まさかのパリ~ニースと完全日程被り!
ティレニア海からアドリア海へとイタリア半島を横断する、「2つの海を結ぶレース」ことティレーノ~アドレアティコ。
なんと今年は、パリ~ニースと完全に日程が被るという、観る側としては恐ろしい日程になっていますが…。
勿論そんな事とは関係なくこちらにも豪華なメンバーが出場するので、注目選手紹介を行っていきます!
総合系選手
・レムコ・エヴェネプール(クイックステップ・アルファヴィニル)
恐らく、多くの人が「怪童エヴェネプールは、果たしてグランツールの総合エースが務まるのか」という問いに興味を抱いていると思います。
2月初頭のボルタ・ア・ラ・コムニタ・バレンシアナ第3ステージ、登坂距離9.9km・平均勾配7.5%という厳しい山頂フィニッシュのこの日、エヴェネプールは力なく失速してしまい、総合リーダーの座を譲る事となりました。
ただし、この日のレイアウトは未舗装路区間を含むものであり、失速の原因はエヴェネプールの登坂力ではなく主にそちらだったと解釈する事も出来る、エクスキューズが残るような状態だと思います。
今大会の第6ステージは、現状のエヴェネプールの力を推し量るには十分すぎる、素晴らしい難易度の山岳ステージが用意されています。
2度登るカルペーニャ山(登坂距離6.2km・平均勾配9.6%)、果たしてエヴェネプールがどんな走りを見せるのか必見です。
・ヨナス・ヴィンゲゴー(チーム・ユンボ・ヴィスマ)
ほぼ実績のない状態からツール・ド・フランス総合2位という、昨年最大のサプライズをもたらしてくれたヴィンゲゴー。
個人タイムトライアルで上位に入り、山岳でもあのタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)を突き放す瞬間があったりと、どう考えてもフロックではない強さを見せてくれました。
今シーズンも既にドローム・クラッシクで勝利と、調子は上々です。
ユンボの新たなエースの1人として、大いに活躍してくれると期待しています。
・エンリク・マス(モビスター・チーム)
昨年ブエルタ・ア・エスパーニャ総合2位のマスは、スペイン人総合系選手の代表としてより一層の結果が求められています。
同じくモビスター所属の偉大なレジェンドであるアレハンドロ・バルベルデは今シーズン限りでの引退を表明し、その一方でカルロス・ロドリゲス(イネオス・グレナディアーズ)やファン・アユソ(UAEチームエミレーツ)といった若手の突き上げは激しくなってきました。
今シーズンのマスはツールとブエルタへの出場を予定していますが、そこで結果を残して「スペイン人最強」の看板を背負う為には、今大会にも出場するポガチャルやヴィンゲゴーなどと渡り合わなければいけません。
ある意味重要な試金石とも言える今回の走りに注目です。
・ミゲルアンヘル・ロペス(アスタナ・カザクスタン・チーム)
昨年のブエルタ・ア・エスパーニャ第20ステージ、その時点で総合3位だったロペスのリタイア、自らの意志で自転車を降りてのリタイアには本当に驚きました。
チームが総合2位のマスを守るために自分を「捨てた」事への反発だったようですが、当然ながらそのような造反が許される訳はなく、ロペスはシーズン途中で契約を打ち切られてしまいました。
そんなロペスを拾ったのは、古巣であるアスタナ。
問題行動を起こした自分と契約してくれた恩義に報いる為に、自慢の登坂力で暴れ回りましょう!
