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【レース感想】ブエルタ・ア・エスパーニャ2022 第18ステージ

王座への道

中盤に2級山岳を登った後に、1級山岳アルト・デル・ピオルナルを違うルートで2度登る山岳ステージ。

「違うルートで2度登る」と言いつつ、そのプロフィールは1度目が登坂距離13.6km・平均勾配5%、2度目が登坂距離13.3km・平均勾配5.6%と、正直なところほぼ変化はない感じ。

どちらも平均勾配が5%台と1級山岳としては全体的に緩いだけでなく、急勾配区間がほとんどないので、あまり総合争いが激しくならない可能性も…?

 

この日もアクチュアルスタート直後から、逃げ切りを狙う選手たちによる激しいアタック合戦が繰り広げられる中、事件が起こってしまう。

スタートから36km地点で大規模な落車が発生、巻き込まれた選手の中には、総合4位のカルロス・ロドリゲス(イネオス・グレナディアーズ)や、山岳賞ジャージを着るジェイ・ヴァイン(アルペシン・ドゥクーニンク)の姿が…。

ロドリゲスは激しい流血をしつつなんとかレースに戻ったけれども、ダメージは決して小さくないのがその傷や表情から見て取れる。

そしてヴァインは…残念ながらそのままリタイアとなってしまった。

その後出来上がった先頭集団の人数はなんと43人!

レースに残っている選手の約1/3が逃げに乗ると言う、まぁなかなか見ない展開に。

「強力な選手もかなり入っているし、予想通りこのまま逃げ切りだ」なんて思っていたら、メイン集団から総合6位のジョアン・アルメイダ(UAEチームエミレーツ)が抜け出しを図る!

そして逃げ集団からマルク・ソレルが降りて来てドッキング、アルメイダを逃げ集団まで引っ張り上げようと牽引を開始。

こうなると、一時は先頭に9分ものタイム差を許していたメイン集団もアルメイダを離しすぎないようにペースを上げ、タイム差はどんどん縮まっていく。

 

1度目のアルト・デル・ピオルナルで、先頭集団からセルヒオ・イギータ(ボーラ・ハンスグローエ)、ヒュー・カーシー(EFエデュケーション・イージーポスト)、ティボー・ピノ(グルパマFDJ)、リチャル・カラパス(イネオス)、ロベルト・ヘーシンク(チーム・ユンボ・ヴィスマ)、エリー・ジェベール(アルケア・サムシック)という強力な6人が抜け出しに成功。

この6人は追走集団に45秒ほどのタイム差を付け、ヴァインのリタイアで山岳賞の暫定首位に立ったカラパスを先頭として山頂を通過。

その後のダウンヒルで、追走集団は人数が多すぎる事も影響したのかペースが落ちたようで、先頭集団とのタイム差は拡大傾向に。

その結果、アルメイダとソレルが追走集団に合流を果たしたけれども、気が付けばメイン集団も40秒ほど後方にまで迫っている。

 

先頭の6人が2度目のアルト・デル・ピオルナルに突入、ソレルの一本引き状態が続いた追走集団とのタイム差は1分20秒、メイン集団はそこから更に40秒遅れという構図に。

残り12km、先頭集団からジェベールがアタックすると、ヘーシンクのみが追いかけて合流。

ヘーシンクは残り6.4kmでアタックを繰り出すと、ジェベールを振り払って独走を開始!

 

その頃メイン集団では、レムコ・エヴェネプール(クイックステップ・アルファヴィニル)がアタックを仕掛けて一気にアルメイダのいるグループに合流!!

他の総合上位勢も流石に追いついてきたけれども、ちょっとえげつないぐらいの勢いで加速したエヴェネプール、2週目に少し低調だったコンディションがしっかりと回復しているように見える。

この新たなメイン集団を牽引するのは、マスのアシストであるネルソン・オリベイラ(モビスター)。

マスは総合逆転に向けてどこかで攻撃を仕掛けたいところだけれども…。

 

残り5km、先頭は依然ヘーシンクが単独、20秒ほど離れてカラパス、ピノ、ジェベールの3人。

メイン集団も、気が付けば先頭から50秒の位置にまで近づいている。

残り4.2km、オリベイラのリードアウトを受けてマスが加速するけれども、エヴェネプールは難なく反応。

マスは諦めずにその後も何度かアタックを見せ、そしてエヴェネプールはその都度しっかり付いていく。

 

ヘーシンクが残り3kmのアーチを通過、メイン集団は僅か30秒後方、逃げ切れるかかなり際どくなってきた…。

メイン集団も残り3kmのアーチを通過すると…エヴェネプールがアタック!!

決定的な一撃を与えようとしている感じではなく、なんだか様子見をしている感もあるアタックだけれども、ペダリングが軽い…!

 

残り1km、ヘーシンクは未だ20秒のリードを確保…いや、もう20秒しか残っていないと言うべきなのか?

その直後、メイン集団でアタックを仕掛けたのはマス!!

エヴェネプールを引き千切ろうとマスはなかなかその踏みを止めない、そしてエヴェネプールは…しっかりとその背中に張り付いている!!

残り400m、遂にマスとエヴェネプールがヘーシンクに追いつく!

残り200m、今度はエヴェネプールがアタック!!

マスは反応するけれども、全てを出し尽くした感のあるヘーシンクは無情にも置いていかれてしまう…。

エヴェネプールは前だけを見据えて踏み続け、なんとマスも引き離していく!!

両腕を力強く掲げ、最後は雄叫びを上げながらのフィニッシュ!!

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王座への道は自ら切り開く!!

マスの猛攻撃を全て受け止めたエヴェネプール、最後は逆に2秒差を付ける圧倒的な強さを見せつけて、今大会ステージ2勝目!!

これでまた、総合優勝が一段と近づいてきた!!

2週目にコンディションを少し落として心配されていたけれども、そんな声は完全に払拭!!

総合勢でマス以外は完全に置き去りにし、最後は唯一食らいついたマスをも突き放す、圧巻の走り!!

もはや風格すら漂わせ始めたその強さは、完全に王者のそれだ。

残す総合争いの舞台は第20ステージのみ。

いざ、マドリードでの戴冠に向けて。

エヴェネプールの快進撃は止まらない!