初心者ロードレース観戦日和

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【レース感想】ツール・ド・フランス2020 第21ステージ

オー・シャンゼリゼ

歴史に残る激闘(【レース感想】ツール・ド・フランス2020 第20ステージ - 初心者ロードレース観戦日和)から一夜明け、ツール・ド・フランス一行は遂にパリに到着!

最終日となる第21ステージ開始前の独特の空気、そして始まるパレードラン!

 

勝者の証であるマイヨ・ジョーヌを身に纏うのは、伝説として語り継がれるであろう走りで頂点に立ったタデイ・ポガチャル。

まだ21歳の初々しい王者を祝福しようとまず近づいてきたのは、無念の敗北となってしまったプリモシュ・ログリッチ

前日は大逆転の敗北を喫してしまい茫然自失といった様子だったけれども、この日は穏やかな笑顔を浮かべていて、見ているこちらもなんだか嬉しくなってくる。

そして、自分を打ち負かした若き同胞と肩を組みながら言葉を交わし、お互いの健闘を称え合うその姿は、強く、そして美しく見えた。

 

続いて、今回のツールに出場している5人のスロベニア人が全員集まり、ポガチャルを祝福!

こうして改めて見てみると、スロベニアは人口200万人の小国ながら総合ワン・ツーのポガチャルとログリッチの他にも、マテイ・モホリッチ、ヤン・ポランツ、ルカ・メスゲッツと、かなりの実力者が揃っているというのは、なかなか凄い事だな…。

 

そしてもちろん、恒例の総合優勝を勝ち取ったチームでの隊列走行も!

思い返せば、第1ステージで勝利して最初にマイヨ・ジョーヌに袖を通したのも、UAEチームエミレーツのアレクサンダー・クリストフだった。

比較的早い段階で山岳の主戦力2人が離脱して、途中は少し苦しい戦いになったものの、終わってみればステージ4勝と総合優勝という最高の結果に!

 

例年通りアクチュアルスタート後もパレード走行をして、いよいよシャンゼリゼの周回コースへ突入!

逃げを試みる選手の中には、なんとミハウ・クフィアトコフスキーの姿が!

意外な気もしたけれども、冷静に考えれば今年のチーム・イネオスは総合優勝者を抱えていないのだから、逃げようがスプリントをしようが自由だ。

活き活きと逃げようとするその姿には、解放感と同時に一流選手としての矜持のようなものも感じられて、少し胸が熱くなる。

何度かの吸収を経て形成された逃げは、グレッグ・ファンアーベルマート、マクシミリアン・シャフマン、ピエールリュック・ペリション、コナー・スイフトの4人。

そして中間スプリントポイントでは、メイン集団の先頭でサム・ベネットが通過し、それに対してペテル・サガンはポイント獲得に参加しなかったため(前日にインスタグラムで「敗北宣言」をしていた模様)、この時点でベネットのマイヨ・ヴェール獲得が決定!

 

残り4km程で逃げは吸収され、今年のツール最後の戦いとなるスプリント勝負に向かってメイン集団は加速していく!

残り2km、「最強」ドゥクーニンク・クイックステップがカスパー・アスグリーン、ミケル・モルコフ、サム・ベネットという完璧な形を整えている。

スグリーンが牽引を終え、最終コーナーを過ぎると今度はモルコフが猛加速を開始、この背後にトレック・セガフレードのジャスパー・ストゥイベンとマッズ・ピーダスンの2名が割り込み、そしてその後ろにはベネット。

ピーダスンが発射されるとほぼ同時に、その反対側からベネットもスプリントを開始!

ベネットは軽々とピーダスンを追い抜かし、後方から追いかけるペテル・サガンやエリア・ヴィヴィアーニも距離を詰められない!

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サム・ベネット、「最強の証」マイヨ・ヴェールに恥じぬ完璧なスプリント勝利!!

これで、シャンゼリゼを含むステージ2勝にマイヨ・ヴェール獲得と、今大会の最強スプリンターは文句なしにベネットだ!

