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【レース感想】ロンド・ファン・フラーンデレン 2020

宿命のライバル

パリ~ルーベと並ぶフランドルクラシックの頂点、「クラシックの王」ことロンド・ファン・フラーンデレン

今年はコロナウィルス感染拡大による変則日程とパリ~ルーベ中止のために、シーズン最後のモニュメントとしての登場!

 

注目選手としては

  • 最早説明不要の異次元の男、ワウト・ファンアールト
  • こちらも規格外の「怪物」、マチュー・ファンデルプール
  • 昨年の覇者、アルベルト・ベッティオール
  • 一昨年2位、昨年世界王者、今シーズン好調のマッズ・ピーダスン
  • 石畳適正や如何に、ロンド初参戦となる新世界王者ジュリアン・アラフィリップ

こんな選手が挙げられる中、自分の予想がこちら。

2大本命のファンアールトとファンデルプール、そして昨年の覇者ベッティオールを挙げるという、手堅すぎる予想。

シクロクロスコンビは地力が違いすぎるのと、EFプロサイクリングはベッティオール以外にもセップ・ファンマルクなどかなりいいメンバーがいると判断してのチョイス。

大穴のミハウ・クフィアトコフスキー?

そろそろ彼に、またワンデーのビッグタイトルを獲って欲しいというただの願望…。

そしてワンデー最強のドゥクーニンク・クイックステップ(※)は、アラフィリップは石畳に向いていないと考えて、敢えて誰も挙げないという選択に。

(※ドゥクーニンク・クイックステップはこのレース限定でチーム名をエレガント・クイックステップに変更していますが、この記事内ではドゥクーニンクと表記します。略して「エレガント」では何のことかさっぱり分からないので…)

 

ジロ・デ・イタリア第15ステージも同日開催というスケジュールの中、レースはスタート!

スタートから20km地点辺りで6人の逃げが形成され、序盤は平坦基調という事もあり、とりあえず落ち着いた展開に。

 

今年は残り100km地点で予定されていた「名所」、教会へと石畳を駆け上がる激坂カペルミュールがカットされたのは少し寂しい…。

普通に考えれば、今年も勝負所は2度目のオウデクワレモント、クルイスベルグ、3度目のオウデクワレモント、2度目のパテルベルグ辺りになるんだろうか。

そんな事を考えながら「まあまだ序盤だし」とまったり観戦していると、なんだかメカトラブルや落車が頻繁に発生している。

例年と違うスケジュールで、選手たちも調整や石畳への適応が上手くいっていないのだろうか…。

ファンアールトやファンマルクという重要な選手も落車していたけれども、とりあえず大きなダメージは無い様子で復帰していて一安心。

 

メイン集団から少し先行していたエドワルド・ボアッソンハーゲンが吸収された辺りから、メイン集団の位置取りがかなり活性化し始めて、いよいよレースが本格的に動き始める。

残り約70km地点、カナリーベルグの登坂でクフィアトコフスキーが飛び出すと、これは見逃すまいとドゥクーニンクのゼネク・スティバルがしっかりチェックに入る。

そのままハイペースで2度目のオウデクワレモントに突入したけれども、メイン集団は睨み合って動きのないままオウデクワレモントを通過、そのまま1度目のパテルベルグも登り切り、残り50km辺りで逃げは完全に吸収される。

 

 

もう残り少なくなった勝負所に向けてここから更に動くが激しくなり、ディラン・ファンバーレ、アラフィリップ、ドリス・デヴェナインス、オリバー・ナーセン、ロマン・バルデなどが断続的に動いて抜け出そうと試みて、最終的にアラフィリップの動きがきっかけとなり新たな先頭集団を形成。

結果的に、アラフィリップ、ファンアールト、ファンデルプール、ベッティオール、ファンマルク、ピーダスン、クフィアトコフスキー、ナーセンなどの有力選手が集まった20人強の先頭集団に。

っていうか、アラフィリップが石畳でも普通に強いぞ…!!

正直、これは少し予想外だった…。

確かにバイクコントロールの上手さには定評があるし、激坂適正は世界屈指だけれども、173cm・62kgという小柄な体格では石畳は厳しいと思っていた…。

ドゥクーニンクも伊達や酔狂でメンバーに選んではいなかった訳だ。

 

石畳の下り坂に入るとアラフィリップがまた積極的に動き、優勝候補がひしめき合う先頭集団から抜け出す事に成功!

すぐさまファンデルプールがブリッジして追いつき、更に遅れてファンアールトも合流に成功。

こうしてアラフィリップ、ファンデルプール、ファンアールトという超豪華な先頭集団が形成。

追走集団も追いつこうともがいているが、ドゥクーニンク勢がローテーションを阻害してなかなかペースが上がらずに、じわじわと離されていく。

 

レースも残すところ35km、最高に面白いメンバーでの勝負になりそうで、見ている側のテンションも最高潮へ!

しかし、そんなタイミングで突如として画面に映し出されたのは…

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えっ!?アラフィリップが落車!?

そして立ち上がれない…!?

