波乱の雨…
2週目の幕開けとなる第10ステージは、コース中盤に2級山岳と4級山岳がありつつも、全体的な厳しさはそこまでではないように見えるので集団スプリントが予想されるレイアウト。
総合首位に立ちながら新型コロナウィルス陽性となってしまったレムコ・エヴェネプール(スーダル・クイックステップ)を筆頭に、7人もの選手が未出走という残念な状況ながら、レースはスタート。
激しい雨…レース前は雨と低気温のためにコース短縮も検討された冷たく激しい雨が降る中で逃げを選択したのは、山岳賞ジャージを着るダヴィデ・バイス(エオーロ・コメタ)、マグナス・コルト(EFエデュケーション・イージーポスト)、アレッサンドロ・デマルキ(チーム・ジェイコ・アルウラー)、デレク・ジー(イスラエル・プレミアテック)という、少数ながら実力者揃いの4人。
バイスは2級山岳を先頭通過して山岳ポイントを回収すると、この日に目標を終えてメイン集団に戻る事を選択。
メイン集団では、総合6位とかなり良い走りを見せていたアレクサンドル・ウラソフ(ボーラ・ハンスグローエ)が、体調不良の為にリタイアする事に…。
1週目から雨が続き、そしてこの日の冷たい雨は、想像以上に選手を削っているのかもしれない…。
2級山岳を越えると、メイン集団から4人の選手が飛び出す格好に。
飛び出したのは…ダミアーノ・カルーゾ、ジョナサン・ミラン、アンドレア・パスクアロンというバーレーン・ヴィクトリアスの3人に、パヴェル・シヴァコフ(イネオス・グレナディアーズ)という、少し不思議なメンバー。
バーレーンが仕掛けて、イネオスが抑え役でシヴァコフを送り込んだという事だろうけれども…割と意図が読みにくい動きではある。
意外にも一時は1分以上のタイム差を稼いだこの集団だったけれども、やはり結局はメイン集団に捕まる事に。
そんな不思議な追走劇が繰り広げられるのと前後して、メイン集団とその後方では落車が多発してしまう。
フェルナンド・ガビリア(モビスター・チーム)にカーデン・グローブス(アルペシン・ドゥクーニンク)というこの日のステージ勝利候補、更にはジェイ・ヴァイン(UAEチームエミレーツ)、ウィリアム・バルタ(モビスター)、ワレン・バルギル(アルケアサムシック)、ルーカス・ペストルベルガー(ジェイコ)、そして落車したペストルベルガーに駆け寄ろうとしたスタッフと接触してしまったアルベルト・ベッティオール(EF)…。
ただでさえ人数が減っているのだから、もうトラブルはやめてくれよ…。
4級山岳を下り切って残すは70km、先頭集団とメイン集団のタイム差は2分強と、普通に考えたら簡単に捕まるタイム差だけれども、ガビリアやグローブスといった有力スプリンターと共に結構な人数がメイン集団から遅れてしまった事、そして冷たい雨が選手たちの体力を容赦なく奪った事で、メイン集団はイマイチ「元気」がないようにも感じる。
対して先頭を走る3人は…逃げ巧者の3人は、意気揚々と逃げ続ける。
残り30km、タイム差は未だ1分45秒もある。
残り25km、少し減少傾向だけれども、まだ1分25秒差。
残り20km、1分12秒差…縮まってはいるけれども…?
残り15km、あ…50秒差と流石に結構詰めてきたか…。
残り10km、あれ…45秒差?ほぼ減っていない?
そしてここからメイン集団はペースが上がらなくなり、タイム差は全然縮まらず…、残り5kmで40秒差と、逃げ切りが見えてきた…!!
残り3km、メイン集団はスプリンターチームに牽引する力が残っておらず、総合狙いのイネオスが前に出てくるような状況、そして当然イネオスは逃げを捕まえる意志なんて無く、完全にスローダウン!
これは…逃げ切りが確定だ!!
さあ、勝利に指が掛かった先頭の3人、残り1.6kmでまず仕掛けたのはジー、意表を突く抜け出し。
コルトは「デマルキに追わせようとして」様子を見ていたけれども、デマルキが踏めない感じがあると見るや、デマルキを捨てて自らジーをキャッチ。
少し離されたデマルキは、その後何とか追いついたけれども、脚が限界か?
と思いきや、デマルキはスプリントではまず勝てないと判断したのか、最後の力を振り絞って加速…!
ただ悲しいかな、2人を引き離すようなキレはない…。
残り200mを切ると、デマルキの動きをリードアウトのように使って、ジーとコルトがほぼ同時にスプリントを開始!!
デマルキは早々に諦め、コルトとジーの一騎打ち…やはりコルトが強い!!
逃げ切りからの小集団スプリントという、お得意の形から余裕の勝利!!
上手さと強さを見せつけたコルト、これで全グランツールでのステージ勝利達成!!
改めて、スプリント力のある選手がこれだけ登れて、そして積極的に逃げに乗ってくる事の恐ろしさよ…。
デマルキとジーが仕掛けても全く動じずに自分の仕掛け所を待てる、その冷静さと自信は格が違ったとしか言いようがない。
実績、そして特徴的なひげも相まって大ベテランのような印象を持ってしまいがちだけど、実はまだ30歳のコルト。
これからもその多彩な走りと積極性を発揮して、レースを盛り上げていって欲しいところだ。