稀に見る僅差の激戦!!しかし…
1週目の締めくくりは、35kmド平坦の個人タイムトライアル。
この距離だと、総合勢に大きな差が付く可能性も高い、今大会最初の山場かもしれない。
雨が路面を濡らす難しいコンディションもあって、序盤に「ターゲットタイム」と言えるような記録を出す選手は現れず、気が付けば出走順は100番を超えている。
そんな中、123番出走のブルーノ・アルミライル(グルパマFDJ)が全ての中間計測地点でタイムを更新する好走を見せ、暫定首位に。
と思ったのも束の間、アルミライルの1分後に出走した同じくグルパマのシュテファン・キュングが、トップタイムを4秒更新。
キュングのタイムを更新する選手はなかなか現れず、あっという間に残すは総合上位陣のみに。
この日の優勝候補に挙げられていたキュング、悲願のグランツール初勝利の可能性が出てきた。
総合上位勢が出走し始めても、ティメン・アレンスマン(イネオス・グレナディアーズ)、ジェイ・ヴァイン(UAEチームエミレーツ)、ダミアーノ・カルーゾ(バーレーン・ヴィクトリアス)、アレクサンドル・ウラソフ(ボーラ・ハンスグローエ)など、タイムトライアル能力に定評のあるオールラウンダーですらキュングのタイムには届かないどころか、肉薄もできない状況が続く。
「このままキュングが勝利か…?」という空気を変えたのは、総合6位のテイオ・ゲイガンハート(イネオス)。
2020年のジロ王者は、35kmという長い距離の全区間を通して隙の無い走りを見せ、キュングのタイムを4秒更新!
そしてゲイガンハートだけでなく、イネオスの勢いが止まらない。
続いて出走した総合5位のゲラント・トーマスが、ゲイガンハートの第1・第2中間計測タイムを数秒上回る走りを見せている…!!
そして第3中間計測は…なんと同タイム!?
雨が上がって路面状況もよくなってきたチェゼーナ市街地を駆け抜けるトーマス、ゲイガンハートのタイムを1秒上回る!!
イネオス勢の会心の走りと比べると少し振るわなかったのは、総合4位のジョアン・アルメイダ(UAE)と総合3位のプリモシュ・ログリッチ(ユンボ・ヴィスマ)。
アルメイダはトーマスから34秒遅れ、ログリッチは16秒遅れと、決して悪くはないけれども…。
特にログリッチは、ステージ優勝の可能性も考えられただけに、成功とは言えないステージになってしまったかもしれない。
そして…この日の大本命、初日のタイムトライアルで圧倒的な走りを見せたレムコ・エヴェネプール(スーダル・クイックステップ)がスタート。
第1中間計測は…トーマスより11秒も早い!?
ただ、エヴェネプールは序盤に飛ばしすぎたのか、第2中間計測では2秒にまでリードが縮小、そして第3中間計測は…なんとトーマス、ゲイガンハートと同タイム!!
チェゼーナのテクニカルな市街地を必死の表情で走り抜けるエヴェネプール、フィニッシュのタイム差はかなり際どい、どっちだ…!?
なんと、その差は僅か1秒…!!
手に汗握るような激熱なタイムトライアル、制したのはエヴェネプール!!
いや~、35kmと長距離の個人タイムトライアルで、ステージ上位3人のタイム差がそれぞれ1秒ずつ…!
こんな接戦、滅多に無いでしょ!
イネオスの強さも光ったけれども、序盤に飛ばしすぎて終盤失速したエヴェネプール、それでもステージを獲ってしまうその強さよ…!!
そしてエヴェネプールは、最終走者のアンドレアス・レックネスン(チームDSM)が1分15秒差の19位でフィニッシュしたことにより、再びマリア・ローザに袖を通す事に!
まだまだ接戦が続く中、リーダージャージを守るためにどんな戦いを見せるのか、2週目以降も本当に楽しみだ!
…なんて思っていたら、翌日の休息日にとんでもないニュースが飛び込んでくる。
なんと、エヴェネプールが新型コロナウィルス陽性でリタイア…。
そんな、そんな事ってあるか…。
あまりにも衝撃的で、あまりにも残念な出来事に、この感情をどう表現していいのやら…。
自分は決してエヴェネプールの熱烈なファンという訳では無いけれども、それでもこれは…悲しすぎる幕切れとしか言いようがない。
…起こってしまった事は変えられない。
まずはエヴェネプールの順調な回復を祈りつつ、そしてこれ以上の離脱者が出ない事を願いながら、ジロの2週目以降を楽しんでいくしかない。
幸い、総合上位勢はかなりの接戦であり、見応えは十分にあるはず。
いよいよ牙を剥いてきたイネオスの強さと、地力では勝ると評されているログリッチ、そして隙を伺う多士済々な選手たち。
熱い戦いを期待しよう。