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【レース感想】ツール・ド・フランス2022 第16ステージ

ピレネー3連戦開幕

今年のツールもいよいよ3週目に突入、その幕開けはピレネー山脈3連戦。

その初戦は、2つの1級山岳を越えてから、長いダウンヒルを経てのフィニッシュという、まさに山岳逃げ切り向けのレイアウト。

ただ、2つ目の1級山岳ミュール・ド・ペゲール(登坂距離9.3km・平均勾配7.9%)は、頂上の3kmほど手前に18%というとんでもない急勾配を含む難所。

総合勢の動きがあっても、何ら不思議ではない。

 

逃げ向きのレイアウトという事で、アクチュアルスタート直後から次々とアタックが掛かり、出来上がった逃げ集団は32人と言う超大規模なサイズ。

ステージを狙う選手の他にも、山岳賞争いトップに立つシモン・ゲシュケ(コフィディス)の姿も。

そして、総合勢で前待ちの可能性を睨む選手も、チーム・ユンボ・ヴィスマのワウト・ファンアールトとネイサン・ファンホーイドンク、ブランドン・マクナルティ(UEAチームエミレーツ)、そしてダニエル・マルティネス(イネオス・グレナディアーズ)と、総合上位3チームから入っている。

 

ユンボがコントロールするメイン集団は、完全に逃げ切り容認モード。

序盤はあまり動きのない平穏な展開が続く中、UAEの重要な山岳アシストであるマルク・ソレルが体調不良を抱えていたようで、メイン集団から大きく遅れる展開に。

ソレルはなんとか完走はしたけれども、タイムアウトで無念のリタイアとなってしまった。

 

1つ目の1級山岳に入ると、先頭集団からダミアーノ・カルーゾ(バーレーン・ヴィクトリアス)がアタック。

ここに遅れて飛び乗ったのがマイケル・ウッズ(イスラエル・プレミアテック)とマイケル・ストーラー(グルパマFDJ)の2人。

更に、頂上の1kmほど手前では、山岳賞キープの為にペースを上げたゲシュケと共に、ファンアールト、マクナルティ、マッテオ・ヨルゲンセン(モビスター・チーム)が先頭に合流する。

ゲシュケはそのまま山頂を先頭で通過して、ひとまずこの日の最低限の目標は達成。

その後、ダウンヒル区間で数名が追いつき、人数を増やしながら最後のミュール・ド・ペゲールを目指す事に。

 

先頭から7分ほど後方を走るメイン集団では、「とにかく登りでアタックする」と宣戦布告していた総合2位のタデイ・ポガチャル(UAE)が宣言通りに2度のアタック、更にはダウンヒルに入った瞬間にも奇襲気味のアタックをを繰り出す!

この動きに付いていけるのは、総合首位のヨナス・ヴィンゲゴー(ユンボ)のみ!

ただ、ヴィンゲゴーを剥がせなかったのでポガチャルは一旦脚を緩めて、後続集団も追いついて来る展開に。

 

1級ミュール・ド・ペゲール突入前後で先頭集団から飛び出したのは、ダウンヒルで追いついてきていたユーゴ・ウル(イスラエル)。

ウルは問題の急勾配区間も順調にこなす一方、追走集団はここで次々と脱落していく…。

追走集団で生き残ったのは、ヨルゲンソンとウッズの2人。

イスラエルは先頭にウル、追走にウッズという、ステージを狙う上で最高の形でダウンヒルに突入していく。

 

メイン集団も、ラファウ・マイカUAE)やセップ・クス(ユンボ)が強力な牽引を見せた事で、やはりこの難所で脱落者が…。

まずは、総合4位のロマン・バルデ(チームDSM)、これは明らかなバッドデイだ…。

チーム総出で引っ張り上げようと頑張るけれども、ズルズルと遅れてしまう。

そしてなんと、イネオスの2人、総合3位のゲラント・トーマスと総合5位のアダム・イェーツも遅れていく…!?

しかしそれでも、この局面でアダム・イェーツは限界までトーマスを引っ張り上げてから離脱するという、素晴らしいアシストを披露。

更には、山頂通過後には逃げから降りてきた(と言うか、完全に待っていた)マルティネスがトーマスを牽引して、なんとかメイン集団に合流して事なきを得る。

ちなみに、この段階でメイン集団を牽くのは…ファンアールト。

ファンアールトもマルティネス同様、完全に脚を止めて待っていた模様。

万が一ヴィンゲゴーが遅れたとしても、ファンアールトが牽いて合流させるという、ユンボの見事な戦略だった。

 

先頭のウルが30秒ほどのリードを保ちながら順調に下っている状況で、なんと追走のヨルゲンソンはコーナーで落車してしまう…!?

幸い、大きなケガなどはなかったようで、すぐさま走り直したけれども…この時点で万事休す。

リードを1分以上に拡大したウルが、フィニッシュまでの距離を着実に縮めていく!

 

ウルは180度のヘアピンコーナーを抜けて改めて勝利を確信すると、残り100m辺りから大きなガッツポーズを見せる!

天を指差しながら、感極まったような表情でのフィニッシュ!!

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実績のある選手たちを引き離しての見事な独走!!

プロ通算3勝目となる、ワールドツアー初勝利!!

ウルの過去の勝利は、カナダ国内選手権個人タイムトライアルでの2つのみ。

ラインレースでの初勝利を、まさかツールと言う大舞台でやってしまうとは!

また、フィニッシュ時の天を指差すポーズは「プロになった頃に事故で亡くなった弟のために、ツールで勝利するという夢があった」との事。

2013年にワールドチームと契約してから10年、まさに悲願達成の瞬間だった。

 

後方の総合勢は、トーマスの再合流からは大きな動きがないままフィニッシュ。

ピレネー3連戦、続く第17・第18ステージは、山頂フィニッシュ。

それぞれ、第17ステージは1級山岳ペイラギュード、第18ステージは超級山岳オタカムにフィニッシュと、最高の舞台が待っている。

メンバーを失いながらも見事な守りを見せるユンボ、同じように離脱者が多いながらも積極的に仕掛けるUAE、そしてフルメンバーを残しながらも苦戦しているイネオス。

それぞれがどのような動きを見せるのか、今年のツールを左右する重要な2連戦、楽しみにしたい。