必殺の一撃!
ヨーロッパに春を告げる「ラ・プリマヴェーラ」ことミラノ~サンレモ。
シーズン最初のモニュメントなのでもちろん今年も豪華なメンバーが出場…と言いたかったんだけれども、先日から続く新型コロナではない感染症の影響などで、ジャスパー・ストゥイヴェン(トレック・セガフレード)、カレブ・ユアン(ロット・スーダル)、ジュリアン・アラフィリップ(クイックステップ・アルファヴィニル)、サム・ベネット(ボーラ・ハンスグローエ)など、結構な数の有力選手が不出場なのは残念だ…。
とは言いつつ、それでも以下のような選手が出場すると思えばテンションは上がってくる!
- 2020年の覇者、異次元の脚質を持つワウト・ファンアールト(チーム・ユンボ・ヴィスマ)
- 最早誰にも止められない、どんなレースでも勝ってしまう絶対王者タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)
- 今大会がケガからの復帰初戦、「怪物」マチュー・ファンデルプール(アルペシン・フェニックス)
- 2017年の覇者、チームの誰もがエースになり得る豪華布陣で臨むミハウ・クフィアトコフスキ(イネオス・グレナディアーズ)
- 2016年の覇者、今大会で数少ないスプリンターの優勝候補アルノー・デマール(グルパマFDJ)
- 過去に2位が2回、抜群の勝負勘は健在のペテル・サガン(トタルエネルジー)
- 過去に3位が2回、登れるスプリンターの代表格マイケル・マシューズ(チーム・バイクエクスチェンジ・ジェイコ)
スプリンターよりもパンチャー系に有力候補が偏る中、自分の予想はこんな感じ。
ミラノ〜サンレモ予想
— kiwa (@kiwa2408) March 19, 2022
本命:ワウト
対抗:ピドコック
穴:ポガチャル
大穴:コカール
急遽欠場の選手が多くて、逆に迷う部分も…
とりあえず、今回はスプリンターのイメージがあまり湧かないというのが本音
果たして、誰(どこ)がどれだけポッジォを厳しくするか#MilanoSanremo #jspocycle #GCNjapan
恐らくスプリンターには厳しい展開になる今回、アシスト陣もかなりのメンバーを集めてきたファンアールトが小集団でのスプリントを制すると予想。
ちなみに、大まかな展開予想は以下の通り。
展開の予想…
— kiwa (@kiwa2408) March 19, 2022
UAEがポガチャルのためにチプレッサ・ポッジォでとんでもないペースを作るのはほぼ確実、ピュアスプリンターには厳しい
ユンボ(ワウト)としては願ったりで手を貸しかねない、ログラを連れてきたのがそこで活きる
耐え抜いた精鋭による小集団スプリントになる#MilanoSanremo #GCNjapan
ポガチャルが本気で勝利を狙ってくるなら、スプリント力ではファンアールトやその他パンチャー系に分があるので、独走しか選択肢が無い。
つまり、チプレッサかポッジオでとんでもないペースを刻み、登坂力勝負に無理やり持ち込んだ上で、不可避の一撃を繰り出そうとしてくるはず(実際、UAEはそういうメンバー構成になっている)。
そうすると、登れない選手は厳しくて、ポガチャルの独走になるか、生き残った選手での小集団スプリントの可能性が高いかなと…。
約300kmの長旅、逃げを選択したのは8人。
メイン集団は逃げに最大で7分程度のリードを許しつつ、ユンボやトレックがしっかりとペースをコントロール。
残り50km辺りから登場する「トレ・カーピ(3つの丘)」辺りから人数を減らし始めた逃げ集団を、しっかりと射程圏に捉えながらレースは進んでいく。
残り37km、優勝候補として名前も挙がるトム・ピドコック(イネオス)がこのトレ・カーピでメイン集団から遅れていく。
昨年末のシクロクロス世界選手権を制してから、ロードレースではイマイチな状態が続いていたけれども、まさかここで脱落するとは…。
残り30km、逃げとメイン集団のタイム差は約2分40秒、チプレッサ突入直前と言うこのタイミングで、なんとサガンが痛恨のメカトラブル…!