苦悶の表情を浮かべ、大きな呻き声を上げながら、立ち上がる事が出来ないアラフィリップ…。

落車の瞬間がオンタイムで流れなかったので原因が分からない中、リプレイ映像で流れてきたのは…

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オフィシャルモトと接触して激しく地面に叩きつけられる、衝撃的な落車の瞬間だった…。

後方に下がろうと道路の端で減速していたモト、そのモトのスリップストリームをギリギリまで利用してから横に避けたファンアールトとファンデルプール、そして無線(サイコン?)を触っていて一瞬だけ前方を見ていなかったアラフィリップ。

色々な要素が悪い具合に重なったために起こってしまった、なんという不運…。

結局アラフィリップは右手の中手骨(手のひらの骨)を骨折し、もちろんリタイア。

正直に言って、その程度で済んだのが幸運だと言えるぐらい、激しくて危ない落車だったと思う。

恐らく偶然ながら、上手く横向きに回転して衝撃を吸収できているように見えるけれども、これがもし衝撃が逃げない形で地面へ向かっていたら…。

不幸中の幸いと言っていいのか分からないけれども、シーズン最終盤だったので、元々アラフィリップはこのレースでシーズン終了の予定だった模様。

手の骨折なら来シーズンへの影響は無いだろうから、まずはゆっくり休んで、また来シーズン元気な姿を見せてくれ!

 

ショッキングな事故は発生したけれども、もちろんレースは継続。

先頭はシクロクロス出身の怪物コンビ、ファンアールトとファンデルプール。

追走集団は人数が多すぎるのが災いしてペースが上がらない。

ナーセンが単独で飛び出してのブリッジを試みるも、強烈な独走力を持つ2人がしっかりと先頭交代しながら逃げているので届く気配はなく、勝負権は先頭の2人に絞られる形に。

ジュニア時代からの10年来のライバルで、共にシクロクロス世界王者に輝く事3回という実績を引っ提げ、ロードレース界に殴り込んできた異次元の怪物。

誰もが「ロードレースではどちらが強いのだろう」と想像しながらも、なかなか実現しなかった純粋な1対1のマッチアップが実現する事に。

 

果たしてどちらがどこで仕掛けるのかと誰もが固唾をのみながら見守る中、通常なら最後の勝負所である3度目のオウデクワレモントと2度目のパテルベルグで、なんとどちらも仕掛けない。

これでもう、大きく差を付けるような激坂や石畳は存在しない…つまり、フィニッシュ地点でのマッチスプリント勝負に…!

後方の集団との差は充分、誰の邪魔も入らない。

永遠のライバル2人による純粋な力比べという、なんという出来すぎな展開だろうか!

 

ヒリヒリとした緊張感が続く中、あっという間に残り1kmまでやってきた…。

先頭はファンデルプール、ファンアールトは前に出たがらない。

まるでパリ~ルーベの競技場勝負のような牽制が続き…残り200mで先に加速を始めたのは前方のファンデルプール!

もちろんファンアールトも瞬時に反応!

横に並び、じわじわと差を詰める!

かなり際どい状態のままフィニッシュライン、両者ハンドルを投げる!!

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写真判定の結果…

歴史に残る激闘を制したのは…ファンデルプール!!

今シーズン、ロードの成績ではファンアールトに後れを取っていたけれども、最後の最後にモニュメントというビッグタイトルを獲得!!

最強の2人による最高の勝負、本当に素晴らしかった!!

 

しかし、今シーズン最初のモニュメントであるミラノ~サンレモはファンアールトが勝利、そして最後のモニュメントのロンド・ファン・フラーンデレンはファンデルプールが勝利とは…。

この2人、なんと面白いライバル関係なのだろうか。

来シーズン以降も、伝説として後世に語り継がれていくような名勝負を繰り広げてくれるかもしれないと思うと、ワクワクしてくるなぁ…!

 

後方の3位争いは小集団スプリントになり、アレクサンダー・クリストフが勝利。

クリストフは追走集団の先頭を取るのが本当に上手く、これで2年連続の3位入賞。

 

アラフィリップを失ったクイックステップはイヴ・ランパールトの5位が最高位。

途中までは理想的な展開に持ち込めていただけに、エースのリタイアは痛恨すぎた…。

 

単独で抜け出していたナーセンは、惜しくも残り500m程で吸収されてしまい、最後は7着に。

1日を通してかなり積極的に動いたものの、残念ながら結果には繋がらなかった。

 

優勝候補であるベッティオールとファンマルクの2人が残っていたはずのEFは、トップ10にも入れずにそれぞれ16位・17位と、意外過ぎる結果に…。

 

今シーズンは、このロンド・ファン・フラーンデレンがワールドツアー最後のワンデーレースで、残すワールドツアーはグランツールジロ・デ・イタリアブエルタ・ア・エスパーニャのみ。

ジロではコロナウィルス陽性反応によって撤退したチーム・選手もいるような状況で、正直言って最後までやれるのか怪しい気はするし、ブエルタも相当難しい状況での開催になるだろうけれども…。

それでも、やるからにはしっかり楽しんで、応援していくよ~!!

それでは、また!

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