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【レース感想】ブエルタ・ア・エスパーニャ2022 第12ステージ

強者の矜持

大会前、「平坦with登りフィニッシュ」という公式による謎の表現が物議を醸した、ある意味ブエルタらしさが詰まった問題のステージ。

「登坂距離19㎞・平均勾配6.7%の1級山岳でフィニッシュなら、山岳ステージでいいんじゃないの…?」という疑問は一旦置いておくと、まあ普通に総合争いが巻き起こる可能性もあり得る難易度ではある。

 

激しいアタック合戦の末に出来上がったこの日の逃げは、なんと32人!!

リチャル・カラパス(イネオス・グレナディアーズ)やウィルコ・ケルデルマン(ボーラ・ハンスグローエ)という総合タイムを失ったエース級や、ジェイ・ヴァイン(アルペシン・ドゥクーニンク)やマルク・ソレル(UAEチームエミレーツ)のような今大会ステージ勝利を挙げている選手など、かなり豪華なメンバーが揃っている。

この超強力な逃げに対して、メイン集団は10分以上のタイム差を容認しつつ、逃げ集団で最も持ちタイムの良いケルデルマン(14分4秒遅れ)にバーチャルリーダーの座を与えないようにコントロール

ステージ勝利を争う大型先頭集団、そして後方で総合争いをするメイン集団と、完全に2つに分離したレースが繰り広げられる事に。

その後、先頭からルイス・フェルファーケ(クイックステップ・アルファヴィニル)がアシストの為にメイン集団に戻る事を選択。

既にリタイアでアシストを2枚失っているクイックステップとしては、タイム差が広がりすぎたこの日の展開なら「前待ち」よりも普通にアシストをした方が効果的という事か。

 

31人になった先頭集団は、約11分のリードを保ったまま1級山岳ペニャス・ブランカスに突入。

ここでもの凄い働きを見せたのがマッテオ・ファッブロ(ボーラ)。

「今回みたいな長い登りはとても自分向き」と語るケルデルマンの為に、登坂の序盤からハイペースで前を牽き続け、登れない選手を次々と脱落させてくスーパーアシストを披露。

そして残り4.7km、アタックを仕掛けたのはエリー・ジェベール(アルケア・サムシック)。

この動きに反応できたのはケルデルマン、カラパス、ヴァイン、ヤン・ポランツ(UAE)、マルコ・ブレンナー(チームDSM)、カールフレドリック・ハーゲン(イスラエル・プレミアテック)のみ。

残り3.7kmでジェベールが再度アタックを仕掛けて、ハーゲン、ヴァイン、そしてポランツが脱落。

ケルデルマン、カラパス、ブレンナーの3人がジェベールを捕まえた直後、残り2kmでアタックを仕掛けたのはカラパス!!

カラパスのアタックの鋭さは凄まじく、真っ先に反応しようとしたジェベールは首を横に振って諦め、対抗し得る実力者であるケルデルマンもペース走で追いかけるのが精一杯だ!!

あっと言う間に10秒ほどのリードを作り出したカラパスは、その後も全く勢いを失わずにフィニッシュまで駆け抜けていく!!

残り100mを切って勝利を確信すると、ハンドルを何度も叩いて喜びを表現する!!

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アタック一閃!!

カラパスが自身初となるブエルタのステージ勝利で、改めてその力を証明!!

総合タイムは失ったけれども、当然ながらその強さと、勝利に対する意欲を失った訳では無いのだ!

残り2kmで繰り出した渾身のアタックと、歯を食いしばりながら最後まで踏み続けたその表情は、本当に素晴らしかった。

 

一方のメイン集団は、まずはチーム・ユンボ・ヴィスマがローハン・デニスやクリス・ハーパーやサム・オーメンによるペースアップで絞り込みを図ったけれども、クイックステップ、イネオス、モビスター・チームといった総合ライバルチームのアシストを削り切れないまま、逆にエースのプリモシュ・ログリッチが丸裸になってしまう。

マスの為に献身的なアシストを見せていたネルソン・オリベイラ(モビスター・チーム)が脱落すると、テイオ・ゲイガンハートとカルロス・ロドリゲスというイネオス勢が前を牽いてペースアップ。

他に集団に残っているのは、エヴェネプール、ログリッチ、マス、フアン・アユソ(UAEチームエミレーツ)、ミゲルアンヘル・ロペス(アスタナ・カザクスタン・チーム)、ベン・オコーナー(AG2Rシトロエン)、ティメン・アレンスマン(DSM)と、もうエース級のみだ。

残り2kmを切ると、エヴェネプールが先頭に立ってペースメイクを開始して、生き残れているのはロドリゲス、マス、アユソ、ログリッチ、ロペスと、更に絞り込みが掛かる。

レース中盤には落車してダメージが心配されたエヴェネプールだけれども、やはりそのペーシングはかなり速くて、他の選手がアタックする隙を見出せないまま残り距離が少なくなっていく。

残り200m、このままフィニッシュするのかと思っていたら、エヴェネプールが加速!!

マス、ログリッチ、アユソの3人は反応して同タイムフィニッシュだったけれども、ロペスは6秒、ロドリゲスは11秒のタイムを失ってしまった。

 

ひとまず、話題の「平坦with登りフィニッシュ」では、逃げていたケルデルマンとポランツが総合トップ10にジャンプアップした以外には大きな動きは巻き起こらず。

次なる総合争いの舞台となる第14ステージ・第15ステージの2連続山頂フィニッシュの前に迎えるのは、若干の登り勾配で行われるスプリントだ。

ピュアなスプリンターが勝つのか、登れる系のスプリンターが勝つのか、これもまた楽しみにしているステージなので、熱戦を期待したい。