かなり「荒れた」展開に…
第9ステージは、コース後半に5か所の未舗装路区間が登場する、「ストラーデ・ビアンケ風」のレイアウト。
激坂を含むに舗装路コッレ・ピンツートを越えて、サンタ・カテリーナ通りの激坂を通り抜け、カンポ広場にフィニッシュするルートは、まさにストラーデ・ビアンケのよう。
激戦必至との予想通り…いや、それ以上に、「荒れた」展開が繰り広げられることに…。
2つ目の未舗装路区間、メイン集団が先頭の2人を吸収しようかというタイミングで、事件は起きた。
残り51.3km、メイン集団で落車が発生。
なんと、総合争いで一歩リードするプリモシュ・ログリッチ(レッドブル・ボーラハンスグローエ)、そしてこの日のステージ優勝の有力候補であるトム・ピドコック(Q36.5プロサイクリング)が巻き込まれている…!?
難を逃れた選手の中から、更に上手く抜け出したのはイサーク・デルトロ(UAEチームエミレーツ・XRG)。
デルトロに反応できたのは僅か4人、イネオス・グレナディアーズからエガン・ベルナルとティメン・アレンスマンとブランドン・リベラ、そしてワウト・ファンアールト(チーム・ヴィスマ・リースアバイク)だ。
この5人は逃げていた2人をパスして新たな先頭集団を形成、その後ろにフアン・アユソ(UAE)などを含む第1追走集団、その更に後方に落車後にパンクでの足止めも食らってしまったログリッチやピドコックを含む第2追走集団…という構図に。
先頭集団は、デルトロとファンアールトは「後方に総合エースがいる」という大義名分で牽引に協力せず、イネオスのアレンスマンとリベラが牽くしかない。
アレンスマンが早々に力を使い果たして遅れていくと、リベラとエースのベルナルがローテーションを回すという、数の利があるはずのイネオスが実は結構苦しいという、かなり複雑な状況に…。
残り22.7km、第1追走集団から飛び出したマティアス・バチェク(リドル・トレック)が、先頭集団への合流に成功。
その直後、4つ目の未舗装路区間でアタックしたのはデルトロ!
リベラは完全に脱落、ファンアールトはしっかり反応、ベルナルとヴァチェクは…徐々に離される…!
しかしベルナルとヴァチェクも、その後の舗装区間で何とか再合流に成功。
ただ、その直後には激坂の未舗装路ピンツートが控えている…。
残り16kmから始まるピンツート、入り口直後の激坂で仕掛けたのはやはりデルトロ!
シッティングのままかなりペースを上げて、ベルナルとヴァチェクを完全に突き放していく…!!
これで、ステージ優勝は完全にデルトロとファンアールトの争いに。
そしてベルナルは…総合タイムを稼ぐために、1分後方の追走集団からなんとか逃げ切れるのか…?
先頭の2人はそのまま旧シエナ市街地に突入、最後の勝負所サンタ・カテリーナ通りへ!
急勾配区間で仕掛けるのはやはりデルトロ、しかしファンアールトがしっかり食らいつく!!
激坂を登り切って残り400m、ここでファンアールトが前に出る…これは上手い!
この先は細いコーナーと危険な下り、抜かせるようなタイミングがほぼ存在しない…!!
ファンアールトはそのままカンポ広場のフィニッシュラインまで突き抜ける!!
本調子ではなくともこの強さ!!
2020年のストラーデ・ビアンケ優勝者ファンアールト、貫禄の勝利!!
ここまで、スプリントも登坂も個人タイムトライアルも、明らかに本調子ではなかったけれども…得意の未舗装路でしっかり勝利を掴む、その強さ。
残り400mで前に出る上手さも合わせて、流石の一言だ。
そしてステージ2位となったデルトロは、総合首位に浮上…!!
集団の混乱を見逃さないしたたかさ、そして登坂で積極的かつ適切に仕掛ける力と判断力は、本当に見事だった。
UAEとしては、このデルトロの快走は嬉しい誤算だ。
そのアユソを含む追走集団は、デルトロから遅れること約1分、サンタ・カテリーナ通りで少し分離してフィニッシュ。
ジュリオ・チッコーネ(リドル)とリチャル・カラパス(EFエデュケーション・イージーポスト)が+58秒、サイモン・イェーツ(ヴィスマ)とアントニオ・ティベーリ(バーレーン・ヴィクトリアス)が+1分、アユソが+1分7秒、そして…追い付かれてしまっていたベルナルがアレンスマンとアダム・イェーツ(UAE)と共に+1分10秒、と言う結果に。
ベルナルとしては、第10ステージの個人タイムトライアルのことを考えると、ここでなんとかタイムを稼いでおきたかっただけに、「仕掛け」が成功しなかったのは無念だ…。
そして、ログリッチとピドコックは2分22秒遅れてのフィニッシュ。
これでログリッチは、2分25秒遅れの総合10位という順位に。
どうして、また落車でタイムを失ってしまうのか…。
もちろんまだまだ「終戦」ではないけれども、なかなか痛いビハインドを背負うことになってしまったのは間違いない。