昨年、ある意味で前述のヴィンゲゴー以上のサプライズだったのが、カルーゾのジロ・デ・イタリア総合2位です。
間違いなく強いけれどもワールドツアー未勝利の地味なアシスト選手が、代役エースとしてジロの総合表彰台に登るとは、恐らく本人も想像していなかったのではないでしょうか。
そしてカルーゾの躍進はジロのみに留まらず、ブエルタでは衝撃の71km独走勝利と、改めてその強さを証明してくれました。
30歳を過ぎて花開いたその才能、生き生きと躍動する姿を目に焼き付けましょう。
上記以外の注目選手としては、改めて復活を目指すティボー・ピノ(グルパマFDJ)、イタリア人エースとしてそろそろ一本立ちしたいジュリオ・チッコーネ(トレック・セガフレード)、昨年ツール総合5位のウィルコ・ケルデルマン(ボーラ・ハンスグローエ)、この辺りが挙げられるでしょうか。
…ポガチャル?
いやもう、改めて注目選手として挙げる必要がそんなにないですよね?
ストラーデ・ビアンケでも50km独走勝利という意味不明な勝ち方をしましたし、また圧倒的な走りを見せて、かなりの確率で2連覇を達成するのではないでしょうか。
スプリンター
平坦ステージでも微妙に癖のあるレイアウトが多い今大会ですが、果たしてどんなタイプのスプリンターが結果を残すでしょうか。
・カレブ・ユアン(ロット・スーダル)
「現役最強のスプリンターは誰か」と問われたら、恐らくユアンの名前を挙げる人が最も多いのではないでしょうか。
その小さな体格を活かした低空スプリントの爆発力は他の追随を許さない上に、ここ数年は登坂力も明らかに向上していて、登りスプリントでも威力を発揮します。
ただ、昨年は肝心のツールで落車により早期リタイアと、不完全燃焼な部分もありました。
改めて最強の証明に向けて、圧倒的な勝ち方を見せて欲しいです。
・マイケル・マシューズ(チーム・バイクエクスチェンジ・ジェイコ)
「登れるスプリンター」の代表格であるマシューズですが、昨年はまさかの0勝に終わってしまいました。
その影響か、チームはピュアスプリンターのディラン・フルーネウェーヘンを獲得と、マシューズにとっては向かい風とも言える補強をしました。
ただ、マシューズの「登れる」という個性は、上手くフルーネウェーヘンとの棲み分けが出来るようにも思えます。
今大会は前述のように少し癖のあるレイアウトのステージがあるので、そういったマシューズ向きのステージでの勝利が期待できそうです。
・アルノー・デマール(グルパマFDJ)
一昨年のジロでステージ4勝と爆発したデマールですが、昨年はワールドツアーで0勝と、不完全燃焼気味でした。
今シーズンも、UAEツアーで3回あった集団スプリントで6位、5位、7位と、上位には入りつつ勝ち切れていません。
デマールは今シーズン、一昨年と同様にジロへの出場を予定しています。
そこで再浮上のきっかけを掴むためにも、前哨戦とも言える今大会でしっかり結果を残したいところです。
・オラフ・コーイ(チーム・ユンボ・ヴィスマ)
昨シーズン途中にデヴェロップメント・チームから昇格したコーイですが、まだ20歳ながら早くも覚醒の兆しを見せています。
まず昨シーズンも、ツール・ド・ポローニュでステージ2位、クロ・レースでステージ2勝、グラン・ピエモンテで3位と、かなりの結果でした。
そして今シーズン、UAEツアーの3度のスプリントでは全てトップ10に入り、特に第5ステージでは進路を塞がれて大回りを余儀なくされながらもステージ2位と、その才能の大きさを見せてくれました。
今大会で早くもワールドツアー初勝利を挙げても何ら不思議ではないと思います。
・ジャコモ・ニッツォーロ(イスラエル・プレミアテック)
2020年に「万年2位止まり」の長いトンネルを抜けたニッツォーロですが、今シーズンはまだ勝ち星がありません。
それでも、出場した4つのワンデーレースで全てトップ10以内でフィニッシュと、その走りは相変わらず安定しています。
