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【選手紹介Vol.10】ヤコブ・フルサン

全盛期を謳歌する遅咲きのオールラウンダー

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選手名:ヤコブ・フルサン(Jakob Fuglsang)

所属チーム:アスタナ・プレミアテック

国籍:デンマーク

生年月日:1985年3月22日

脚質:オールラウンダー

 

主な戦歴

リエージュ~バストーニュ~リエージュ

 優勝(2019)

イル・ロンバルディア

 優勝(2020)

クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ

 総合優勝(2017、2019)、ステージ2勝(2017 × 2)

リオデジャネイロ・オリンピック 個人ロードレース

  2位

ブエルタ・ア・エスパーニャ

 ステージ1勝(2019)

ツール・ド・スイス

 総合2位(2018)

・ツール・ド・ポローニュ

 総合2位(2020)

・ティレーノ~アドリアティコ

 総合3位(2019)、ステージ1勝(2019)

フレッシュ・ワロンヌ

 2位(2019)

 ・ストラーデ・ビアンケ

 2位(2019)

・アムステル・ゴールド・レース

 3位(2019)

 

 

どんな選手?

30歳を過ぎてから全盛期を迎え、ステージレースでもワンデーレースでも活躍するオールラウンダー。

 

2009年にサクソバンクでワールドチームデビューを果たし、2013年以降はアスタナ・プロチームに所属。

ツアー・オブ・デンマークでの3連覇(2008~2010)や、ツール・ド・スロベニア総合優勝(2009)、ツール・ド・ルクセンブルグ総合優勝(2012)など、カテゴリーの下がるレースではそれなりに勝っているが、ワールドツアーでの勝利は挙げられない日々が続いていた。

ここまでのリザルトを見る限りでは、「優秀ではあるがトップ選手ではない」と言わざるを得ないのは間違いなかった。

 

そんなフルサンに大きな転機が訪れたのが、2016年のリオデジャネイロ・オリンピック。

厳しい山岳が盛り込まれたクライマー向けのコースを生き残り、惜しくも優勝には届かなかったものの見事に銀メダルを獲得。

チームに「エースにしてくれ」と直訴をし、31歳にして見事な結果を残したフルサンは、このオリンピックで確かな手ごたえと大きな自信を手に入れた。

 

翌2017年のクリテリウム・ドゥ・ドーフィネの第6ステージで念願のワールドツアー初勝利を飾ると、勢い止まらずに第8ステージでも勝利し、そのまま見事に総合優勝を果たす。

直後のツール・ド・フランスでは第13ステージでの落車により残念ながらリタイアとなってしまったが、この2017年以降は完全にチームのエース格の選手として扱われるようになる。

この時点でも「並の選手が30歳を超えてからチームのエースへ」というかなりの成り上がりだったが、波に乗ったフルサンの勢いはこれで止まらない。

 

2019年シーズンは春先から絶好調で、特筆すべきは新境地であるワンデーレースでの活躍。

ストラーデ・ビアンケ2位、アムステル・ゴールド・レース3位、フレッシュ・ワロンヌ2位と表彰台が続き、そしてモニュメント(5大ワンデーレース)の1つであるリエージュ~バストーニュ~リエージュを見事に制覇。

ステージレースでもティレーノ~アドリアティコ総合3位、イツリア~バスクカントリー総合4位、そしてクリテリウム・ドゥ・ドーフィネ2年ぶりの総合優勝と、好調ぶりをアピール。

残念ながら、ツール・ド・フランスではまたもや落車によるリタイアという結果に終わってしまったが、その後のブエルタ・ア・エスパーニャではステージ勝利を挙げ、嬉しいグランツール(3大ステージレース)初勝利となった。

 

2016年に開花して、2019年には更に進化を見せたフルサンの才能と実力は、今や世界トップクラスにまで達している。

35歳となる2020年シーズンも、ブエルタ・ア・アンダルシアで総合優勝(2019年に続く連覇)を飾り上々のシーズンインを迎えていただけに、コロナウィルスの影響によるシーズン中断は本当に残念でならない。

レースが再開されたら、彼がまたどんな活躍を見せてくれるのかしっかりと目に焼き付けたい。

何しろ、彼はまだ進化の途上の可能性があるのだから。

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※2021年1月7日追記

2020年シーズン、フルサンは上々の滑り出しを見せる。

最初のレース出場となった2月のブエルタ・ア・アンダルシアで、山岳ステージで2勝、そして個人タイムトライアルステージでも2位に入り、圧倒的な総合力を披露して総合優勝。

その完成度の高さを見せつける、圧巻の内容だった。

 

新型コロナウィルスの影響による中断期間を挟んでも、フルサンは好調をキープ。

ワールドツアー再開初戦のストラーデ・ビアンケで5位、その4日後に開幕したツール・ド・ポローニュでも総合2位と、相変わらず様々なレースで上位に食い込める万能性を見せる。

 

そしてポローニュの翌週、「クライマーズ・クラシック」として名高いイル・ロンバルディアに出場。

最終局面の相手は好調の難敵ジョージ・ベネットであったが、アレクサンドル・ウラソフの素晴らしいアシストもあり、ベネットの立て続けのアタックを凌いでからのカウンターを綺麗に決めて、見事に優勝を飾った。

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これでリエージュに続く2つ目のモニュメント制覇となり、もはや現役屈指のクラシックライダーと呼んでも差し支えないだろう。

 

10月には、満を持してジロ・デ・イタリアに出場。

ミゲルアンヘル・ロペスとアレクサンドル・ウラソフという2人のエース級スーパーアシストを引き連れてくる万全の態勢、そしてフルサンの総合力と安定感から、総合優勝の有力候補と目される中レースはスタート。

しかし、第1ステージでロペスが落車によってリタイア、続く第2ステージでもウラソフが体調不良でリタイアという、まさかの展開に。

両翼とも言えた2人の離脱によって山岳アシストがほぼいないという緊急事態に陥り、フルサンはやはり山岳ステージで苦戦を強いられてしまい、なかなか順位を上げられない。

メカトラブルなどの不運も重なり、万全の態勢で臨んだはずのジロは優勝どころか表彰台にも届かない、総合6位という結果に終わってしまった。

 

相変わらずトップレベルの万能性と安定感を示し、2つ目のモニュメント勝利という大きな結果も残しながら、やはりグランツールではどこか噛み合わないフルサン。

「今度こそは」と再び万全の態勢でグランツールに挑むのか、それともまた別の大きな目標に向かって走るのか。

2021年には、東京オリンピックも控えている。

富士山麓を走るオリンピックのコース、その厳しい山岳設定をこなすには超一流の登坂力が必須であり、そして少人数での先着争いになれば最後はスプリント力がその勝敗を決定づけるだろう。

まさに、フルサンにうってつけのコースかもしれない。

リオデジャネイロでは銀色だったメダルの色を、金色に変えられるチャンスは充分にありそうだ。

ロードレース選手としての転機となった銀メダルから5年、更に進化したベテランの走りに期待したい。