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【レース感想】ジロ・デ・イタリア2020 第3週目

待っていたのは、史上最も際どい接戦

2週目を終えての休息日、先週に引き続きこの日もPCR検査が行われ、UAEチームエミレーツのフェルナンド・ガビリアに陽性判定が出てしまい、リタイアが決定。

なんだか、コロナが原因でレースを去っているのがエース級の選手ばかりなのが残念だけれども…、今回はチームとしての撤退は無く3週目に突入!

 

1週目を終えての各賞リーダーは以下の通り。

総合:ホアン・アルメイダ(ドゥクーニンク・クイックステップ

ポイント賞:アルノー・デマール(グルパマFDJ)

山岳賞:ジョヴァンニ・ヴィスコンティ(ヴィーニザブKTM

新人賞:ホアン・アルメイダ(ドゥクーニンク・クイックステップ

1週目と変動があったのは山岳賞のみ。

ただ、総合リーダーのアルメイダと2位のウィルコ・ケルデルマン(チーム・サンウェブ)との差は僅か15秒にまで縮まっている状況で、3週目は厳しい山岳ステージが控えている。

アルメイダが若さと勢いで突っ走るのか、それとも3位にジェイ・ヒンドレーも控えていて好調なサンウェブがチーム力を発揮するのか、はたまた他のチームが大逆転を見せてくれるのか。

美しくも過酷なジロ・デ・イタリア、終盤戦がスタート!

 

第16ステージ

終盤の周回コースで最大斜度20%を超える激坂を有する3級山岳が3度登場する、パンチャー向けな第16ステージ。

 

逃げ向きのコースという事で複数の選手を逃げに送り込んだチームも多く(AG2Rは4人も逃げに乗ってきた!)、形成された逃げ集団の人数は何と28人。

そしてもちろん、山岳賞争いをしているヴィスコンティとルーベン・ゲレイロの2名も逃げ集団に入り、激しい山岳ポイント獲得合戦を繰り広げる事に。

最初の2級山岳はスプリントの末にゲレイロがトップ通過するも、次の3級山岳はヴィスコンティが先着。

そして124km地点の2つ目の3級山岳では、ゲレイロがメカトラブルに見舞われてしまいヴィスコンティが難なくポイントを獲得する事に成功し、これでヴィスコンティのステージ終了時点での山岳賞キープが確定。

 

逃げ集団はメイン集団とのタイム差を最大で12分以上まで広げて、この日のステージ勝利は逃げの28人で争われることに。

周回コースに突入すると、1度目の3級山岳を目掛けてゲレイロがアタックして先頭通過に成功して、ヴィスコンティとの差を縮めるだけではなく、そのまま踏み続けて独走を試みる。

これが口火となりステージ勝利を目指したアタック合戦となり、ゲレイロは吸収。

その流れで前に出たのはヤン・トラトニックとマヌエル・ボアーロの2人。

そして、2度目の3級山岳でトラトニックが単独で抜け出し、フィニッシュまで残り40kmという距離を残す状況で独走を開始!

引き離されたボアーロを含む6人の追走集団が追いかけるも、その差は30~40秒ほどからなかなか縮まらない。

しかし、流石に最終周回に入るとトラトニックのペースも落ちたのか、単独でブリッジを試みたベン・オコーナーが合流に成功して先頭は2人に。

 

この時点で追走グループとのタイム差は1分にまで広がり、ステージ勝利はトラトニックとオコーナーの2人に絞られる形に。

独走していたトラトニックに、1人で追走したオコーナーと、両名共に脚を消耗している中、フィニッシュまで残り1kmを切ってからの激坂で先に仕掛けたのはオコーナー!

しかしトラトニックはしかっり食らいついて、逆にカウンターアタックを仕掛けて突き放す!!

トラトニックは勾配が緩んでもそのまま力強く踏み続け、単独でフィニッシュ!!

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この日のステージは彼の出身国スロベニアに近く、家族や多くの友人が応援する中、2年前まではプロコンチネンタルチーム(現行のプロチーム)所属だった遅咲きの30歳が歓喜グランツール初勝利!

