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【レース感想】ツール・ド・フランス2022 第10ステージ

混沌…!

2週目の幕開けと同時にピレネー3連戦の幕開けでもある第10ステージは、4級・3級・4級・2級とカテゴリー山岳を越えていく逃げ向きの山岳ステージ。

 

スタート前、コロナ陽性や体調不良などで数名のリタイア者が発表され、その中にはUAEチームエミレーツの重要な山岳アシストであるジョージ・ベネットの名前も…。

UAEはヴェガールスターケ・ラエンゲンに続く2人目の離脱者、盤石に見えていたタデイ・ポガチャルの3連覇への道のりに、若干の不安も…?

 

アクチュアルスタート後、逃げ向きのステージという事で激しいアタック合戦の様相に。

そして、やはりUAEはコントロールする力を低下させているのか、総合のライバルであるチーム・ユンボ・ヴィスマのクリストフ・ラポルトや、イネオス・グレナディアーズのディラン・ファンバーレにフィリッポ・ガンナなど、ちょっと逃がしてはいけないような選手も含まれる25人の大集団が出来上がる事に。

他にも、レナード・ケムナ(ボーラ・ハンスグローエ)、ルイスレオン・サンチェスバーレーン・ヴィクトリアス)、マグナス・コルト(EFエデュケーション・イージーポスト)、バンジャマン・トマ(コフィディス)、マッテオ・ヨルゲンセン(モビスター・チーム)、クイン・シモンズ(トレック・セガフレード)など、超強力な逃げ集団だ。

メイン集団を牽引するUAEは、逃げで最も総合タイムの良いケムナ(8分43秒遅れ)を目安に、最大で9分半ほどのタイム差を許容。

最後の2級山岳に向かう平坦区間では、アルベルト・ベッティオール(EF)が逃げから飛び出しての先行策を敢行している。

 

このタイミングで、予想外なトラブルが…。

なんと、環境保護団体のデモ隊が道路を塞いでいて、レースが一旦ストップする事に。

幸い、デモ隊は十数分で排除されて、ストップ時のタイム差を反映させながらレースは無事に再開。

ツールが世界中に発信されるビッグイベントだからこそ起こったハプニングなんだろうけれども、なんにしてもレースに水を差されるのはあまり気持ち良くないな…。

 

最後の2級山岳に入って、最大で45秒ほどまでタイム差を広げたベッティオールを吸収するために、ステージ狙いの選手達が猛追を仕掛けて、残り10km辺りでベッティオールは捕まる事に。

と思ったらまたベッティオールが飛び出したり、追走はばらけたりもしながらそこでもまたやり合いがあったりと、出入りの激しい混沌とした展開に…!

EFがベッティオールとコルト、バーレーンがサンチェスとフレッド・ライトと、この2チームは数で優位に立ち、ファンバーレ、シモンズ、ニック・シュルツ(チーム・バイクエクスチェンジ・ジェイコ)なんかは、途中までアシストに守られていたのでまだ脚が残っていそうだ。

その一方で、山岳逃げの名手であるケムナはかなり厳しいマークを受け、そしてそれを単騎で捌かなければいけないという、なかなか苦しい状況だ…。

 

残り6.1km、バーレーンは数の有利を最大に活かすため、サンチェスが早めのアタック!

登坂力のあるサンチェスに先行させ、後方にはスプリント力もあるライトを残すと言う、理想的な展開だ。

独走を続けるサンチェスを追いかけようと飛び出したのはシュルツとヨルゲンソンの2人、その後ろからはファンバーレもペース走でじわじわと迫って来る。

残り2kmを切って、シュルツとヨルゲンソンはサンチェスを捕まえ、そしてファンバーレも残り1kmで合流。

その直後、直角コーナーを抜けたタイミングでファンバーレが意表を突く早駆けを見せるけれども、これは決まらない。

そして、この動きをきっかけに先頭の4人はかなりの牽制状態になってペースダウンしてしまい、残り500mで追走集団が追いついてきた!

これで、先頭集団はサンチェス、シュルツ、ヨルゲンソン、ファンバーレ、トマ、ライト、アンドレアス・レクネッスン(チームDSM)、ゲオルグ・ツィマーマン(アンテルマルシェ・ワンティゴベールマテリオ)、コルト、そしてケムナの…10人。

ここまでのハードな展開、そして若干の登り勾配のフィニッシュで誰もが苦しそうな中、一体誰の脚が残っていて、どこでどうやって仕掛けるのか…。

 

残り400mからトマが前に出て、その後ろにはライトが張り付く。

残り300m、横からスルスルっと位置を上げてきたサンチェスがここからアタック!

その後ろにはシュルツがピッタリと付いていき、コルトがその後方で機を窺う。

残り100m、早めに飛び出したサンチェスはやはり勢いを失ってしまい、シュルツが前へ!

コルトは溜めに溜めて、残り50m辺りから腰を上げて最後の力を振り絞る!

シュルツとコルト、2人がハンドルを投げながら横並びでフィニッシュ!!

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フィニッシュ直後に2人が顔を見合わせるような大接戦!!

写真判定の結果、混沌の登りスプリントを制したのは…コルト!!

今大会序盤のデンマークステージを沸かせた「お祭り男」が、その多才さを遺憾なく発揮して勝利を掴み取った!!

ベッティオールのアシストもあって2級山岳を生き残り、スプリントでは勝負所をしっかりと見極めて最後の最後のまで脚を貯め、そしてハンドル投げでもスプリンターとしての経験が活かされて…。

元々はブエルタ・ア・エスパーニャのスプリントを制するようなスプリンターだけれども、登りもこなす、逃げも得意、なんならタイムトライアルも好成績を残す、その独特な脚質だからこその勝利だったと思う。

 

先頭から約9分後、メイン集団もフィニッシュ地点へ。

うわ、またポガチャルがスプリントしている…。

タイム差は付かなかったけれども、ポガチャルの「1秒でも」というその姿勢よ。

そして、この最後のペースアップの影響もあって、ポガチャルはケムナと11秒差でマイヨジョーヌをキープ。

チーム状態を考えたらケムナにマイヨジョーヌを渡しても良かった気がするけれども、これが王者ポガチャルの戦い方だ。

 

さあ、続く第11ステージと第12ステージは、なんとガリビエ峠が2日連続で登場と、吐き気を催すほど(?)の厳しいレイアウトになっている、素晴らしい山岳ステージ。

はたして、総合争いはどんな展開となるのか…。