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【レース感想】ミラノ~サンレモ2025

「仕掛け」の選択肢

シーズン最初のモニュメント(5大ワンデーレース)、「ラ・プリマヴェーラ(イタリア語で春)」ことミラノ~サンレモ。

今年も最大の注目ポイントは、タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ・XRG)が一体どのように仕掛けてくるのか。

スプリントでは分が悪い、しかしポッジオの登坂もライバルを突き放すには緩すぎる。

それでもこのレースでの勝利が欲しいポガチャルが、どんな動きを見せるのか。

対するは、チームとして2連覇中のアルペシン・ドゥクーニンク

前年の勝者ヤスペル・フィリプセンは直前の落車で不安も残る中での出走にはなるけれども、一昨年の勝者マチュー・ファンデルプールは万全の状態。

更には、2年連続でブエルタ・ア・エスパーニャのポイント賞を獲得したカーデン・グローブスまで連れてくる、全く隙のない布陣で迎え撃つ。

アルペシンと同様に強力なメンバーを揃えてきたのは、リドル・トレック

マッズ・ピーダスン、ジョナサン・ミラン、ヤスペル・ストゥイヴェンと、タイプの違うエース格3人を並べ、格好としてはアルペシンに近いように見える。

他の有力候補は、マイケル・マシューズ(チーム・ジェイコ・アルウラー)、フィリッポ・ガンナ(イネオス・グレナディアーズ)、ジュリアン・アラフィリップ(チューダー・プロサイクリング・チーム)、トム・ピドコック(Q36.5プロサイクリング・チーム)、マテイ・モホリッチ(バーレーン・ヴィクトリアスと言った辺りか。

 

冷たい雨の中、先頭集団を形成したのは8人の選手。

一方のメイン集団は、アルペシンのシルヴァン・ディリエがほぼ完全に一人で牽く展開に。

約200kmにも及んだディリエの一本牽きが終わると、メイン集団は3連の小さな起伏「トレ・カーピ」に向けた位置取りが始まり、一気にペースアップ。

先頭集団は3つ目の起伏で散り散りになり、マルティン・マルチェルージ(VFグループ・ヴァルディアーニCSF・ファイザネ)が単独先頭に。

猛然とペースを上げるメイン集団は、チプレッサに突入するとほぼ同時にマルチェルージを吸収。

先頭はEFエデュケーション・イージーポストの選手、そしてその後ろに選手を並べるのはイネオス、続いてアルペシンと、やや意外な展開でのチプレッサ突入だ。

 

しかし、やはりここで主導権を握ろうと集団の先頭に出てきてペースを上げるのは、UAEのティム・ウェレンス。

ウェレンスが頂上まで残り3.9kmと少し早めに仕事を終えると、UAEはすかさずジョナタン・ナルバエスがポガチャルを引き連れながら先頭へ。

ここでナルバエスが全力での牽引を敢行すると、集団はどんどん小さくなっていく!

そしてフィニッシュまで残り24.7km、チプレッサ頂上まで3kmという位置からポガチャルがアタック!!

例年より早いポガチャルの仕掛けに反応できたのは、その後ろに並んでいたガンナとファンデルプールだけ…!?

チプレッサを越えて、追走集団とのタイム差は30秒強。

これは…強力すぎる先頭の3人が、そのまま逃げ切るぞ…!!

 

残り9.2km、先頭の3人がいよいよ最後の登坂であるポッジオに突入、後方とのタイム差は42秒に広がっている。

ポッジオに入った直後、ポガチャルがいきなり強烈な加速を見せる…!!

たまらず千切れてしまうガンナ、しかしファンデルプールはしっかりと付いていく!

ペースをなかなか緩めないポガチャル、落ち着いてその背中を捉え続けるファンデルプール、そしてペース走で粘って大きくは離されないガンナ。

ポッジオ頂上まで残り2.2km、さすがにポガチャルが一旦ペースを緩めたことでガンナが追い付きそうになったその瞬間、またしてもポガチャルがアタック!!

ここもファンデルプールがしっかり反応したので少しペースを落としてけれども、ポガチャルは直後にもう一度アタック、それも防がれても、更にもう一度アタック!!

そして、ポガチャルの執拗なまでの連続アタックを耐えきったファンデルプールは、逆にカウンターアタックをお見舞い!!

一瞬離されかけるポガチャル、しかしここはしっかりと付いていく!!

そのまま2人でポッジオを通過、そしてガンナも10秒ほど遅れてダウンヒルに突入。

これは…ガンナもなんとか合流できそうか。

 

残り1kmを切って、平坦区間で若干の牽制状態になっていた先頭の2人に、ガンナが合流。

ファンデルプール、ポガチャル、ガンナ、3人でのスプリント勝負だ…!!

残り500m、ファンデルプールの後方に位置していたポガチャルが、後方のガンナに位置を譲り、並びはファンデルプール、ガンナ、ポガチャルの順に。

一体誰が最初に仕掛けるのか、物凄い緊張感が漂う中…残り300m、ファンデルプールが早めにスプリントを開始!!

ガンナがその背中に付けない、そしてポガチャルもガンナの前に出る余力がない…!!

ファンデルプールの背中に、誰も近づけない!!

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ファンデルプール、2年ぶり2度目のミラノ~サンレモ優勝!!

この展開に持ち込めれば、その破格の出力に抗える選手なんている訳がない…!!

そしてアルペシンとしては、なんとミラノ~サンレモ3連覇!!

もはや、多くを語るまい。

強すぎるファンデルプール、そしてチームとして凄すぎるアルペシン。

圧巻の一言だ。

 

2位に入ったのは、これまた2年ぶりの2位となったガンナ。

ポガチャルのアタックに粘り強く対応し、少し離されながらもなんとか合流してからの、フィニッシュスプリントで2位は、これまたお見事。

「この日勝てた」かどうかはともかく、いつか勝っても何らおかしくないと評してよさそうだ。

 

そして、2年連続の3位となったポガチャル。

例年はポッジオで仕掛けていたところを、もう一つ前のチプレッサでアタックを仕掛ける、そのアイデアと気概。

またしても勝利には繋がらなかったけれども、これまた素晴らしかったとしか言いようがない。

その執念とまで呼べるほどの勝利への欲求は、間違いなくポガチャルの特大の魅力だ。

 

毎年言っているような気がするけれども…

コース終盤に設定されたチプレッサとポッジオという起伏、そして平坦なフィニッシュ。

起伏の難易度と位置、そしてテクニカルなダウンヒルに絶妙な距離感の平坦区間は、毎回激熱な展開を生み出してくれる。

終盤の濃縮された展開と予想のつかなさ、これは本当にミラノ~サンレモを特別なレースにしてくれている。

いや~、今回は明らかに「特別な展開」だったこともあり、とてつもなく面白かった!

ここから本格化していく春のクラシックシーズン、残りのレースも面白くなることを期待しようではないか!!

 

それでは、また!!

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おまけ

今日の1枚

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なんだかいつもより童顔に見えるファンデルプールの写真写り