2級山岳と頼れる仲間
2級山岳プエルト・デル・ピエラガを含む周回コースを2周する、中級山岳ステージ。
ピュアスプリンターには厳しいけれども、山頂からフィニッシュまでが長い事も含めて総合争いが巻き起こる厳しさはない、逃げ切り向けのレイアウト…だと思っていた。
スタートからすぐに出来上がった逃げ集団は…え?
ブランドン・マクナルティ(UAEチームエミレーツ)、ヨナタン・カイセド(EFエデュケーション・イージーポスト)、アンデル・オカミカ(ブルゴスBH)の、たった3人だけ…!?
いいメンバーではあるけれども、これは個人的にはかなり意外な展開。
その後、単独で先頭への合流を目指したローソン・クラドック(チーム・バイクエクスチェンジ・ジェイコ)など、いくつか動きはあったけれども、結局逃げは3人のままレースが展開される事に。
メイン集団を牽引するのは、ポイント賞獲得を実質確定させているマッズ・ピーダスン擁するトレック・セガフレード。
逃げる3人とのタイム差を…最大で3分強、しかもそこから徐々に縮めていくコントロールを見せる。
…そうきたかぁ~、と言うか、ピーダスンがいるなら当然考えるべきパターンだったなぁ…。
レイアウトだけ見て、「今日は逃げ切り!」と決めつけていた事を大いに反省…。
2度目の2級山岳に入ると、トレックの代わりにバーレーン・ヴィクトリアスが牽引を開始。
逃げ集団を吸収するだけではなく、目論見通りフレッド・ライトのライバルとなり得るスプリンター…ティム・メルリール(アルペシン・ドゥクーニンク)、パスカル・アッカーマン(UAEチームエミレーツ)、ダニー・ファンポッペル(ボーラ・ハンスグローエ)、カーデン・グローヴス(バイクエクスチェンジ)などを振るい落とす事に成功。
トレックとバーレーンの動きによって、山岳を生き残れた選手によるスプリントに向けてレースは進んでいく。
残り10km、集団の前を牽いているのはケニー・エリッソンド(トレック)という、典型的な小型軽量クライマー。
普通のスプリントステージなら猛スピードで激しい位置取り争いが繰り広げられているこの距離で、集団は穏やか…というかなんだか牽制にも近い雰囲気が流れていて、縦ではなく横に広がった形になる場面も。
残り3kmからは、総合勢のイネオス・グレナディアーズが牽引を開始。
総合4位のカルロス・ロドリゲスを守るためだけなら、救済措置適用内のこの距離で牽く意味はあまりないけれども、テイオ・ゲイガンハート、ディラン・ファンバーレ、ベン・ターナー、そしてロドリゲスという隊列を組んでいる。
残り2kmを切ると、バーレーンがしっかりとライトを連れて前方に上がってきた。
鋭角な折り返しを抜けて残り1km、先頭は再びトレック、ピーダスンの前にアシストを2枚残せている最高の形だ!
ピーダスンの背中にライトが上手く張り付き、「本命はこの2人でのスプリントかな」と思った瞬間、マイルズ・スコットソン(グルパマFDJ)が早掛けを敢行!!
少しギャップも出来たけれでも、さすがに残り500m以上での仕掛けは早すぎて、ピーダスンを引き連れたアントニオ・ティベリが難なく吸収。
結果的にスプリントに絶好のタイミングとなったこの瞬間、ピーダスンが発射!!
後ろに貼りついていたライト、他にジャンニ・フェルメールシュ(アルペシン)やターナーなども全力で踏み込むけれども、ピーダスンは勢いを失わずに先頭を譲らない!!
最後はガッツポーズを繰り出す余裕を見せてのフィニッシュ!!
グリーンジャージに相応しい盤石の内容!!
ピーダスンが改めてその力を誇示する今大会ステージ3勝目!!
タイミングを問わず、登りが絡んだスプリントでは圧倒的に強い!
それでいて、ピュアなスプリントステージでも2位が2回あるのだから、今大会は本当に安定して強かった!
また、この日も光ったのがトレックのチーム力。
ピーダスンに有利なシチュエーションに持ち込むために序盤から奮闘して、最終局面でもティベリが最高のアシストを披露!
個の力とチーム力が見事にかみ合って掴んだ勝利、そしてポイント賞首位という結果だ。
最終第21ステージは、久しぶりの平坦スプリントステージになるマドリードの周回コース。
ピーダスンが最後まで強さを見せるのか、それともピュアスプリンターが意地を見せるのか、これもまた楽しみだ。