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【レース感想】ブエルタ・ア・エスパーニャ2022 第20ステージ

最終決戦

総合争い最後の舞台となる第20ステージは、1級・2級・2級・1級・1級と5つものカテゴリー山岳を越えていき、獲得標高が4000m近くにもなる高難度なレイアウト。

現在、総合首位のレムコ・エヴェネプール(クイックステップ・アルファヴィニル)と総合2位のエンリク・マス(モビスター・チーム)の差は、2分7秒。

果たして、神童エヴェネプールが王座を守り切るのか、それとも地元スペインの期待を背負うマスによるドラマが成されるのか。

泣いても笑ってもここが最終決戦の地、物語の締めくくりが今始まる。

 

開始直後にいきなり1級山岳を登るという事で、逃げを狙ったアタック合戦はかなり激しいものに。

飛び出しては捕まるのを繰り返し、やっと7人の逃げが決まったかと思えば更に合流を目指す飛び出しが生まれ、レースはなかなか落ち着かない。

1級山岳通過後、6人の先頭集団からマルク・ソレル(UAEチームエミレーツ)とロバート・スタナード(アルペシン・フェニックス)の2人が抜け出して、新たな先頭集団を形成。

遅れた4人は後方の追走集団に吸収され、こちらはこちらで20人強の大きな追走集団として先頭の2人を追いかける格好に。

一方のメイン集団は、クイックステップが先頭とのタイム差を5分前後にコントロールする牽引を見せている。

 

最初の1級山岳を先頭通過して山岳賞ランキングで2位に浮上したスタナードは、続く2級山岳も先頭通過した事で、首位カラパスとの差を14ptにまで縮める事に成功。

ただ、こうなると追走集団にいたカラパスは当然動き、この日3つ目のカテゴリー山岳で先頭に合流してスタナードを封じ込める。

更に、カラパスは続くこの日4つ目の山岳でルイス・メインチェス(アンテルマルシェ・ワンティゴベールマテリオ)とセルヒオ・イギータ(ボーラ・ハンスグローエ)と共に抜け出し、そのまま1級山岳を先頭通過。

これで、カラパスはリタイアさえしなければ山岳賞が確定する事に。

 

一方のメイン集団は、この4つ目のカテゴリー山岳でモビスターがペースアップを敢行。

そして山頂まで3km以上を残した位置から、マスがアタック!!

このアタックは決まらないけれども、マスもこの一発で決める気は無いはず。

それでも、早い段階からエヴェネプールに負荷をかけ、なんとかエヴェネプールにタイム差を付けようという意志を、逆転総合優勝に向けた意思をはっきりと見せている。

 

残り16km、先頭の3人が今大会最後のカテゴリー山岳、1級山岳プエルト・デ・コトスに突入。

残すは10.3kmの登坂と、その先に続く6kmほどの平坦区間

追走集団は40秒ほど後方、メイン集団は1分30秒ほど後方にいて、逃げ切りも、追走集団からの勝利も、メイン集団による勝利も、まだどの可能性も残っている状態だ。

メイン集団は、総合3位フアン・アユソ(UAEチームエミレーツ)のために、総合6位のジョアン・アルメイダが牽引。

ペース走の名手アルメイダが刻む高速ペーシングに、そして全体的に緩めな勾配に、どの選手もなかなかアタックの機会を見出せない。

メイン集団はそのまま追走集団の選手たちを順次追い抜き、気が付けば先頭集団…メインチェスが脱落してカラパスとイギータの2人のみになった先頭集団にかなり近づいている。

山頂まで残り500m、メイン集団が僅か10秒後方にまで迫ってきている中、先頭のカラパスがアタック!!

一発の仕掛けでイギータを置き去りにすると、そのまま軽快に山頂を通過して、残すは短い平坦区間のみだ!!

メイン集団は結局決定的な動きはないまま山頂を通過、先頭のカラパスとのタイム差は20秒強ほど。

逃げ切れそうな気もするけれども、まだ何があってもおかしくない差だ。

 

独走となったカラパスの踏みは…力強さを失わない!

イギータを吸収したメイン集団から、総合7位のティメン・アレンスマン(チームDSM)が隙を見て抜け出して、単独でカラパスを追うけれども…。

カラパスは10秒強のタイム差を残したまま残り1kmを通過!

これは逃げ切りが見えてきた!!

山岳賞ジャージを着たカラパスが、今大会最後の山岳ステージのフィニッシュ地点へ単独でやって来る!!

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カラパスがまたしても山岳ステージで逃げ切り!!

山岳賞確定に自ら花を添える今大会3勝目!!

今大会はコンディション不良で1週目にタイムを失い早々に総合争いからは脱落したけれども、トップコンディションならやはり段違いの強さ!!

インチェスもイギータも決して弱くない…というか普通に一流選手なのに、まるで赤子の手を捻るように軽々と千切っていくとは…!

来シーズン、移籍先であるEFエデュケーション・イージーポストの総合エースとして、またグランツールの総合争いでその強さを見せて欲しい!

 

そしてカラパスから15秒後、エヴェネプールがメイン集団内で感極まった様子を見せながらフィニッシュ!!

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これで、エヴェネプールの総合優勝が実質確定!!

嬉しさのあまりか、それともあまりにも大きな重圧からの解放か、エヴェネプールは顔を手で覆いながら号泣している…!

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圧倒的な力とチャレンジングな走りでリードを築いた1週目、落車の影響もあって調子を崩しながらも傷口を最小限に留めた2週目、そして再び調子を取り戻して力を見せつけた3週目。

そのどれもが王座に就くのに相応しい、素晴らしいものだったと称えたい!!

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さあ、これで残すは最終第21ステージ、マドリードへの凱旋のみ!!

激闘だった3週間の締めくくり、最高に盛り上がる事を期待したい!!