今大会はダリル・インピーにリック・ツァベルと、なかなか頼りになるアシストを引き連れての参戦です。
乱戦の中で勝機を掴むその独特の勝負勘で、今シーズン初勝利を挙げられる可能性は充分にあるでしょう。
その他の有力なスプリンターとしては、同時開催のパリ~ニースに出場するファビオ・ヤコブセンとエースの座を争っているマーク・カヴェンディッシュ(クイックステップ・アルファヴィニル)、不振からの脱却を目指したいパスカル・アッカーマン(UAEチームエミレーツ)、チームに今シーズン初勝利を届けたいアルベルト・ダイネーゼ(チームDSM)、この辺りが挙げられるでしょうか。
その他注目選手
最後に、総合系・スプリンター以外の注目選手も紹介していきます。
・ジュリアン・アラフィリップ(クイックステップ・アルファヴィニル)
もしかしたら総合系で挙げるべきなのかもしれませんが、個人的にはステージを狙ってアタックを仕掛けるアラフィリップが好きなのでここで紹介します。
今シーズンのアラフィリップは、ツール・ド・ラ・プロヴァンスで総合2位になりながらも、まだ本調子では無いようにも見えます。
直近のストラーデ・ビアンケでも、落車に巻き込まれた影響もあって勝負に絡む事は出来ませんでした。
それでも、調子に関係なくその自慢のアタック力で勝つときは美しく勝ってしまうのがアラフィリップの凄いところです。
美しく、鮮やかで、そして情熱的な世界王者の走りを楽しみにしたいと思います。
・マグナス・コルト(EFエデュケーション・イージーポスト)
昨年のブエルタでステージ3勝と大暴れしたコルトも、スプリンターのカテゴリーにするか少し迷いましたが、その万能性は完全にスプリンターの枠を飛び越えていると言っていいでしょう。
スプリント力、一定以上の登坂力、逃げる独走力と、厳しい山岳ステージ以外なら何でも勝利が狙えます。
今シーズンも既に1勝と、調子も良いようです。
どのステージでどんな勝ち方を狙ってくるか、是非注目しましょう。
・ロレンツォ・フォルトゥナート(エオロ・コメタ)
昨年のジロ第14ステージ、名峰ゾンコランを制したフォルトゥナートの強みは、当然ながら登坂力です。
プロチーム所属のフォルトゥナートによるゾンコラン勝利はかなりのサプライズでしたが、その後1クラスのステージレースでも山頂フィニッシュを制して総合優勝と、その力はフロックではありません。
今シーズンも、ブエルタ・ア・アンダルシアの山頂フィニッシュステージでステージ2位と、その力を見せています。
大会をスポンサードするエオロの選手として、是非目立ってほしいところです。
・マーク・パデュン(EFエデュケーション・イージーポスト)
昨年、クリテリウム・ドゥ・ドーフィネの山岳ステージ2連勝と、一気に飛躍したウクライナの新鋭パデュン。
今シーズン唯一出場したグラン・カミーノでは、個人タイムトライアルで勝利してオールラウンダー的な資質を見せてくれています。
レース後、「信じられないほど嬉しい結果だが、母国の状況を考えると無邪気に喜ぶことはできない。この勝利をウクライナ市民に捧げ、自転車選手という立場から彼らを励ましたい」と語ったパデュン。
是非、これからも頑張って欲しいと願っています。
寝不足を受け入れる準備は出来ていますか?
前述の通り、今回のティレーノ~アドレアティコはパリ~ニースとまさかの完全重複日程となっています。
仕事と折り合いを付けながら可能な限りリアルタイム視聴しつつ、空いた時間で感想記事を書くとなると…、正直言ってかなりキツイですよねぇ(涙)
ティレーノ~アドレアティコとパリ~ニースが3/13に終了してから、ミラノ~サンレモが開催される3/19までが若干の空白期間なので、その間に何とか記事を書きたいと思っています。
まだまだ序盤のロードレースシーズン、皆さんも自分に合ったペースで無理せずに楽しんでいきましょう!