バイク交換をして集団復帰を目指すけれども、メイン集団のペースは上がっている…。
残念ながら、サガンのミラノ~サンレモはここで終わってしまった。
チプレッサに突入したメイン集団、まず先頭でペースを上げるのはUAEのオリヴィエロ・トロイア。
トッシュ・ファンデルサンド、ネーサン・ファンホーイドンク、クリストフ・ラポルトと強力なメンバーがファンアールトの前後を固めながら、引き続きハイペースを刻んでいく。
負けじとUAEはヤン・ポランツを集団先頭に上げて、更なるペースアップを試みる。
UAEは残り24kmからはダヴィデ・フォルモロに牽引を交代して、ハイペースを維持。
ファビオ・ヤコブセン(クイックステップ)を筆頭としたピュアスプリンター勢は、この辺りで次々と脱落していく…。
チプレッサの頂上通過時点で、メイン集団に複数選手を残せているのはユンボ(3人、ファンアールト、ラポルト、プリモシュ・ログリッチ)、UAE(3人、ポガチャル、フォルモロ、ディエゴ・ウリッシ)、バーレーン・ヴィクトリアス(3人、マテイ・モホリッチ、ダミアーノ・カルーゾ、ヤン・トラトニック)、グルパマ(2人、アルノー・デマール、カンタン・パシェ)、モビスター・チーム(2人、イバン・ガルシア、アレックス・アランブル)、イスラエル・プレミアテック(2人、ジャコモ・ニッツォーロ、クリス・ニーランズ)の6チーム。
あとは、クフィアトコフスキ、ファンデルプール、マシューズ、マッズ・ピーダスン(トレック)、セーアン・クラーウアナスン(チームDSM)、アントニー・テュルジス(トタルエネルジー)、フロリアン・セネシャル(クイックステップ)、ブノワ・コヌフロワ(AG2Rシトロエン)、ミケル・ヴァルグレン(EFエデュケーション・イージーポスト)、ビニヤム・ギルマイ(アンテルマルシェ・ワンティゴベールマテリオ)辺りが単騎で残っているのみ。
ピュアスプリンターが…ほぼいない。
デマール、ニッツォーロ、あとはピーダスンが一応スプリンターの括りかな?
チプレッサを超えたメイン集団は、そのままフォルモロが下りと平坦でも牽引を続行。
逃げとのタイム差を10秒弱まで縮めて、いよいよポッジオに突入していく。
残り9.2km、ポッジオに入ると集団の牽引を開始したのはラポルト。
逃げ残りの2人を吸収し、そのままペースを上げていく…と思ったら、残り8.6kmで先頭に上がってきたのはポガチャルを引き連れたウリッシ。
という事は…。
残り8.2km、ポッジオ頂上までまだ2.7kmの距離、登坂の終盤に訪れる急勾配区間を待たずしてポガチャルがアタック!
すぐさまその背中を捉えるファンアールト、そして少し遅れてファンデルプールやクフィアトコフスキも反応。
一旦捕まったポガチャルは、残り7.8kmでまたしてもアタック!
この動きもすぐさま捉えられるけれども、集団の後方は千切れそうになっている…!
残り7.4km、ポガチャルがまたしても加速!
ただ、立て続けのアタックに流石にキレを失ってきたか、あまり後続を引き離す事は出来ない。
そして、集団の後方では落車も起こっているぞ…!?
残り7.1km、今度はここまで静かに潜んでいたログリッチのアタック!
ここにはファンデルプールがすぐさま反応、ログリッチも無理には踏み続けない。
一旦ペースが緩み、千切れかけていた選手も多くが戻ってきたこのタイミングで仕掛けたのは…。
残り6.6km、ポガチャルがなんとこの日4度目のアタック!!
抜け出す以外に勝ち筋がほぼ無いとは言え、相変わらずとんでもなさすぎる…!
逆に言えば、抜け出しさえ阻止できればいいファンアールトは余裕の対応で、しっかりと追いつく事に成功。
残り6.4km、流石のポガチャルも一旦息をついたこのタイミングで、抜け出し巧者のクラーウアナスンがアタック!