トラトニック「ずっと逃げ続けていたので限界だったけれど、残り500mで応援してくれるガールフレンドの姿を見て力が湧いたんだ。フィニッシュまで駆け抜けたよ」

(※出典:28名の大逃げ決まる トラトニクがグランツール初勝利、アルメイダは2秒を取り戻す - ジロ・デ・イタリア2020第16ステージ | cyclowired

 

一方、メイン集団は13分ほど遅れてフィニッシュ地点へ。

アルメイダは最後の激坂でこの日も自ら仕掛けて後続を引きちぎり、2秒のリードを獲得する事に成功!

第15ステージではタイムを失いケルデルマンが背後まで迫っているけれども、この若者は最後まで抵抗を続けている…!

 

第17ステージ

1級山岳が3つあり獲得標高も5300mと、かなりハードな第17ステージ。

 

19人の逃げ集団は最大で8分ほどのタイム差を容認される。

前日以上に山岳ポイントを稼げるこのステージで、山岳ポイント2位のゲレイロが逃げに乗る事に成功。

目論み通り大量の山岳ポイントを収集し、ヴィスコンティを逆転して山岳賞争いのトップに躍り出た!

 

逃げ集団内に人数を揃えたモビスター・チームによるふるい落としなどもあり、逃げ集団は少しずつ人数を減らしていき、最後の1級山岳突入時点で人数は15人、メインとのタイム差は6分ほどに。

緩くて長い登坂でトーマス・デヘント、ローハン・デニス、イルヌール・ザカリン辺りの実力者がペースを上げて、更にじわじわと人数が減っていく。

そんな中、残り8.3km地点で前日も逃げに乗っていたオコーナーがアタック!

このアタックに誰も反応できず、オコーナーは単独での抜け出しに成功!

そしてそのまま力強く独走を続け、タイム差広げていく!

最終的に30秒まで差は広がり、最後は余裕をもってフィニッシュ!!

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連日の積極的な逃げが実り、嬉しいグランツール初勝利!!

前日の惜しいステージ2位に続き見事なリザルトを残したオコーナー。

チームは新規スポンサーが未だ見つからず、オコーナーもこの時点では来季の契約が決まっていない厳しい状況だったけれども、この勝利の3日後、AG2Rとの来季契約が決定!

チームにとっても本人にとっても本当に大きな1勝に!

来季も頑張れ!!

 

一方メイン集団は、サンウェブが人数をかけてライバルへの攻撃を試みるも、マリア・ローザのアルメイダ自らがチェックするなどして、トップ10は崩れることなく纏まったままフィニッシュ地点へ。

総合争いは翌日以降に持ち越しに。

 

第18ステージ

超級ステルヴィオ峠という今大会最高峰がそびえ立ち、フィニッシュ地点も1級山岳の第18ステージ。

第20ステージがレイアウト変更で難易度が下がったため、この第18ステージが今大会の最難関の「クイーンステージ」に。

 

昨日までゲレイロと山岳賞争いを繰り広げていたヴィスコンティDNSとなる波乱もある中、レースはスタート。

ライバルはいなくなったもののゲレイロは積極的な走りを見せ、逃げ集団はゲレイロ、デヘント、オコーナーといった最早お馴染みのメンバーを含む15人に。

 

しかし、この日は総合争いのためにメイン集団のペースも速く、ステルヴィオ峠の入り口でのタイム差は約3分のみ。

そして、メイン集団を牽引するサンウェブは、ライバルを苦しめる為に更にスピードを上げていく!

ニコ・デンツ、チャド・ハガ、マーティン・トゥスフェルト、サム・オーメン、クリス・ハミルトンと、まさにチーム一丸となっての強烈なペースアップ!

このサンウェブの猛攻撃に、マリア・ローザのアルメイダが脱落していく…!

遂にアルメイダの快進撃もここまでか…。

総合狙い一本鎗ではないチーム構成の中、そしてまだまだ経験の少ない22歳という若さで、ここまで本当に良く頑張った…!

