雪のグランサッソ
今大会最初の山頂フィニッシュとなる第7ステージ、そのフィニッシュ地点となるのは標高2,135mの1級山岳、グランサッソ・ディタリア。
その登坂距離26.4km・平均勾配3.4%と言うプロフィールはパッと見だと凄さがよく分からないけれども、ラスト4.4kmは平均勾配8.2%、そして最大勾配は13%を超える、なかなかのもの。
果たして、ガチンコの総合争いになるか。
この日の逃げは、シモーネ・ペティッリ(アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ)、ダヴィデ・バイス(エオーロ・コメタ)、カレル・ヴァチェク(チーム・コラテック)、ヘノック・ムルブラン(グリーンプロジェクト・バルディアーニCSF・ファイザネ)の4人。
総合争いを脅かさない4人で構成された先頭集団に対して、総合リーダーを抱えるチームDSMは完全に逃げ切り容認の構えを見せて、最大で10分を越えるタイム差を与える展開に。
道中の2級山岳2つはどちらもバイスが先頭通過して、バイスは暫定で山岳賞ランキングトップタイに浮上。
このまま逃げ切りの展開なら、バイスがマリア・アッズーラを獲得と言う状況だ。
そしていよいよ、この日の勝負所グランサッソに突入。
先頭集団とメイン集団のタイム差は8分以上とかなりのギャップがある状態で、強い向かい風の影響もあってかメイン集団ではアタックもペースアップも起こらず、やはり完全に逃げ切りを容認。
これで、中盤の2級山岳で脱落したムルブランを除く、ペティッリ、バイス、ヴァチェクの3人によるステージ争いに。
いずれもプロ未勝利という状態で大きな勝利への勝負権を得た3人は、共通の目的の為に綺麗に協調。
そのままコース脇に雪が残る標高まで登っていき、勾配が厳しくなってくる残り4,4kmの区間に入ると、まずは残り3.7km辺りからペティッリがペースアップを見せる。
この動きにヴァチェクが一旦遅れてしまうけれども、マイペース走法で食らいつき、なんとか合流に成功。
逆にヴァチェクは、残り2.8km辺りで小さなアタックを披露。
先ほど少し遅れたのは、無理にペースを上げなかっただけで、余力は結構あるのかもしれない。
コース脇の雪がどんどん深まる中、残り1.5kmでまたしてもヴァチェクが静かにペースアップ。
一旦離されたペティッリとバイスは落ち着いて追いつくけれども、揺さぶりをかけるようなヴァチェクの走りはなかなか面白いぞ…!
そこから牽制状態が続いた3人、残り300mを切って真っ先に仕掛けたのは…ペティッリ!
ダンシングで最後尾から一気に飛び出したペティッリに、バイスはすぐさま反応して背中に飛び乗る一方、ヴァチェクは急な加速には付いていけず、ここもやはりマイペース気味な走りを選択。
残り200m、ペティッリが失速すると同時に、ここを勝負所と見たバイスがカウンターアタック!!
明らかに他の2人とは余力が違うバイス、急勾配を力強く駆け抜けていく!!
そのまま単独でフィニッシュ地点までやってきたバイス、最後は大きなガッツポーズを見せてのフィニッシュ!!
ダヴィデ・バイス、嬉しいプロ初勝利はなんとグランツールの1級山岳フィニッシュ!!
自分の力を信じて、勝負を決めるアタックポイントを冷静に見極めて掴んだ大金星だ!!
ペティッリのアタックに即座に反応した判断と、ペティッリが失速するまで焦らず潜んだその判断は、本当に素晴らしかった!
そして何より、そこで勝負を決め切れる力を残していた事が、勝利に繋がったはず。
1日を通した適切なマネージメントで掴んだ、ステージ勝利とマリア・アッズーラだ!
バイスの3分10秒後にフィニッシュ地点にやってきたメイン集団は、最後に少しアタックはあったけれども、総合上勢にタイム差は付かずに終了。
次の舞台は、第9ステージの個人タイムトライアル。
平坦な35kmの個人タイムトライアルなので結構なタイム差が付く可能性もあり、今後の展開を占う、大事な1日になりそうだ。