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【レース感想】ツール・ド・フランス2024 第21ステージ

最後の最後まで…!

第21ステージは、モナコを出発してニースにフィニッシュする、登り要素の強い33.7kmの個人タイムトライアル。

最終日がスプリントではないのは35年振り、そしてパリがフィニッシュ地点でないのは、なんとツール史上初。

異例づくしの最終日、はたして勝者は誰になるか。

 

序盤の出走で好タイムをマークしたのは、レニー・マルティネス(グルパマFDJ)。

レニー・マルティネスはホットシートに1時間以上居続けたけれども、同じくクライマータイプのアロルド・テハダ(アスタナ・カザクスタンチーム)がタイムを更新。

登り要素の強いレイアウトに適性のある選手はやはり少なく、その後はトップタイムを更新する選手がなかなか現れず、気が付けば総合上位陣の出走が迫っている。

 

総合上位で順位が変動したのは、総合11位と総合10位。

タイムトライアルを苦手とするジュリオ・チッコーネ(リドル・トレック)を、ステージ9位となる好タイムを記録したサンティアゴ・ブイトラゴ(バーレーン・ヴィクトリアス)が抜いて、総合10位へ順位を上げる。

続いて出走した総合9位のデレク・ジーイスラエル・プレミアテック)は、テハダのタイムを更新する好走を披露。

このジー以降…つまり総合トップ8人は、その内の6人がテハダを上回る結果に。

やはり総合上位に位置付けるには、登坂力とタイムトライアル能力がバランスよく備わっていないといけないのだろう。

 

その中でも別格の走りを見せたのは、やはり今大会を沸かせた総合トップ3。

まずは、個人タイムトライアル世界王者のレムコ・エヴェネプール(スーダル・クイックステップ)。

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初出場となるツールで、ステージ1勝を挙げてのこの順位、そして3週間を通しての戦いぶりは、大いに誇れるものだろう。

もう、「長い登坂や激坂は不安」だとか「3週間の安定感は未知数」などという雑音は、完全に過去のものだ。

この24歳の若者は、今回の3週間の経験を力に変えて、きっと更に強くなって帰ってくる。

 

続いて、総合2位のヨナス・ヴィンゲゴー(チーム・ヴィスマ・リースアバイク)。

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3連覇とは、ならなかった。

それでも、この誇り高き王者の走りは、決してその評価を下げるようなものではなかったはずだ。

怪我明けでコンディションに苦しみながらも、ステージ1勝をもぎ取り、そして最後まで勝利を諦めずに戦い続けるその姿。

改めて、何と強い選手なのだろうと思わされる、そんな走りだった。

 

そして最後はもちろんこの人、3年ぶりにマイヨ・ジョーヌを着て最終日を走る、タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)。

ライバルを圧倒した今大会を象徴するように、最終日も完膚なきまでにその強さを見せつける。

ステージ2位のヴィンゲゴーに1分3秒もの差を付けて、ステージ勝利を片手で収まらない数にまで伸ばす、圧巻の走り。

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2024年のツールは、まさにポガチャルの大会…!!

3年振り3度目の総合優勝に自ら花を添える、ステージ6勝目!!

直近2年の敗戦を糧に、更なる強さをその身に宿して、鮮やかに王座奪還!!

おめでとう、ポガチャル!!

 

形容や、修飾する言葉なんて、意味を成さない。

見ていた人には、もう十分すぎるぐらい伝わっているはずだ。

まさに、最強。

ただただ、強かった。

きっとここから、新たなポガチャルの伝説が始まる。

そう思わざるを得ない、圧倒的な3週間だった。

 

とてつもない満足感

改めて、最終結果を確認。

  • 総合優勝:タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ
  • 総合2位:ヨナス・ヴィンゲゴー(チーム・ヴィスマ・リースアバイク)
  • 総合3位:レムコ・エヴェネプール(スーダル・クイックステップ
  • ポイント賞:ビニアム・ギルマイ(アンテルマルシェ・ワンティ)
  • 山岳賞:リチャル・カラパス(EFエデュケーション・イージーポスト)
  • ヤングライダー賞:レムコ・エヴェネプール(スーダル・クイックステップ
  • 総合敢闘賞:リチャル・カラパス(EFエデュケーション・イージーポスト)
  • チーム総合賞:UAEチームエミレーツ

 

ポガチャルは、3年振り3度目のツール総合優勝!

ステージ6勝に、総合2位とのタイム差6分17秒と、ジロ・デ・イタリアに続いて圧倒的な数字!

強力なチーム力も存分に活かして、まさにツールを制圧していたと言っていい走りだった。

そして、同年のジロとツールを連続で制する「ダブルツール」を、26年ぶりに達成!