…なんて思っているのも束の間、先頭を牽いているのはイネオス・グレナディアーズのデニス。

そしてこのデニスのペースが、とんでもなく速い。

個人TT前世界王者の鬼牽きについていけたのは、チームメイトのテイオ・ゲイガンハートと、サンウェブのケルデルマンとヒンドレーのみ!!

このデニスの一本牽きで、ペリョ・ビルバオ、ラファウ・マイカ、ヴィンチェンツォ・ニバリ、ヤコブ・フルサンというライバル達は一気に脱落してしまった!!

そしてなんと、このデニスの驚異的なペースにケルデルマンまでもが遅れていってしまう!!

デニスは先頭で逃げていたオコーナーも吸収して先頭で山頂通過、そのままダウンヒルもかっ飛ばしていく。

アルメイダが大きく離され始めた事により、現状ではバーチャル・リーダーのケルデルマン。

デニス達には付いていけなくとも大崩れせずになんとか持ち堪え、マリア・ローザを守るために必死に追走して、山頂通過時のタイム差は45秒ほどに。

ステージ開始前のゲイガンハートとのタイム差は2分42秒(因みに、チームメイトのヒンドレーはゲイガンハートより1秒だけ良いタイム)、これをどこまで守れるか。

…というか、ヒンドレーはケルデルマンを助けないのか…。

意外とケルデルマンがペースで粘れているし、ヒンドレーが下がって共倒れするリスクを抱えるよりも、チームとして選択肢を2つ残しておきたいという事…?

 

山頂の気温が1℃前後と極寒の環境下で、ケルデルマンがジャケットを上手く着られない(上手くジッパーが上がらない…?…そして、ヒンドレーも何とか着たもののかなり手間取っていた…)トラブルに見舞われる中、デニスは相変わらずの快走を見せ、最後の1級山岳の麓ではタイム差は1分45秒に。

そしてデニスは残り10km地点で仕事を終えて離脱。

いやぁ、本当にもの凄い牽引、お疲れさまでした。

そして2人のみとなった先頭では、後ろにケルデルマンが控えているヒンドレーが先頭交代を拒否して、ゲイガンハートが先頭固定で1級山岳を登っていく。

そしてフィニッシュ手前でヒンドレーがアタック!!

先頭で脚を消耗していたゲイガンハートはついていけず、ヒンドレーが1着でフィニッシュ!!

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ヒンドレーは嬉しいグランツール初勝利になると共に、総合2位へ順位を上げる事に成功!!

そして、ケルデルマンが2分18秒遅れでフィニッシュし、12秒差で総合トップに!!

サンウェブは総合ワンツー独占となり、ケルデルマンを待たなかった選択はとりあえずいい方向に。

 

総合3位には、ステージ2位のゲイガンハートが入り、ケルデルマンとのタイム差は僅か15秒。

大会3日目でエースのゲラント・トーマスを失ったイネオスだったけれども、気が付けば総合表彰台入りが現実的になってきた!

そして、マリア・ローザを失ったアルメイダは4分51秒遅れでフィニッシュし、2分16秒遅れの総合5位に。

1分19秒遅れの総合4位には、ステージ3位となったビルバオがランクイン。

 

やはりクイーンステージで激しい争いからの順位シャッフルが発生し、総合優勝の行方はまだまだ読めない状態が続く事に…。

 

 

第19ステージ

今大会最長の258km、そして最後の集団スプリントになるはずだった第19ステージ。

 

冷たい雨が降る厳しい気候、そしてここ数日の厳しすぎるコース設定に対して、何と選手側から抗議が。

プロ選手協会がチームでの多数決を取り、コース短縮を主催者側に求めるという異例の事態に。

協議の結果、車でスタート地点から134km地点まで移動して、そこからレースを開始する事に決定。

この一連の流れに対して色々な意見が出ているみたいだけれども、個人的には賛成。

というか、プロ選手協会がチームに多数決を取る、その結果を受けて主催者側に短縮を求める、そして両者の協議で決定という、至極まっとうな流れでの動きなので、当然受け入れるべきだと思う。

 

改めて、全長124kmに短縮されたステージがスタート。

ヴィクトール・カンペナールツやアレックス・ドーセットという独走力自慢の選手が多数含まれた14人の逃げが形成され、最初の1時間を平均51.800km/hという超高速ペースで走行!!

