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【レース感想】ジロ・デ・イタリア2023 第15ステージ

激戦の「ミニ・ロンバルディア」!

1級・2級・2級・2級と4つのカテゴリー山岳が登場する、中級山岳ステージ。

最後の2級山岳ロンコラ・アルタ(登坂距離10km・平均勾配6.7%)からフィニッシュ地点のベルガモまでは、モニュメントの一つである「イル・ロンバルディア」で使われるコースを通るため、開幕前から「ミニ・ロンバルディア」と言われていた逃げ向きのレイアウトだ。

 

予想通りスタート直後から積極的なアタックが掛かり、早々に形成された逃げ集団の人数は17人。

ベン・ヒーリー(EFエデュケーション・イージーポスト)にエイネルアウグスト・ルビオ(モビスター)と言った今大会既に勝利を挙げている選手や、ブランドン・マクナルティ(UAEチームエミレーツ)やバウケ・モレマ(トレック・セガフレード)など、この日もなかなかの実力者が逃げている。

メイン集団を牽引するのは、前日意外な展開でマリア・ローザを着用する事になったブルーノ・アルミライルを擁するグルパマFDJ。

想定外の事とは言え当然マリア・ローザを守りたいグルパマは、先頭集団で最も総合タイムの良いシモーネ・ヴェラスコ(アスタナ・カザクスタンチーム、+15分33秒)に総合首位の座を渡さないよう、先頭集団とのタイム差を6分前後でコントロール

これで、アルミライルがこの日ジャージを守れるかは、山岳で総合上位陣から遅れないかどうかが焦点に。

 

序盤の1級山岳と中盤の2級山岳では、現時点で山岳賞の上位2人であるダヴィデ・バイス(エオーロ・コメタ、144pt)とティボー・ピノ(グルパマ、114pt)が逃げに乗らなかった事もあり、ヒーリーとルビオによる激しい山岳ポイント争いが巻き起こる。

最初の1級をヒーリー→ルビオの順、中盤の2級もまずはヒーリー→ルビオの順、直後の2級ではルビオ→ヒーリーの順と、2人は激しく争いながらも山岳ポイントを大量に稼ぐことに成功。

終盤の2級山岳ロンコラ・アルタを前にして、ルビオが112ptで3位、ヒーリーが90ptで4位と、2人は山岳賞も視野に入ってきたか。

 

残り47km、ロンコロ・アルタに入る手前の平坦区間で先頭集団からアタックを仕掛けたのは、ニッコロ・ボニファツィオ(アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ)。

スプリンター系のボニフォツィオがここで仕掛けると言うのは…、同じく逃げに乗ったチームメイトのローレンス・ハイスを温存する(集団牽引の責任を回避させる)ため…?

ロンコロ・アルタ突入時点で1分以上のタイム差を稼いでいたボニフォツィオだったけれども、追走集団が続々と脱落者を出すようなペースで追いかけたために、残り37km辺りであえなく吸収されてしまう。

そしてボニフォツィオを吸収すると前後して集団から飛び出したのは、マルコ・フリーゴ(イスラエル・プレミアテック)。

そしてフリーゴの動きに即座に反応したのは意外にもマクナルティだけで、ヒーリーとルビオは2人でペーシング走行を選択…と思いきや、ルビオの脚の状態を確かめた(?)ヒーリーが急加速して、一気に先頭の2人に合流!

ヒーリー、やっぱり相当強いな…。

残り34.5km、マクナルティがペースを上げるとフリーゴはたまらず脱落。

そして難なく反応していたヒーリーは、強烈なカウンターアタックをお見舞いして、マクナルティを一気に突き放す!!

そのまま山頂を単独先頭で通過したヒーリーは、ダウンヒルも無難にこなして独走態勢かと思いきや、後方のマクナルティがヒーリー以上のハイペースでダウンヒルを攻略していき、山頂から4km辺りの地点で2人は合流。

気が付けば後方のフリーゴは30秒以上後方、これは…このまま2人での逃げ切りか。

…と思っていたら、下りを終えてからの平坦区間でフリーゴは徐々にタイム差を詰めていく。

そして残り10km、遂に先頭の2人に再合流!

ヒーリーとマクナルティは順調にローテーションを回しているように見えたので、これはフリーゴがなかなか凄いのでは…?

 

フィニッシュ前の最後の仕掛け所となるベルガモ旧市街地の丘「コッレ・アペルト」で仕掛けたのは、やはりこの日一番の登坂力を見せていたヒーリー!

フリーゴがすぐさま千切られる一方で、マクナルティは何とか食らいついていく…!

起伏の頂上まで踏み切るヒーリー、しかしマクナルティもなんとか耐え切って、2人でフィニッシュに向かっていく!

 

スプリントを意識してマクナルティが先頭交代を拒否し続け、そうなるとヒーリーも残り1km辺りからは若干脚を緩めた結果、10秒以上のタイム差を付けられていたフリーゴがまたしても追いついて来る…!

残り400mで合流したフリーゴは、そのままスプリントを開始!

…ん!?

フリーゴが2人に対して僅かながらギャップを作る事に成功!?

まさかそのまま…とは流石にならず、残り100m辺りでヒーリーとマクナルティが横に並んでくる!

最後はヒーリーとマクナルティの一騎打ち、脚を残しているのはどっちだ…!?

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激戦となった山岳逃げを制したのはマクナルティ!!

マクナルティはこれが嬉しいグランツール初勝利!!

いや~、最後の2級山岳ロンコロ・アルタ以降は、まさに手に汗握るような目まぐるしい展開!

登坂力に秀でていたのはヒーリーだったけれども、ダウンヒルテクニック、粘り強さ、そして最終局面の冷静さで、マクナルティが上回った!

マクナルティ、2週目は体調不良に苦しんでいたらしく、山岳で遅れる場面も目立っていたけれども、完全に復調をアピール。

ジョアン・アルメイダが総合争いをしているUAEにとっては、かなりの朗報だ。

 

強さを見せつつ惜しくも2位に終わったヒーリーは、ロンコロ・アルタを先頭通過した事で、更に山岳ポイントを加算。

また、ルビオも4位通過でポイントを獲得して、第15ステージを終えての山岳賞争いは以下の通り。

これはかなりの接戦、そして4人ともここまで好調な様子で積極的なレース運びを見せているので、3週目は山岳賞争いも相当面白くなりそうだ。

 

そしてメイン集団では、アルミライルが33秒のタイムを失いつつも、マリア・ローザをキープ。

ただ、3週目は初日から厳しい山岳ステージであり、まず間違いなく総合勢による山岳バトルが展開されるはず。

アルミライルには申し訳ないけれども…、やっと実質の開幕を迎える総合争いが、本当に楽しみだ。