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【レース感想】ジロ・デ・イタリア2020 第2週目

PCR検査を超えて…

1週目を終えての休息日、コロナウィルスのPCR検査で陽性反応が出たチームや選手(ミッチェルトン・スコット、チーム・ユンボ・ヴィスマ、チーム・サンウェブのマイケル・マシューズ)がリタイアとなったものの、ジロ・デ・イタリアはそのままレース続行!

 

1週目を終えての各賞リーダーは以下の通り。

総合:ホアン・アルメイダ(ドゥクーニンク・クイックステップ

ポイント賞:アルノー・デマール(グルパマFDJ)

山岳賞:ルーベン・ゲレイロ(EFプロサイクリング)

新人賞:ジョアン・アルメイダ(ドゥクーニンク・クイックステップ

アルメイダがどこまで総合首位の座を守るのか、ポイント賞争いはデマールがこのまま独走するのか。

本命不在の白熱した中盤戦、スタート!

 

第10ステージ

終盤にアルデンヌ風味な急勾配のアップダウンが出現する第10ステージ。

スプリンターには厳しそうなこのステージで、ポイント賞2位のペテル・サガンがフィリッポ・ガンナと共に逃げを打ってきた!

サガンは最大限に警戒されているであろう中、この強力な選手による抜け出しが成功し、追走も追いついて10人の逃げを形成。

もちろんポイント賞トップのデマールを抱えるグルパマは、この逃げを中間ポイントの手前で捕まえるためにチーム全体でメイン集団の牽引を開始!

しかし、逃げ集団も世界一の独走力を持つガンナが存在感を発揮して3人の脱落者が出るほどのペースで逃げ続けると、コースの中間地点ほどの位置で遂にグルパマは吸収を断念。

サガンは中間ポイントをトップ通過してデマールとの差をしっかり縮める事に成功!

この辺りの嗅覚と勝負強さは流石の一言。

 

残り50kmを切りアップダウン区間に入ると、逃げ集団はステージ勝利に向けた争いを開始して、人数が少しづつ減っていくサバイバルな展開に。

そしててっきり逃げ切り濃厚かと思っていたら、NTTプロサイクリングがメイン集団を猛牽引するとタイム差は一気に1分を切ってきて、集団が追いつく可能性も生まれてきた。

残り22km地点でメイン集団からペリョ・ビルバオが単独で抜け出し、総合勢からタイム差を稼ぐ動きというか、あわよくば先頭に追い付きたいような動きを見せるも、結局先頭には追いつけずに残り5km地点でメイン集団に吸収される。

 

勝負を決めた動きは残り11km地点、サガンとベン・スィフトの2名に絞られていた先頭集団から、サガンが抜け出して独走を開始!!

メイン集団からはブランドン・マクナルティが単独での追走を試みるも、サガンはそのまま独走を続けフィニッシュ地点へ!!

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雨上がりのアドリア海沿い、アルカンシェルを3年間も身に纏っていた男が虹を背にフィニッシュ!!

貫禄の走りでジロ初勝利を掴んだサガンは、ポイント賞争いでもデマールに20pt差まで接近!

やはりこの男、只者ではない。

 

単独で追走を仕掛けたマクナルティがステージ2位、そしてステージ3位となるメイン集団の先頭争いはアルメイダが勝利して、ボーナスタイムを稼ぐことに成功!

小集団スプリントを制する逞しすぎる22歳、果たしてその快進撃はどこまで続くのか。

 

第11ステージ

難易度1つ星で間違いなく集団スプリントになるであろう第11ステージ。

5人の逃げ集団はあまり大きくは逃がしてもらえず、タイム差は最大で3分ぐらい。

 

メイン集団の中間ポイント争いはもちろんサガンが狙いに行くも、意外にもデマールが先着してリードを広げる形に。

マチェイ・ボドナルにリードアウトしてもらいながらデマールに刺されるとは…、サガンの調子がイマイチなのか、デマールが絶好調すぎるのか…。

 

逃げは人数を減らしながら意外と粘るも、残り6km程で最後の1人となっていたサンデル・アルメを吸収し、フィニッシュに向けてコーナーの多い市街地へと突入。

残り5km辺りではUAEチームエミレーツイスラエル・スタートアップネーションがコントロールしようとするも、細かく繰り返されるコーナーの連続にどのチームもイマイチ上手く主導権を握れない。

そんな中、今大会最強のスプリントチームであるグルパマのトレインがしっかり位置を上げてきて、残り1kmを過ぎての折り返しコーナーを抜けると「アシスト2枚の後ろにデマール」という最高の形で集団の先頭に。

そしてそのまま完璧な流れから残り200mでデマールが発射!

後ろにはフェルナンド・ガビリアやサガンが付いているも、ライバルを寄せ付けずにそのままトップでフィニッシュ!

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デマールはこれで今大会4勝目と、まさに手が付けられない状態!!

