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【レース感想】ブエルタ・ア・エスパーニャ2022 第21ステージ

最後の最後まで見逃せない結末!

いよいよやってきたブエルタの最終ステージ。

昨年と違い、2年ぶりにマドリード周回コースでのラインレースでの開催に。

パレードランからの平坦スプリント、やはりグランツールはこうでなくては。

 

スタート前、今シーズン限りでの引退を表明している2人のレジェンド、アレハンドロ・バルベルデ(モビスター・チーム)とヴィンチェンツォ・ニバリ(アスタナ・カザクスタン・チーム)のための花道が作られ、2人の最後のグランツール出走を選手たちが祝福する。

2人とも引退までにまだいくつかのレースには出場予定だけれども、こういうシーンを見ると、来シーズンからはその走る姿を見られないのだと改めて実感させられる。

 

レースがスタートすると、恒例の写真撮影タイムに突入。

まずは、総合優勝を飾ったレムコ・エヴェネプールと、偉業を支えたクイックステップ・アルファヴィニルの仲間たち。

ジュリアン・アラフィリップとピーター・セリーを途中で失いながらも、総合リーダーのエヴェネプールを献身的に支え続け、チーム結成以来初のグランツールを成し遂げる事が出来た。

ワンデーレースの盟主たるこのチームが、来シーズン以降どのような目標を定めて来るのか、興味は尽きない。

 

続いて、総合トップ3が笑顔で肩を組んでの一コマ。

エヴェネプールが22歳、総合2位のエンリク・マス(モビスター・チーム)が27歳、そして総合3位のフアン・アユソ(UAEチームエミレーツ)はなんと19歳!

間違いなくロードレース界は世代交代がもの凄いスピードで進んでいると、改めて実感させられる総合トップ3だ。

 

そしていよいよマドリードの周回コースに突入。

ファーストアタックを誰が決めるのかと思っていたら…なんとバルベルデが単独で行くではないか!!

袖にあしらわれた世界選手権王者の証である虹色のライン、そしてプロ通算133勝という偉大なキャリアを称える特別ジャージ。

スペインの英雄は、万雷の拍手をその身に浴びながら、悠々とマドリードの中心部を駆け抜ける。

 

バルベルデが吸収されると、いよいよレースは本格的にスタート!

まずは中間スプリントポイントに設けられたボーナスタイムを目指して、イネオス・グレナディアーズがカルロス・ロドリゲスを率いて加速を見せる。

総合7位のロドリゲスは、総合6位のティメン・アレンスマン(チームDSM)と僅か1秒差なので、一つでも順位を上げようという動きだ。

ただ、ロドリゲス自身が怪我の影響で思うようなスプリントが出来なかった事、そしてDSMのアシストがしっかりとボーナスタイム獲得を阻害した事で、順位の変動は起こらず。

それでも、最後の最後まで最善を尽くそうとしたこの動きは、本当に素晴らしかったと思う。

 

その直後、メイン集団から飛び出したのはルーク・プラップ(イネオス)とジュリアス・ヨハンセン(アンテルマルシェ・ワンティゴベールマテリオ)という若手2人。

そのまま2人は快調に、メイン集団とのタイム差を最大で25秒ほどにまで広げていく。

 

残り10km、未だに先頭の2人は20秒ほどのリードをキープ。

メイン集団がペースを上げれば問題なく捕まる気もするけれども、鋭角なコーナーや折り返しが繰り返されるこの周回コース、そしてプラップの独走力を考えると、あまり悠長に構えていると結構危うい気も…?

残り5km、さすがにタイム差は10秒にまで縮まってきたけれども、先頭の2人もまだ諦めていない!

残り3km、集団がやっと吸収…と思った瞬間、折り返しを利用して先頭の2人が再加速!!

プラップは集団との差が少し開いた事を確認すると、にやりとほくそ笑む。

自信があるのか、それともこのシチュエーションを楽しんでいるのか。

いずれにしても、最高に面白い展開だ!

 

残り1km、遂に先頭の2人が吸収される!

メイン集団は2人を必死に追いかけた結果、しっかり隊列を組めているチームがほとんど無い、なかなかカオスな状況に!!

そんな中、唯一4人でトレインを組めているのはUAEだ!

ここまでのステージではトレインが噛み合わなかったUAE、最後の最後でしっかりと整えてきた!

残り500m、先頭のUAEはアシストが1人剥がれて3人での隊列、その背後にはアシストを1枚残したマッズ・ピーダスン(トレック・セガフレード)が虎視眈々と機を窺っている!

最終コーナーを抜けて残り200m、ピーダスンがスプリントを開始する一方で、UAEはフアン・モラノが全力でのリード・アウト、その背中にはエースのパスカル・アッカーマン!

残り100m、未だにモラノが先頭!

…ん!?

アッカーマンが前に出る気配が無いぞ…!?

そのままモラノが先頭で残り50mを通過、ピーダスンが横に並ぼうともがく、アッカーマンもやっとモラノのスリップストリームを離れて踏み込みを見せるけれども…!?

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なんという結末!!

