先日、Twitterで流れてきた情報に驚きました。
PRESS RELEASE | デジタル先行配信決定
— ALL FOR ONE 栄光のマイヨジョーヌ (@greenedge_movie) April 28, 2020
リストにある各プラットフォームでの配信開始日は一斉ではございませんのでご了承くださいませ。配信が開始されたプラットフォームについてはこちらで告知させていただきます🚲#栄光のマイヨジョーヌhttps://t.co/gNdQu1ls7P
2/28に劇場公開されたばかりのドキュメンタリー映画「栄光のマイヨジョーヌ」が、早くもデジタル配信開始!?
ロードレース観戦仲間からの評判も素晴らしかったので観たいと思いながらも、釧路在住でまだ鑑賞できていなかった自分としては本当に嬉しいサプライズニュースにテンション爆上げ!
もちろん早速Amazonプライムビデオでレンタル!
素晴らしすぎる内容にただ感動するのみ…!
正直、この一言で終わらせていいぐらい本当に最高の映画でしたが、一応ロードレース観戦のブログをやっている身としては触れるべき話題だとも思ったので、できるだけネタバレに気を付けつつ色々書いてみます。
※映画公式サイトはこちら
そもそもどんな映画なのか
2012年にオーストラリア初のワールドチームとして設立されたオリカ・グリーンエッジの活動に密着したドキュメンタリー映画です。
ロードレースというヨーロッパが中心地であるスポーツに、陽気なオージー・チームが挑んでいく様子が見事に映し出されています。
スポーツ・ドキュメンタリー映画となると「そのスポーツのファンしか楽しめないんじゃない?」と考える人もいると思いますが、この映画の出来はそんなレベルではないです。
詳しくない人が観ても分かるように丁寧に作られつつ、ドキュメンタリー映画としての出来も相当素晴らしいものになっています。
選手やチームスタッフを通じて描かれる「チームとしての一体感」や「挑戦と苦悩の日々」は、リアルな出来事として多くの人が共感できるものであり、その先に待ち受けている結果は本当に感動(感情移入)できる素晴らしいものになっています。
※注意※
ここまではザックリと概要を書きましたが、この先は少し内容に触れる部分も出てきます。
勿論、映画の魅力を損なうようなネタバレは無いように書いているつもりですが、読まれる方はご了承ください。
物語の中心となる登場人物
2012年のチーム設立から2016年の「パリ~ルーベ」までを追いかける中で、「主人公」とでも言うべき選手が3人登場します。
この3人の活動を時系列で並行しながら観ていくのですが、序盤・中盤・終盤にそれぞれのヤマ場があります。
序盤~サイモン・ゲランス編~
チーム結成時に32歳、そしてそれ以前にも他のチームで数々の実績を残してきたゲランスは、チームのエースであり精神的な支柱と呼べる存在です。
新しく設立されたチームにとっての最大の目標は、ロードレース界最大のイベントであるツール・ド・フランスでのステージ勝利と、マイヨジョーヌの獲得。
その時点で総合トップの選手に贈られるマイヨジョーヌは、一度袖を通すだけでも歴史に名前が残る大きな名誉とされています。
そこに向かってチーム一丸となって挑む姿、そして望んでいた結果を手に入れた彼の驚くべき行動。
サイモン・ゲランスはその慈愛と器の大きさで真のチームリーダーである事を証明するだけでなく、自分をエースたらしめるチームメートへの感謝を、その行動で見事に表現してくれました。
中盤~エステバン・チャベス編~
2011年に若手の登竜門として有名なツール・ド・ラヴニールで優勝したチャベス(当時チーム・コロンビア所属)は、多くのチームが注目する期待の若手選手でした。
しかし2013年に大ケガを負ってしまい、手術やリハビリもなかなか上手くいかない苦しい日々を送っていました。
それでも、その才能と人間性が評価されてグリーンエッジに加入する事が出来ました。
慣れない英語への適応など苦労もありましたが、その明るい性格に加え、ベテラン選手マシュー・ヘイマンの助けやチームスタッフからの助言もあり、2015年のブエルタ・ア・エスパーニャではエースを任されるほどに成長します。
持ち前の明るさで道中を笑顔で楽しみながら、「ボス」と呼び信頼しているヘイマンのアシストを受け、得意の山岳でスパートを掛けた彼は勝利を掴めるのか…!
コロンビアから駆け付けた応援団への対応や、レース後のチームスタッフとのやりとりで見せる、どんな状況でも飾らないその笑顔に彼の魅力が詰まっています。
終盤~マシュー・ヘイマン編~
2014年、36歳でチームに加入した大ベテランのマシュー・ヘイマン。
グリーンエッジ加入前の通算勝利数は僅か2勝と、華々しく活躍するエースではありませんが、仲間をサポートする能力に長けたアシスト選手として評価されていました。
その評判通り、映画中盤では12歳年下のチャベスを見事にアシストしています。
そんなヘイマンが野心を見せたのが、荒れた石畳が多く設定された過酷なコースレイアウトから「北の地獄」と称される、ワンデーレースの頂点の1つ「パリ~ルーベ」でした。
2か月前のレースでの落車による骨折、落車によりリタイアするチームメイト、そして強力なライバル達。
幾多もの困難が待ち受けますが、彼は勝利の為に、そしてチームの為に走り続けます。
そしてフィニッシュ地点のベロドローム(自転車競技場)での最終決戦を終えてから見せた感情に、彼がレースに注いできた情熱の重さが滲み出ています。
ロードレースの魅力
選手を中心に書いてきましたが、チームスタッフの奮闘もこの映画の大切な魅力の1つです。
特に、スポーツ・ディレクター(いわゆる監督のような役割)のニール・スティーブンスの熱い言動には、観ているこちらも熱くさせられます。
また、劇中に何度も出てきたYouTubeの動画「Backstage Pass」ですが、2018年にスポンサーの変更によりチーム名が「ミッチェルトン・スコット」に変わって以降は「Backstage Pass」名義では動画は投稿されていないようですが、実質同じ内容の密着動画が各レースごとにアップされています。
グリーンエッジ時代の「Backstage Pass」もしっかり残っているので(というか、URLが"GreenEdgeCycling"のままですね!)、映画を観て気になった方は是非チェックしてみてはいかがでしょうか。
あくまで個人的な意見ですが、ロードレースの最大の魅力は、表彰されるのは勝った選手1人のみでありながら、その1人の勝利の為にチームで戦うという「個人競技であると同時にチーム競技である」という部分だと思っています。
アシスト選手はエースを信頼して全てを捧げ、エースはそんなアシストやチームに報いる為に全身全霊をかけて勝利を目指す。
その関係性こそがロードレースを魅力的にしています。
「栄光のマイヨジョーヌ」はそんなロードレースの魅力を見事に捉えた、感動間違いなしの傑作映画です。
この映画を通じて、少しでも多くの人にロードレースの魅力が伝われば嬉しいです。