ボーラ・ハンスグローエ在籍時はサガンがいたために輝き切れなかった男が、エース待遇を求めてボーラを離れ、そしてサガンマイヨ・ヴェール獲得を阻止するという、なんという出来すぎな話だろうか…!

そして、ツール完走8度目にして、初めてマイヨ・ヴェールが獲得できなかったサガン

今シーズンは未だに勝利を上げられていないけれども、「世界最強」の看板を下ろすのはまだ早いはず。

初参戦となるジロ・デ・イタリアでの大暴れを期待したい。

 

戦いを終えて

改めて、最終リザルトを確認。

  • 総合優勝:タデイ・ポガチャル
  • 総合2位:プリモシュ・ログリッチ
  • 総合3位:リッチー・ポート
  • ポイント賞:サム・ベネット
  • 山岳賞:タデイ・ポガチャル
  • ヤングライダー賞:タデイ・ポガチャル
  • 総合敢闘賞:マルク・ヒル
  • チーム総合賞:モビスター・チーム

総合優勝おめでとう!ポガチャル!!

戦後最年少の総合優勝となるポガチャルが、圧巻の三冠。

このツール閉会翌日に22歳となる若き王者は今大会最強のクライマーでもあり、その才能の天井は誰にも分からず、一体今後どんな結果を積み重ねていくのだろうか。

そして、エガン・ベルナルやレムコ・エヴェネプールなどと共に、どんな新しい時代を築き上げるのだろうか。

 

そして今大会を最も支配していたログリッチは無念の、しかし誇るべき2位となり、そしてスロベニア人によるワンツーフィニッシュを達成。

この2年間、王者となれる資質は十分に証明したと思う。

この安定感とチーム力なら、チャンスはまたすぐに巡ってくるはずだ。

 

リッチー・ポートはこれまでの不運を乗り越えて、35歳にして悲願の初登壇。

決して大きく遅れなかった安定感も大きかったけれども、第20ステージでの走りはまさに彼のレース人生の集大成と言える、最高の力走だった。

 

遂にサガンの時代に終止符を打たベネットは、強みである常に上位に顔を出す安定感をしっかりと披露。

今後しばらくはトップスプリンターとして結果を残し続けるはずだ。

 

見事な連携を披露してステージ3勝を飾ったチーム・サンウェブ、その象徴とも言えるような存在だったヒルシ。

そのパンチャー寄りのオールラウンドな能力は、今後ステージレースでもワンデーレースでも、また熱い走りを披露してくれるだろう。

 

チーム総合賞を獲得したモビスターは、大ベテランのアレハンドロ・バルベルデは個人総合トップ10入りを逃したけれども、スペイン期待の若手エンリク・マスがどのステージでも大きく遅れない安定感を披露して5位に入りランクイン。

転換期を迎えているチームとしては大きな収穫となったはずで、世代交代が予想以上にスムーズに進むかもしれない。

 

開催すら危ぶまれたはずのツール・ド・フランスは、見事に21日間の行程を完走。

正直に言って、無事にパリまでたどり着くとは思っていなかったから、本当に嬉しくてたまらない。

この3週間、その風景に、選手の走りに、激闘の結果に、人間模様に、本当に心を動かされる日々だった。

間違いなく、今までのグランツールでは感じた事のない感情を味わう、自分にとって特別な3週間だった。

振り返れば素晴らしい瞬間がたくさん思い出されるけれども、やっぱりこの表彰台の光景はグッとくる。

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ポガチャルの初々しい笑顔、ログリッチの穏やかな笑顔、そしてポートの感慨深げな笑顔。

そのどれもが素晴らしく、この3週間を追いかけ続けて、本当に良かったと思えた。

素晴らしい瞬間を、素晴らしい3週間をありがとう。

やっぱり、ロードレースは他のスポーツと何か違う、特別な魅力を持っている。

これからもずっと応援し続けたい。