メイン集団はペテル・サガンのマリア・チクラミーノ奪取のために集団スプリントに持ち込みたいボーラ・ハンスグローエが必死に牽引するも、なかなか差が詰まらない…。

そして逆に、普段ならスプリントステージで同じように牽引してくれるグルパマは、デマールのポイント賞を確定させたい為に動かない。

しばらくすると、遂にボーラが逃げに追いつくことを諦め、メイン集団は翌日の山岳決戦に向けてエネルギーを消耗しないようにゆったりと走行する事を選択。

これでデマールのマリア・チクラミーノ獲得が実質確定する事に。

もう1回スプリントを観たかったという不完全燃焼感も多少あるけれども…、集団スプリント全勝で間違いなく今大会最強のスプリンターだったデマールの受賞なら、まぁよしとしよう。

 

思わぬ形で勝負権を得た逃げ集団では、残り30km辺りからアタック合戦が始まる。

いくつかの散発的なアタックが吸収された後、残り23km地点でヨセフ・チェルニーがアタックすると、単独で抜け出すことに成功!

先頭に躍り出たチェルニーを捕まえる為にを5人の追走集団が発生して追いかける形に。

残り15kmを過ぎたあたりから追走集団は少しづつ差を縮めていくものの、チェルニーも必死に粘り続ける。

残り1km地点で追走集団からカンペナールツが飛び出して追いすがるも、チェルニーがこれを振り切り独走でのフィニッシュ!!

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チームの実質解散が決まり、本人もまだ来季の契約が決まらない厳しい状況下で、感極まりながらの勝利!!

 

一方のメイン集団は、翌日に備えて完全に「休息」モードで仲良くフィニッシュ。

現時点で、総合1位はサンウェブのケルデルマン。

総合2位がチームメイトのヒンドレー(+12秒)、総合3位にイネオスのゲイガンハート(+15秒)という状況。

これだけの僅差の状況で、残すは山岳ステージと個人TTステージが1つずつ。

激戦必至の最終盤へと突入する。

 

第20ステージ

元々はフランスに突入してアニェッロ峠やイゾアール峠という1級山岳を通る予定が、新型コロナウィルス再流行のためにフランスへの入国ができなくなり、セストリエーレ峠を3回登るレイアウトに変更となった第20ステージ。

本来ならクイーンステージとなるはずだった難易度は大幅に低下したものの、最後の2回のセストリエーレは1級山岳なので、厳しい事に変わりはない。

 

この日の逃げは21名と大所帯で、メイン集団との差を最大7分以上にまで広げている。

一方のメイン集団は、1回目のセストリエーレ(登坂ルートの関係でここだけ2級山岳)の途中から、イネオスが牽引してペースを上げ始める。

2度目のセストリエーレ、サルバトーレ・プッチョ、フィリッポ・ガンナ、ジョナタン・カストロビエホ、ベン・スウィフトと、第18ステージのサンウェブのようにチーム全員での牽引を見せるイネオス。

そして上記の4人がアシストを終了すると、第18ステージの立役者であるデニスがまたしても猛牽引を開始。

このデニスのペースについていけたのは、なんとゲイガンハートとヒンドレーのみ!

マリア・ローザのケルデルマンは他の上位陣と共に遅れてしまう…。

 

ケルデルマンたちに40秒ほどの差をつけて山頂を超えたデニスの牽引はダウンヒルでも止まらず、残り10kmほどで逃げをすべて吸収する。

デニスは先頭固定で1人で牽いていたにも関わらず、この時点でケルデルマン達との差は1分45秒程にまで広がっていた。

最後の登坂入り口のボーナスポイントでは、翌日のTTに不安のあるヒンドレーがアタックしてボーナスタイム3秒を獲得、2位通過で2秒獲得のゲーガンハートとの差を僅かでも広げようとする。

登坂に入ると、ヒンドレーはなんとかゲイガンハートを引きちぎろうと、残り3.5km辺りから断続的にアタックを仕掛ける!