ここまでスプリントステージ全勝、そして残るスプリンステージは第20ステージのみ。

デマール、スプリントステージ完全制覇なるか。

 

2着のサガンの走りも決して悪くなく、デマールの番手につけていたガビリアの伸びがイマイチと判断すると、即座に進路変更してデマールの背中に飛び乗った辺りはサガンらしさ全開だったと思うけれども…。

ポイント賞争いは36pt差まで広がってしまった。

絶好調のデマールが大きく取りこぼす事は考えにくいような現状に対して、サガンとボーラに打つ手はあるのか…。

 

第12ステージ

9つもの峠(その内カテゴリー山岳が5つ)が登場し、常にアップダウンを繰り返す厳しいレイアウトの第12ステージ。

冷たい雨が降り山間部の気温は10℃以下という過酷な環境の中、14人の逃げが容認されて、一時はそのタイム差は10分以上に。

 

メイン集団では、1つ目の3級山岳からNTTプロサイクリングが積極的な牽引を行い、残り50km地点で集団の人数は僅か20人ほどにまで絞られる。

アシストを使い切ったNTTのドメニコ・ポッツォヴィーヴォが最後の4級山岳で単独のアタックを仕掛けるもこれは封じ込まれ、結局総合勢ではあまり大きな動きはない展開に。

 

一方の逃げ集団では、3つ目の三級山岳の下りでジョナタン・ナルバエスとマーク・パデュンが抜け出すことに成功して、2人での先行を開始。

追走との差も2分以上開いて2人での逃げ切り濃厚となった矢先、なんと残り24km地点でパデュンがパンクによってストップするトラブルに見舞われてしまう。

再スタートするも、ナルバエスとの差は30秒も開いてしまう厳しい状況に…。

昨年のウクライナ個人TT覇者のパデュンはさすがの独走力を見せて、一旦はその差を15秒ほどまで縮めるも、残り10kmを過ぎると逆にその差を広げられてしまい万事休す。

ナルバエスはそのまま快走を続け、フィニッシュ地点ではレインウェアのジッパーを開けてスポンサーロゴをアピールする余裕を見せてのフィニッシュ!!

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ナルバエスは嬉しいワールドツアー初勝利!

そして、イネオス・グレナディアーズはこれで今大会3勝となり、第1週目でエースを失いながらもしっかり結果を残すしたたかさを披露!

普段はアシスト業に力を使っている精鋭陣がステージを狙いにくると、やはりこうなるのか…。

 

第13ステージ

中盤までは平坦ながら、終盤にある2つの丘が登れる選手のみに絞り込みを掛けそうな第13ステージ。

まるで「ミラノ~サンレモ」のようなレイアウトだけれども…、2つの丘の傾斜は明らかに今回のステージの方が厳しく、スプリンターが生き残るのは難しそう…。

 

7人の逃げ集団はあまり大きなタイム差は許されず、大体2分半ぐらいで泳がされる展開。

そのまま大きな動きはなくレースは進み、残り30km程に位置する1つ目の4級山岳に突入すると、この日もボーラが牽引を開始してデマールらスプリンターのふるい落としを図る。

ボーラの目論み通りデマールなどのスプリンターが遅れ始める…、というかこの丘、本当に4級で合っているのかと問いたくなる厳しさ…。

登坂距離4.3km、平均勾配7.8%、そして最大勾配が20%(!?)って、相当厳しくない?

 

50秒ほど遅れたデマールたちもダウンヒルで必死にタイム差を縮め、なんとか次の4級山岳までには集団に復帰。

しかし、最後の山岳ではもちろん再度のペースアップが掛かり、デマールはまたもや遅れてしまう…。

というか、UAEの高速牽引が強力すぎてサガンまで遅れ始めている…!?

最後まで粘っていた逃げも吸収して、この厳しいペーシングについていけた精鋭20名ほどで山頂を通過。

サガンを含む追走集団は15秒遅れで山頂を通過し、なんとか先頭への合流を試みるもその差は縮まらず、フィニッシュは先頭集団(メイン集団)による小集団スプリントに。

 

ドゥクーニンクが先頭でペースを作り最終コーナーを通過。

ここまで登りの牽引などで積極的にレースを動かしたUAEが、マクナルティのリードアウトから好調のディエゴ・ウリッシを発射!

ほぼ同タイミングでマリア・ローザ着用のジョアン・アルメイダがミッケルフレーリク・ホノレのアシストを受けてスプリントを開始!

そして後方からはサガンを失ったボーラのパトリック・コンラッドが猛追!

際どい横一線のハンドル投げ争い!!

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三つ巴のスプリント、勝者はウリッシ!!

ウリッシは今シーズン2勝目、そしてジロ通算8勝目!

第2ステージに続き、登坂でスプリンターをふるい落としてパンチャーのウリッシが小集団スプリントを制するという、チームで掴み取った見事な勝利おめでとう!

 

そしてアルメイダはまたしても上位に入り、しっかりとボーナスタイムを稼ぐことに成功!