リードアウト役のモラノが最後の最後まで先頭を譲らずにそのままステージ勝利!!

…なんじゃそりゃ!?

モラノを褒めていいのか、アッカーマンの伸び無さを嘆けばいいのか…。

ひとまずアッカーマンの事は置いておいて、ピーダスンに最後まで前を譲らなかったモラノのスピードは本当に素晴らしかった!

モラノは来シーズンの契約がまだ無い状態だけれども、このグランツール初勝利があればどこかでチャンスは貰えそうだ!

 

そして、マイヨ・ロホを身に纏ったエヴェネプールも無事にフィニッシュ!!

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エヴェネプール、弱冠22歳でのグランツール初制覇!!

開幕前はグランツールへの適性を疑問視する声も根強かったけれども、圧巻の内容、そして最高の結果でその力を証明して見せた!!

圧倒的なタイムトライアル能力、ライバルを絶望に突き落とす山岳での高速ペース走アタック、そして3週間を通した戦い方。

絶好調だった1週目にリードを築き、落車の影響もあって調子を崩した2週目も傷口を最小限に留め、3週目にはまた調子を戻してライバルを更に突き放す、3週間を通しての戦い方が抜群に素晴らしかった!

また、総合系チームではないという事でエヴェネプールを守るチーム力も不安視されていたけれども、イラン・ファンウィルデルやルイス・フェルファーケを中心にどの選手も素晴らしい働きを見せた事も見逃せない!

ウルフパックの新しい姿、本当に素晴らしかったと称賛したい!!

おめでとうクイックステップ!!

おめでとうエヴェネプール!!

 

ブエルタらしい激熱な3週間!!

改めて、最終成績を確認したい。

 

総合優勝はエヴェネプール!!

いや~、強かった!!

度々見せた「高速ペース走アタック」には本当に痺れたし、3週間を通しての安定感は完全に王者の強さだった!!

改めて、その破格な才能を証明する3週間、そして来シーズン以降に新たな期待を抱かせてくれる走りだったと評したい!

 

総合2位のマスは、これが自身3度目のブエルタ総合2位に。

安定しているとも言えるし、総合優勝には一歩足りないとも言える、なんとももどかしい結果…なのかもしれない。

ただ、タイムトライアルでのタイム差を除くとエヴェネプールを逆転する計算…、つまり大会を通して山岳ステージで最も良いタイムだったのはマス…という事に。

そして何より、最後まで逆転を目指して攻め続けたその走りは、昨年と比べてマスの成長を大きく感じさせるものだったと思う。

 

総合3位は、グランツール初出場のアユソ!

強いとは思っていたけれども、既にこのレベルの完成度とは…!

多少の浮き沈みはありつつ、最後まで大崩れしなかった事は、末恐ろしいと言うかなんと言うか…。

スペインの未来を背負う19歳、これからの更なる活躍を楽しみにしたい!

 

ポイント賞はピーダスン!!

第8ステージでマイヨ・プントスを獲得すると、そこからステージ3勝を挙げて、圧倒的な差でのポイント賞獲得に!

登りスプリントでは圧倒的、平坦スプリントでも常に上位と、3週間を通して非の打ち所が無かった。

元世界王者の肩書はやはり伊達ではないと、改めて証明してくれた3週間だった。

 

山岳賞はカラパス!

コンディション不良で総合争いからは早々に脱落してしまったけれども、2週目以降はその圧巻の登坂力でステージ3勝と暴れ回っての山岳賞獲得!

やはり、クライマーとしての格は間違いなく世界トップクラス。

EFエデュケーション・イージーポストに移籍して迎える来シーズンも、活躍に期待したい。

 

総合敢闘賞は、地元スペインのソレル!

積極的に逃げに乗り、ステージ1勝の他に1桁順位フィニッシュが3度、そして要所ではアユソやジョアン・アルメイダをしっかりアシスト。

3週間を通してひたすら目立っていた印象なので、この選出はとても納得だ。

モビスターでは「エース候補」として苦しんでいた印象だったけれども、UAEへの移籍は本当にいい転機になったと思う。

 

チーム総合賞は、UAEチームエミレーツ

総合3位にアユソ、総合5位にアルメイダと総合トップ10に2人送り込み、更には随所でソレルが上位フィニッシュをした結果、2位のイネオスに55分もの差を付けてのチーム総合賞受賞に。

数年前までは「チーム力が課題」なんて言われていたのが信じられないぐらい、本当に強くなったと思う。

 

これにて、今年のグランツールは全て終了。

情熱の国スペインを舞台としたブエルタ、今年も本当に熱くて面白いレースだった!!

どの選手もアグレッシブな走りを見せて、最後の最後まで全力を出し尽くして激闘を繰り広げるその姿…。

これこそ、レースに求める「熱さ」だと言いたい!

 

さあ、ブエルタが終わってもまだロードレースシーズンは終わっていない。

次は国同士のプライドを懸けた戦い、オーストラリアで開催される世界選手権だ!!

9/18の個人タイムトライアル、そして9/25のロードレース、どちらも全力で楽しんでいきたい!!

 

それでは、また!!

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