そもそも、年間2度のグランツール出場自体が自身初めての挑戦だったのに、こうも余裕をもってダブルツールをやってのけてしまうのだから…本当に恐ろしい限りだ。

 

ヴィンゲゴーは3連覇こそ逃したけれども、堂々の総合2位!

4月の落車で重傷を負って、ぶっつけ本番でツールに臨んでこの結果なのだから、これまたポガチャルとは別ベクトルで恐ろしい話ではある。

終盤に若干の失速を見せた際には本人も調整不足を認めたけれども、第20ステージで攻撃してきたエヴェネプールに手痛い反撃を見舞うなど、やはりその強さは尋常ではない。

来年は是非とも、なにもエクスキューズが付かない万全な状態で、覇権奪回に挑んでほしいところだ。

 

ツール初出場のエヴェネプールは、総合3位でしっかりと総合表彰台の座を獲得!

2022年にはブエルタ・ア・エスパーニャを制していながら、どうしても「グランツール向きではない」といった評価をされがちだったけれども、今後はそんな雑音もほぼなくなるはずだ。

3週間を通しての登坂の安定感、ステージ勝利を挙げたタイムトライアル能力、そしてチャンスをうかがう姿勢と、間違いなく「挑戦権」は有していると証明できた3週間と言っていいだろう。

まだまだ成長途中、今後が本当に楽しみで仕方がない。

 

ポイント賞を獲得したのは、エリトリアの新星ギルマイ!

ステージ3勝だけでなく、ほとんどのスプリントステージで上位に入る安定感を見せて、見事にマイヨ・ヴェールを獲得!

昨年まではもう少しパンチャー寄りの選手かと思っていたけれども、今大会で見せたスプリント能力は完全にスプリンターのそれだった。

「登れるスプリンター」として、現役を代表する選手になっていきそうだ。

 

カラパスは、山岳賞と総合敢闘賞を同時受賞!

残念ながら総合争いからは早々に脱落してしまったけれども、逆にその立ち位置を活かして積極的に逃げに乗り、ステージ1勝を挙げたのは流石の一言。

最後まで際どい争いだった山岳賞をしっかり獲得する辺り、やはりこの選手の登坂力と勝負勘は素晴らしい。

 

レースを完全に掌握したUAEは、チーム総合賞も獲得!

ポガチャルを筆頭に、ジョアン・アルメイダが総合4位、アダム・イェーツが総合6位と、総合トップ10に3人送り込むのだから、やはり明確に他のチームより優秀な山岳アシストを揃えていたのは間違いない。

そしてもう1人言及しておきたいのは、唯一の平坦系ルーラーとしてメンバー入りしていたニルス・ポリッツ。

平坦区間をほぼ1人で牽き切るだけでなく、超級山岳や1級山岳でも高速ペースを刻むという、質・量ともにとんでもない仕事をこなしていた。

実は、開幕前は「編成が山岳アシストに偏りすぎていないか…?」と心配もしていたのでけれども、それをポリッツが1人で解決したからこそのポガチャルの輝きであり、チーム総合賞獲得だったはずだ。

 

今回のツールは、「ポガチャルの圧倒的な活躍」が目立ったのは間違いない。

ハイレベルな「ビッグ4」の争いを、その中でも更に別格な強さで圧倒したポガチャルの走りは、それだけでツールを見る価値があるような、とてつもなく素晴らしいものだった。

それでもそれと同時に、その他にも印象的なシーンが多くあったのもまた事実だ。

第1ステージ、最後のツールとなったロマン・バルデ(チームDSMフェルミニッヒ・ポストNL)による、ステージ勝利と初のマイヨ・ジョーヌ着用。

現役を1年延長して挑戦した、マーク・カヴェンディッシュ(アスタナ)のツール歴代最多勝更新。

ワールドチーム所属経験のないアントニー・テュルジスが成し遂げた、トタルエネルジーにとって14年ぶりとなるツールのステージ勝利。

逃げ屋に転向した「元・世界最速の男」ヴィクトル・カンペナールツによる、渾身の逃げ切り勝利。

その他にもここでは書き切れないぐらい、本当に多くの素晴らしいシーンがある、いつにもまして濃密な3週間だったように思う。

 

もしかしたら、「ポガチャルが強すぎる」のを心配する声があるかもしれない。

特定の選手が強すぎると、レースがつまらなくなる可能性があると、そんな声があるかもしれない。

でもきっと、今回のツールをしっかり見た人なら、そんな心配をする必要はないと気が付くはずだ。

今回のツールはとてつもなく面白かったと、きっと多くの人が感じているはずだ。

選手、チームスタッフ、レース関係者など、ツールに関わった多くの人に、賛辞と感謝を。

本当に、今年のツールは素晴らしかった。

素晴らしい3週間を、ありがとう。

 

熱く、美しく、時に少し切ない、そんな思い出を胸に、これからもロードレース観戦を楽しんでいこうではないか!

それでは、また!!

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