いや、若いのに本当に凄いな、この選手。

 

そしてサガンが後方に下がり勝負権を失う中、3位に入ったコンラッドも惜しかったけれどもいい走り。

チームとしての意地みたいなものが垣間見えて熱い展開だった。

 

第14ステージ

急勾配の4級山岳など、少しアップダウンのある個人タイムトライアルの第14ステージ。

 

圧巻の走りを見せたのは、イネオスの個人TT新旧世界王者コンビ。

まずは2018・2019世界選手権連覇のローハン・デニスが全ての中間計測地点で1位となる流石の走りを見せ、暫定1位に。

第1ステージでは風の影響で思うような走りができなかっただけに、しっかりとここで面目躍如といったところか。

 

そしてデニスの少し後にスタートした現世界王者フィリッポ・ガンナ。

第1ステージの個人TTでもぶっちぎりで1位だったガンナは、この日も別次元の走りを披露。

全ての中間計測でトップだったデニスのタイムを更に上回り、そのままフィニッシュ地点でも26秒差をつけて見事にステージ勝利!!

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まさに「トップガンナ」、圧倒的すぎる走り!!

デニスも3位のマクナルティに43秒差も付けるタイムだから、普通にいい走りの筈なのに、これはガンナが強すぎるでしょ…。

しばらくの間は個人TTでは無双しそうな雰囲気。

第21ステージの個人TTも制して「完全勝利」なるか。

 

総合勢では、マクナルティがステージ3位に入り一気に総合4位までジャンプアップ。

マリア・ローザのアルメイダもステージ6位の好走でしっかりとリードをキープ。

他にはウィルコ・ケルデルマンやテイオ・ゲーガンハートなどが良いタイムを刻む事に成功。

一方、総合上位陣で順位を落としたのはポッツォヴィーヴォ、コンラッド、ジェイ・ヒンドレー、ヤコブ・フルサン辺り。

特に、フルサンは総合トップ10から脱落と、かなり厳しい展開に…。

 

第15ステージ

3つの2級山岳を超え、最後は1級山岳へとフィニッシュする第15ステージ。

リボルト空軍基地での記念撮影を終えてからのレーススタート!

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この日の逃げは、独走力に定評のあるトーマス・デヘントやデニス、そして山岳ポイント狙いのジョヴァンニ・ヴィスコンティなどを含む12名。

ヴィスコンティはしっかりと2つの2級山岳を先頭通過して、山岳賞のトップに躍り出る事に成功!

そして3つ目の2級山岳ではデニスが単独で抜け出し、TTスペシャリストらしく淡々とペースを刻んでいく。

 

メイン集団をコントロールしたのは総合2位のケルデルマンを擁するチーム・サンウェブ。

独走を続けるデニスとの差がしっかりと縮まるようなハイペースで刻み、他チームへ着実にダメージを与えていく。

最後の1級山岳に入ると残り9.5km辺りで先頭のデニスも吸収し、そのままサンウェブはヒンドレーが牽引を続行。

 

そしてここから、このヒンドレーのペースについていけない選手が続出。

ペッリョ・ビルバオ、フルサン、ニバリ、コンラッドなど、有力選手がポロポロと零れ落ちていくサバイバルな展開に。

そして総合首位アルメイダの護衛役であるファウスト・マスナダが遅れると、直後にアルメイダも遂についていけなくなってしまう…!

これで先頭はヒンドレー、ケルデルマン、ゲイガンハートの3人に絞られる。

 

遅れ始めたアルメイダ、その若さを振りまく快進撃もここまでかと思っていたら、ここから意外といってもいいほどの粘りを披露。

しっかりと自分のペースで登り続け、大きく離されることはなく食らいついていく!

若い選手が崩れる時って、もっと大きく遅れるような印象があっただけに、正直これは結構驚いた…。

なんとかマリア・ローザをキープするため、そのまま30秒ほどの遅れで踏みとどまる!

 

先頭の3人はそのまま順調に走り続け、残り1kmを通過。

フィニッシュ直前の勾配が緩む区間に入ると、ゲイガンハートがアタック!

これにサンウェブの2人は付いていけず、ゲイガンハートがトップでフィニッシュ!!

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ゲイガンハートは嬉しいグランツール初勝利!!

そして一気に総合13位から総合4位へジャンプアップに成功!!

イネオスはこれでステージ5勝目、更には一度は諦めたであろう総合表彰台も視野に戻ってくるという最高の結果に!

 

そしてケルデルマンは2秒遅れ、ヒンドレーは4秒遅れ、アルメイダは37秒遅れでフィニッシュ。

マリア・ローザはアルメイダがなんとか死守するも、総合2位のケルデルマンとの差は僅か15秒、そしてサンウェブはヒンドレーも総合3位にジャンプアップを果たし、最早や形成は逆転と言っていいのかも…?

 

本命不在で混沌としてきた総合争いは、まだまだ行方の分からないまま3週目へと突入していく…。