しかし、ゲーガンハートは苦しそうな表情を見せながらも粘り強く食らいつく!

しかも、牽きっぱなしで脚を消耗しているはずのデニスもペーシング走法でなかなか離されず、残り1km辺りまではしっかりと張り付くという驚異のスタミナを披露。

結局、ヒンドレーはゲーガンハートを突き放す事ができずに、2日前と同様のマッチアップとなりフィニッシュ地点へ。

残り150mからスプリント勝負となり、前回は先頭固定で消耗していたゲイガンハートが本来のパンチ力を披露!

ゲイガンハートが2日前のリベンジに成功して先頭でフィニッシュ!!

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デニスの献身にしっかりと応えるステージ2勝目、そして10秒のボーナスタイム獲得!!

 

そしてもちろんヒンドレーが2位でフィニッシュして、6秒のボーナスタイムを獲得。

この結果、ヒンドレーとゲイガンハートが同タイムで並ぶというまさかの事態が発生!

そしてここまでのTTで計測していたコンマ以下の秒差の結果、マリア・ローザはヒンドレーが着用する事に。

 

最終日を前にして総合1位と2位が同タイムというのは、長いグランツール史上でも初めてのレアケース!

 

残すは平坦の短い個人TTのみ。

過去のリザルト的にはゲイガンハートが圧倒的有利の筈だけれども、ツール・ド・フランスでも下馬評を覆す大逆転劇が起こったように、終盤の個人TTは何があるか分からない。

ジロ・デ・イタリア2020の総合優勝争いは、史上最も緊張感のある最終ステージでの決戦に…。

 

第21ステージ

最終日、ミラノの大聖堂前へとフィニッシュする起伏のない短めの個人タイムトライアル。

もちろん最大の注目は、史上初となるタイム差0で迎える総合1位争い。

下馬評通りゲイガンハートか、それともヒンドレーがリーダー・ジャージのマジックを見せるのか。

それとも、TTが得意な総合3位ケルデルマン(1分32秒遅れ)が奇跡の大逆転を起こすのか。

最後まで目を離せない最終日がスタート!

 

ステージ勝利については、最早あまり多くを語る必要が無いと思う。

世界最強の男が、その力を遺憾なく発揮しただけ。

世界王者フィリッポ・ガンナ、ジロ・デ・イタリア2020の個人TT完全制覇達成。

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個人TT3勝、逃げで1勝、そして終盤は献身的にアシスト。

文句なしに、現役最強のTTスペシャリストとしか言いようがない。

 

総合勢でまず好走を見せたのは、総合5位のアルメイダ。

約2週間マリア・ローザを着用していた若武者は最終日もその勢いを失うことなくステージ4位の好走を見せ、ビルバオを抜いて総合4位へと順位を上げる事に成功!

間違いなく、今大会の主役の1人だったアルメイダ。

今後の活躍にも大いに期待したい!

 

そして、総合3位のケルデルマンもステージ11位のタイムと流石の走りを披露して、しっかりと総合3位をキープ。

大会終盤の山岳ステージでは後れを取ってしまったけれども、決して大きく遅れない安定感は力強かった。

今までは期待されながらもケガに泣いてきた苦労人が、見事に表彰台の座を獲得!

 

そして、1秒でも速くフィニッシュした方が総合優勝となるゲイガンハートとヒンドレー。

15.7km、短いながらも激アツな決戦がスタート。

3分差でスタートした2人が同画面に映し出され、バーチャルでのタイム差が(最初は説明が無くて意味が分かりにくかったけど)表示されている。

重めのギアを力強く踏むゲイガンハートと、軽めのギアを軽快に回すヒンドレー。

そんな対照的な2人、序盤はほぼ同タイム。

しかし、中盤に入ると少しづつ差が開いてきた。

リードしているのは…下馬評通りゲイガンハート!

じわじわとリードを広げ、10.3km地点の中間計測では21秒差に。

そのまま更にタイム差は広がりながら、両者トラブルなくそのままフィニッシュ!

ジロ・デ・イタリア2020、総合優勝はイネオス・グレナディアーズのテイオ・ゲイガンハート!!

