初日から大盛り上がり!
昨年は新型コロナウィルスの影響で秋開催になったけれども、やはりこのピンクのトレードカラーが華やかなジロはグランツールの幕開けにこそ相応しいと思う。
総合争いは実力者はいれども本命不在、ポイント賞争いも展開が読みにくい、そんな先が読めない雰囲気の漂う3週間の物語が始まる!
開幕は、昨年と同じように個人TTステージ。
序盤はややテクニカルな市街地を抜け、ラスト3kmはパワー勝負になりそうな一直線という、8.6kmのコース設定。
序盤から実力者もパラパラと出走し、暫定トップタイムが次々と更新される目まぐるしい展開に。
まず、第3走者としてアワーレコードの世界記録保持者であるヴィクトール・カンペナールツ(チーム・クベカ・アソス)が出走し、第2走者のダヴィド・デッケル(チーム・ユンボ・ヴィスマ)を1秒上回り暫定トップに。
ただ、デッケルより1秒しか速くないというのは、カンペナールツとしてはイマイチなタイムな気が…。
そしてその心配(?)はやはり当たり、直後にロジャー・クルーゲ(ロット・スーダル)に抜かれたのを皮切りに、ヨナタン・カストロビエホ(イネオス・グレナディアーズ)、ネルソン・オリヴェイラ(モビスター・チーム)、マティアス・ブランドル(イスラエル・スタートアップネーション)と、暫定トップタイムが続々と更新されていく。
総合勢の選手として最初に出走したのはアスタナ・プレミアテックの若きエース、アレクサンドル・ウラソフ。
個人TTがそこまで得意な選手ではないと言う印象だったけれども、ブランドルから2秒遅れという素晴らしいタイムを叩き出す!
確かに3月のパリ~ニースの個人TTでも悪くない結果だったけれども、これは…総合優勝も狙えるような仕上がりかもしれない。
ウラソフ以上の驚きを与えてくれたのは、2019年のツール・ド・ラヴニール覇者トビアス・フォス(ユンボ)。
昨年のジロ第1ステージでも5位となるタイムを出していたその若き才能は、ブランドルのタイムを10秒も上回る驚きの走りを披露!
ラヴニール覇者なので大器なのは分かっていたけれども、ここにきて一気に覚醒か!?
ジョージ・ベネットのアシストと目されているけれども、山岳の走り次第ではダブルエース、というかひょっとしたらベネット以上の成績を残す可能性もあるのでは?
続いて出走した注目選手は、ステージ勝利の有力候補「クレルモンフェランのTGV」ことレミ・カヴァニャ(ドゥクーニンク・クイックステップ)。
直近の調子が良かったので個人的には期待していた選手なんだけれども、残念ながらフォスから5秒遅れ、最終的にはステージ5位となるタイムでフィニッシュ。
「カヴァニャが抜けないなら、しばらくフォスのタイムは抜かれないんじゃないの?」なんて考えていたら、ここで意外な伏兵が現れる。
フォスのチームメイトであるエドアルド・アッフィニがトップタイムを3秒更新!
正直なところアッフィニは完全に「ノーマーク」だったけれども、よく考えればU23ヨーロッパ選手権個人TT王者だし、昨年の世界選手権のイタリア代表なのか。
そりゃ普通に強いわ。
アッフィニがトップの座を守ったままの状態で、ジョアン・アルメイダ(ドゥクーニンク)、エガン・ベルナル(イネオス)、サイモン・イェーツ(チーム・バイクエクスチェンジ)、ダニエル・マーティン(イスラエル)と、総合勢が立て続けに出走。
アルメイダはアッフィニから7秒遅れと、相変わらず総合勢の中では抜群のTT能力を披露!
