステージで1桁順位でフィニッシュするという、もの凄い安定感を見せています。

 

あとは勝ち切る力さえ身につければ、トップスプリンターの仲間入りができるはずです。

今回のチームのメンバー選出を見ると、あまりスプリントに力を注いでいない感じはしますが、その状況でどれだけ勝負できるか期待しています。

 

その他注目選手

クリス・フルーム(イネオス・グレナディアーズ

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総合系選手としてではなく、その他注目選手としてフルームを挙げさせてもらいます。

間違いなく2010年代最強だったスーパーレジェンドですが、昨年の痛ましい大クラッシュから復帰以降は、残念ながら以前のような走りが見られていません。

クリテリウム・ドゥ・ドーフィネで大きく遅れた結果、当初出場を予定していたツールのメンバーから外れてしまいましたし、その後のティレーノ~アドリアティコやリエージュ~バストーニュ~リエージュでも復調できていません。

そもそも復帰すら危ぶまれたような大ケガから戻ってきた時点で相当凄い話なんですが、応援する側としてはどうしても往年の「最強のフルーム」と比べてしまい、少し寂しい気持ちになってしまうのも事実です。

 

果たしてその力が少しでも戻って来ているのか、そしてそのフルームをチームがどう扱うのか…。

そして来シーズンからはイスラエル・スタートアップネーションへの移籍が決定していますが、そこでツール5勝目を目指せる兆しとなるような走りを見せられるのか…。

英雄の最終章へ向けての挑戦が始まります。

 

マルク・ソレル(モビスター・チーム)

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ソレルも本来は総合系選手として挙げるべきかもしれませんが、敢えてこちらで挙げます。

2015年に若手の登竜門として名高いツール・ド・ラブニールで総合優勝、そして2018年にはパリ~ニースで総合優勝と、スペイン期待の総合系選手として順調な成長を見せていたソレルですが、昨年からその歩みが少し停滞気味になっています。

昨年のブエルタでは「ナイロ・キンタナをアシスト」というチームオーダー対して反発を露わにしたために、総合9位になりながらも批判の的となってしまい、そして今年のツールではマス、バルベルデとのトリプルエース体制で臨みましたが、全く見せ場が無く総合21位と残念な結果に終わってしまいました。

 

今年から自分より若くて実績も残しているマスがチームに加入した事により、そろそろしっかりとした結果が欲しいところでしょう。

マスと比べて高出力を出せてオールラウンダータイプな脚質なので、上手く棲み分けというか共存できれば、いいコンビにもなれるはずです。

モビスターのマネージメントには不安も残りますが、期待したいと思います。

 

最後に、注目選手というか注目チームとして、チーム・サンウェブを挙げさせてもらいます。

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ツール・ド・フランスでは平均年齢26.5歳という若手中心のメンバーで臨んだにも関わらず、素晴らしいレース運びでステージ3勝という大きな結果を残しました。

そして、なんと今回のブエルタではツールよりもさらに若い、開幕時の平均年齢22.5歳(!)という驚異的な若さのメンバー選考をしてきました。

ティメン・アレンスマン(20歳)、マーク・ドノヴァン(20歳)、マルティン・セルモン(22歳)、イラン・ファンワイルダー(20歳)の4人はまだプロ1年目のネオプロですし、最年長は28歳のヤッシャ・ズッタリンで30台の選手がいないという、異例のメンバー構成です。

ロードレース界では「世代交代」がキーワードの一つとなっている事もあり、驚異のヤングチームの挑戦から目が離せません。

 

レース外の戦い…

スタートリストを眺めていると、過密日程でどのチームもメンバー選考に苦心してる様子が伺えますが、それでも注目すべきポイントは多くあって白熱しそうです!

 

ただし、不安なのはヨーロッパで新型コロナウィルス感染拡大の第2波が来ている雰囲気がある事です…。

ジロではPCR検査で陽性反応が出たために撤退した選手やチームが出てしまいましたし、アムステルゴールドレースやパリ~ルーベは残念ながら中止となってしまいました。

ブエルタも、正直言って開催されるか怪しい気がしますし、もし開幕しても途中で中止になってしまう可能性は相当高いとも思っています。

それでも、開催されたならばしっかりと応援して楽しんでいきたいと思います。