そしてこの動きを逃す手はないポガチャルは、しっかりその背中を捉えて追随する!
2人で集団からの抜け出しには成功するけれども、少し間をおいてファンアールトとファンデルプールも追いついて来る!
そのまま4人でポッジオの先頭を通過、ただ後方の集団とのタイム差は僅か2秒!!
追走集団の先頭にいたモホリッチは、現役随一のダウンヒルテクニックを存分に発揮してすぐさま先頭に合流…と言うか、そのまま追い抜いて単独の先頭に!!
モホリッチはコーナーを攻めに攻めて、そのタイム差を少しづつ開いていく!!
そして、集団は若干牽制気味だ…。
これは…、昨年同様、ポッジオ下りでの飛び出しで決まってしまうのか!?
ポッジオの下りを終えて残り2.3km、モホリッチと集団のタイム差は6~7秒程。
追走集団はやはり牽制気味で、そのタイム差はあまり大きくは動かない!
最終コーナーを抜けて、集団からはテュルギスが単独で抜け出してモホリッチを追いかける!
ただ、モホリッチのペースも落ちない!!
残り250m、後方の集団がスプリントを開始するけれども、これは届きそうにない!
残り100mを切り、モホリッチは何度か後方を確認して…勝利を確信!!
鮮やかなダウンヒルでの一撃!!
モホリッチが独走でモニュメント初制覇!!
これは凄すぎる展開だ!!
恐らく多くの人が「ファンアールトとポガチャルによる争い」をイメージしていた中、自身の最大の武器を見事に活かし切って掴んだビッグタイトル!
なんと、「ドロッパーシートポスト」というマウンテンバイクなどでは一般的なダウンヒル用のアイテムまで駆使する、徹底した「ダウンヒル狙い」だった模様!
(J SPORTの中継で解説をしていた辻啓さんによるこの文章がとても分かりやすい)
現役随一のダウンヒル巧者が、ダウンヒル用の武器を引っ提げる、まさに鬼に金棒状態だった訳だ…。
また、この日もう一つ言及しておきたいのは、バーレーンのチーム力。
ポッジオ突入時に、モホリッチの他にカルーゾとトラトニックを残す事が出来ていたのは、かなり大きな意味があった。
あのアタック合戦(というかポガチャルによるアタック連発)の中でモホリッチを守る2人がいたからこそ、モホリッチは集団の先頭という最高のポジションで山頂を通過できたはず。
レース序盤でしっかり位置取りをしていた新城幸也選手も含めて、バーレーンのチーム力の高さは本当に光っていたと思う。
モホリッチのダウンヒルテクニックと独走力という個の力、周到な準備、そしてチーム力。
全てが噛み合っての、素晴らしい勝利だった!
モホリッチから2秒遅れて、2位に入ったのは単独で追走を試みたテュルギス!
エースのサガンをトラブルで失いつつも、最後まであきらめなかったその姿勢は素晴らしい!
そして、集団の先頭を取って3位になったのはファンデルプール!
いやはや、ケガによる長期離脱からの復帰戦とは思えないリザルトだ…。
語彙力を喪失するぐらいの面白さ
いや~、今年もミラノ~サンレモは面白かった!
「面白かった!」とか「興奮した!」とか「熱かった!」ぐらいしか言い表しようがないぐらい、本当に面白かった!
独走勝利を狙う為にチーム全体でペースを上げ、そしてポッジオで山岳ステージかと思うようなアタックの連続を繰り出したポガチャル。
決して本質的には彼向きではないこのレースにおいて、本気で勝利を目指すその姿。
そのポガチャルの動きを結果的に封殺(と同時に利用)して、ポッジオの頂上通過時までは理想的な展開でレースを進めていたファンアールト。
そして、狙い定めていた好機で必殺の一撃を放ち、見事勝利を掴み取ったモホリッチ。
最高の舞台での、最高のぶつかり合い。
最高に面白かった!
ここから本格的に始まる春のクラシックシーズンも、最高に面白いレースを期待したい!
それでは、また!!