ベルナル(アルメイダから22秒遅れ)とサイモン・イェーツ(アルメイダから21秒遅れ)はほぼ同タイムで帰ってきて、まずまずの出来と言ったところ。
そして個人TTが苦手なダニエル・マーティンは…アルメイダから40秒遅れと、予想はされていたけれどもなかなか厳しいタイムでフィニッシュ。
そして、この日最大の注目選手の1人、レムコ・エヴェネプール(ドゥクーニンク)が出走。
2019年のヨーロッパ選手権個人TT優勝、世界選手権個人TT準優勝と、その実力は折り紙付き。
TT能力だけでなく、2020年の序盤にはステージレースで4戦無敗と、調子さえよければ総合優勝候補なのは間違いない存在だ。
ただ、昨年8月に落車で骨盤を骨折し、このジロが復帰初戦なのでコンディションは不透明な状態。
久々のレースでどんな走りを見せてくれるのかとファンが固唾をのんで見守る中、中間計測でのエヴェネプールのタイムは…かなりいいぞ!
そのまま最後までペースを落とさず、最終的にステージ7位となるタイムでフィニッシュ!!
本人からしたら不本意なタイムかもしれないけれども(世界選手権で2位になった際にもかなりの不満顔だったぐらいだしね)、それでもこれは見事な走りと言いたい!
そしてエヴェネプールの次の走者は、個人TTの現世界王者「トップガンナ」ことフィリッポ・ガンナ(イネオス)。
昨年ジロの個人TTでは3戦全勝と圧倒的な成績を残したけれども、直近の数レースで調子がイマイチだったため、不安視する声も聞こえる中スタート。
王者の証である虹色のジャージを纏うガンナが見せた走りは、周囲の雑音など軽々と吹き飛ばす、まさに王者の走り。
素人目にも(そしてレース後に公表されたデータ的にも)明らかに異次元の出力、DHバーを握りながらコーナーをギリギリまで攻めるアグレッシブな姿勢とテクニックは、ただただ圧倒的!
王者の帰還!
昨年同様、第1ステージの個人TTはガンナの圧勝!!
他の誰も抜けなかったアッフィニのタイムを、なんと10秒も更新する異次元の走り。
もう「スゲー!」とか「強え~!」としか言えないよ(笑)
事前に総合の有力候補と個人的に注目していた選手の中で最も良いタイムだったのはアルメイダ(ステージ4位)。
とりあえず、アルメイダを基準とした他の総合勢のタイム差はこんな感じ。
- アルメイダ(9分4秒)
- エヴェネプール(+2秒)
- ウラソフ(+7秒)
- パヴェル・シヴァコフ(イネオス:+17秒)
- ヒュー・カーシー(EFエデュケーション・NIPPO:+21秒)
- ペッリョ・ビルバオ(バーレーン・ヴィクトリアス:+21秒)
- サイモン・イェーツ(+21秒)
- ベルナル(+22秒)
- ヴィンチェンツォ・ニバリ(トレック・セガフレード:+24秒)
- ジョージ・ベネット(+24秒)
- マルク・ソレル(モビスター:+25秒)
- ジェイ・ヒンドレー(チームDSM:+29秒)
- ミケル・ランダ(バーレーン・ヴィクトリアス:+32秒)
- ロマン・バルデ(チームDSM:+35秒)
- エマヌエル・ブッフマン(ボーラ・ハンスグローエ:+38秒)
- ダニエル・マーティン(+40秒)
アルメイダとエヴェネプールというTTに定評のある2人がワンツー、クライマー系の選手は+20秒~25秒辺りに固まる中からウラソフが少し抜け出す形、そしてそれなりにタイムを失った選手も数名、といったところ。
あとは、アルメイダより4秒上にフォスがいるか。
短いTTだったのでまだまだ山岳で全然ひっくり返るタイム差であると同時に、最終ステージは30.3kmというもっと長い個人TTステージのため、第1ステージでタイムを失ったような選手は最終日までにかなり頑張らなければいけないはず。
今年も「最終日での逆転」という劇的な展開が、現時点では充分に可能性のあるシナリオに見えてくる。
道中の山岳での勝負も、最終日の個人TTも面白くなりそうだ!
※おまけ
ガンナの写真を探していて、昨年の第1ステージとほぼ同じ構図のものを見つけて少し笑ってしまった。
今年
昨年
いや、まあポディウムでの写真ってそういうものか…。