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【レース感想】ストラーデ・ビアンケ2025

転んでもただでは起きない

イタリアはトスカーナ州の丘陵地帯を駆け抜ける、美しくも険しいレースであるストラーデ・ビアンケ。

その「白い道」という名の通り、白い土煙が上がる未舗装路区間が16か所登場するだけでなく、獲得標高が3,900mほどにもなるアップダウンの繰り返しがより過酷さを増大させ、スリリングな展開が生まれやすいこのレース。

初開催が2007年と歴史は浅いながらも、ファンからも選手からも人気は高く、今回もかなりいいメンバーが出場!

  • 昨年81km独走勝利と言う驚愕の走りを見せつけた、世界最強の選手タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ・XRG)
  • プロチームへ移籍した一昨年の覇者、悪路適正とダウンヒルテクニックでは現役随一のトーマス・ピドコック(Q36.5プロサイクリング)
  • 同じくプロチームに移籍した実力者、昨年の秋にはイタリアのレースで勝ちまくったマルク・ヒルシ(チューダー・プロサイクリング・チーム)
  • 今シーズン好調のベテラン、過去に2度の優勝を誇るミハウ・クフィアトコフスキ(イネオス・グレナディアーズ
  • 積極性と独走力が魅力のベン・ヒーリー(EFエデュケーション・イージーポスト)

突き抜けるような晴天の下、レースはスタート!

 

スタートから逃げを選択したのは10人、コナー・スウィフト(イネオス・グレナディアーズ)、スタン・デウルフ(デカトロン・AG2R・ラ・モンディアル)、ルイス・アスキー(グルパマFDJ)、マーク・ドノヴァン(Q36.5)、ヨハン・プリースパイタースン(バーレーン・ヴィクトリアス)など、派手ではないけれども「渋い」系統の実力者が結構入っている印象。

ただ、レース中盤以降はやはりセクターの過酷さから徐々に人数を減らしていき、最初の勝負どころである第9セクター「モンテ・サンテ・マリエ」突入時点で逃げの生き残りは6人、そして最大5分以上あったメイン集団とのタイム差は1分30秒にまで縮まっている。

メイン集団を牽引しているのはUAE、イサーク・デルトロやティム・ウェレンスによる高速牽引で、既に30人ほどしかいない集団を更に絞り込んでいく。

残り78.5km、先頭ではコナー・スウィフトが抜け出して単独走を開始している状況で、メイン集団から仕掛けたのはポガチャルではなくピドコック!

この動きに対応できたのはポガチャルのみ、そしてポガチャルはすぐさまカウンターを発動、しかしここはピドコックもしっかりと食らいついていく。

あっという間に先頭のコナー・スウィフトに追い付いた2人は、そのままコナー・スウィフトを置き去りに…と思いきや、ここはコナー・スウィフトが粘りを見せて再合流、先頭は3人に。

ローテーションを回すポガチャルとピドコック、そしてその背後で完全に「付き位置」を保つコナー・スウィフト。

後方の追走集団は、ヒーリー、ペッリョ・ビルバオバーレーン)、マグナス・コルト(ウノエックス・モビリティ)などの有力選手がいるけれども、ウェレンスがローテーションの阻害したこともあり、気が付けば1分以上のタイム差を付けられている。

そこからしばらくは大きな位置関係の変化はなく、しかしほんの少しずつ…じわじわとタイム差が広がり続ける、そんな静かな展開が続いていく。

 

静寂を打ち破る「事件」が発生したのは、残り50km地点。

舗装路の下りコーナーで、なんと先頭を走っているポガチャルが落車…!?

真後ろを走っていたにもかかわらずピドコックが上手くポガチャルを回避した一方、コナー・スウィフトは若干の足止めを食らっていて、ギャップが生まれてしまう。

落車した勢いでコース外の茂みに突っ込んでしまったポガチャルは、多少の擦過傷が見受けられるけれども、幸いにもダメージは少ないようで即座に再スタート。

コナー・スウィフトをあっという間に抜き去ると、ピドコックが若干踏みを緩めていたこともあり、なんとか合流に成功。

一悶着と言うか…肝を冷やす落車を起点としてレースは動き、ポガチャルとピドコック、優勝の行方はこの2人に絞られた。

 

残り19kmから始まる第15セクター「コッレ・ピンズート」に突入直後、急勾配区間でペースを上げたのはポガチャル!

ピドコックもしっかり食らいついている…ように見えたのも束の間、ハイペースを維持し続けるポガチャルが、じわじわと…しかし着実に引き離す!

ピンズートを抜けて、2人のタイム差は…20秒強!

残すは17km弱、先頭を走るポガチャルの走りは、落車の影響なんて感じさせない力強さで、ピドコックとのタイム差を広げ続ける!

これは決まった…!

 

1分以上のリードを有して、フィニッシュ地点が設定された旧シエナ市街地にやってきたポガチャル。

観客が沿道を埋め尽くす「サンタカテリーナ通り」の激坂を笑顔で登り切り、「世界一美しい」と称されるカンポ広場のフィニッシュラインへ!

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落車しようがお構いなし!

ポガチャル、歴代最多タイとなるストラーデ・ビアンケ3勝目!

相変わらずと言うか…そのタフさも含めて、何という「強さ」!

落車からの再合流に脚を使っただけでなく、そもそも体へのダメージがあるはずなのに…一体どうなっているんだ?

ピンズートでのアタックも、ピドコックが一旦は反応して付いてきたけれども、お構いなしに踏み続けて結局千切ってしまうのは、ちょっとエグすぎやしないかい?

そのパンチ力、そして「アタックの長さ」は、改めて異常なほど飛び抜けていると理解させられた感じだ。

 

惜しくも2位に終わったピドコックも、レース後に「今日は1つのミスもなかった。これが僕が出せるベストな結果だ」とコメントするのも納得の、素晴らしい走りだった。

守りに回るだけでなく、先に仕掛けたその姿勢も含めて、今後に向けて更なる期待が湧くものだったと思う。

 

そして3位に入ったのは、ポガチャルのために追走集団で重石役を担っていたウェレンス…!

と言うか、その前には牽引役もこなしていた訳で…。

ポガチャルとは別ベクトルで、これまた凄い走りだった。

 

さて…、白熱のストラーデ・ビアンケが終わり、3/9からはパリ~ニース、そして3/10からはティレーノ~アドレアティコと、ヨーロッパのロードシーズンもいよいよ本格始動!

観る側もスケジュールが大変だけれども、うまく調整しつつ、思う存分楽しんでいこう~!

それでは、また!

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おまけ

今日の1枚

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これは「世界一美しい」を名乗っても許される美しさ