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イギリス期待の若手ながら、実はジロ開幕前までワールドツアー未勝利だったゲイガンハート。

今回のジロも本来はゲラント・トーマスのアシストの予定だったはずが、トーマスが第3ステージでの落車でリタイアした事により巡ってきたチャンスを、見事に掴み取る事に成功!

今大会の山岳では一番の強さを見せて重要な山岳ステージで2勝、そして個人TTもしっかり上位につける安定感(第14ステージ・第21ステージ共に13位)を披露するという、クライマー系オールラウンダーの理想とも言えるような、素晴らしい走りだった。

 

そして、やはり特筆すべきはイネオス・グレナディアーズの凄さ。

エースのトーマスを失いながらも、最終的には総合優勝とステージ7勝を手に入れるという、圧巻のリザルト。

ゲーガンハートの開花、世界最強のTTスペシャリストとなったガンナ、デニスの強力すぎる牽引力、いつでも逃げてステージ勝利を狙える選手層の厚さ。

そして何より、ゲーガンハートにスイッチする戦略の絶妙さ。

チーム全体で逃げまくってステージ勝利狙いに絞ったと見せかけながら、ゲイガンハートはしっかりタイムをキープさせ、最終盤ではチーム全員がゲーガンハートを全力でアシスト。

流石としか言いようがない。

ツール・ド・フランスではその絶対的な力に陰りが見えたようにも思えたけれども、やっぱりイネオスは強い。

改めてそう思わせてくれる3週間だった。

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惜しくも総合2位に終わったヒンドレーも、本来ならアシストの立場だったはずの選手。

ゲイガンハートに唯一対抗できる登坂力を見せた結果、思わぬ大きな結果を手に入れる事になった。

ゲイガンハートとはアンダーカテゴリー時代からの友人であり、第18ステージや第20ステージで見せたフェアな走りは、見ていて気持ちがよくなるような素晴らしい姿勢だったと思う。

若手中心のサンウェブの新たな総合系エースとして、これからも大いに期待したい。

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そして、ヒンドレーとケルデルマンの2人を表彰台に送り込んだサンウェブも、イネオスとは別ベクトルながらとても魅力的なチーム。

ツールでも見事な連携でステージ3勝、このジロもエース・スプリンターのマイケル・マシューズを途中で失いながらも最後には総合2位・3位を獲得して、大成功と言っていいはず。

資金力の関係で育てた選手に出ていかれがちながらも、連携とチーム力でしっかりと結果を残すという、ロードレースの魅力をよく伝えてくれる本当にいいチームだと思う。

 

3週間を終えて…

改めて、最終リザルトを確認。

  • 総合優勝:テイオ・ゲイガンハート(イネオス・グレナディアーズ
  • 総合2位:ジェイ・ヒンドレー(チーム・サンウェブ)
  • 総合3位:ウィルコ・ケルデルマン(チーム・サンウェブ)
  • ポイント賞:アルノー・デマール(グルパマFDJ)
  • 山岳賞:ルーベン・ゲレイロ(EFプロサイクリング)
  • ヤングライダー賞:テイオ・ゲイガンハート(イネオス・グレナディアーズ

ゲイガンハート、総合優勝おめでとう!!

しかし、ケルデルマンの表彰台は予想していた人も結構いると思うけれども、この総合1位・2位をイメージできた人はいないだろうなぁ…。

 

今回のジロは、新型コロナウィルスによるリタイアも含めて、有力選手のリタイアや不調・トラブルが相次ぎ、かなり波乱の3週間だったと思う。

アルメイダがあんなに長くマリア・ローザを着ていたのは予想外だったし、3週目は更に想定外の展開の連続で、本当に先が読めなかった。

でも、間違いなく面白かった。

どうなるか予想のつかない展開に、毎日ハラハラ・ドキドキしながら、もの凄く楽しかった。

レース外で多くの混乱や困難があった中、最後までやり遂げてくれた選手や関係者には、本当に感謝したい。

情熱と感動をありがとう。

本当に楽しい3週間だった。

 

また来年、この美しくも過酷な3週間を楽しみたいと思う。

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