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【レース感想】ジロ・デ・イタリア2022 第18ステージ

「逃げ切る」とはこういう事

レース開始前、総合4位のジョアン・アルメイダ(UAEチームエミレーツ)が新型コロナウィルス陽性の為にリタイアという、ショッキングなニュースが飛び込んでくる。

最終日の個人タイムトライアルの事を考えると、総合表彰台の可能性も残されていただけに、本当に残念だ…。

 

さて、それでは気を取り直して…。

4級山岳が2つのみと平坦なレイアウトのため、今大会最後の集団スプリントが予想される第18ステージ。

 

この日の逃げは、マグナス・コルト(EFエデュケーション・イージーポスト)、エドアルド・アッフィニ(チーム・ユンボ・ヴィスマ)、ドリース・デボント(アルペシン・フェニックス)、ダヴィデ・ガッブロ(バルディアーニCSFファイザネ)という4人。

この曲者揃いの先頭集団に対して、メイン集団は概ね1分台(最大でも2分半ほど)とあまり大きなタイム差を与えない。

残り85km辺りではタイム差が1分を切ろうかというぐらいにまで近づき、捕まえるには早すぎるのでメイン集団は慌てて脚を緩めるほど。

「逃がさないために、過剰なぐらい警戒しているなぁ…」なんて思っていたけれども、レース後のアッフィニのコメントによると、どうやらこの動きは逃げが敢えて狙ったものとの事で、かなりの驚き!

「あえてスローペースで走り、後ろの集団がどう反応するか見ようとした」

最後のスプリントステージで4名逃げ切り デボントがキャリア初のグランツール区間優勝 - ジロ・デ・イタリア2022第18ステージ | cyclowired

 

あまり早く捕まえたくないメイン集団の心理を上手く利用して、逃げの4人は力を温存しながら、2分30秒のリードで残り54kmの4級山岳を通過。

ここから、4人は明らかなペースアップを敢行!!

完全な協調体制を築き、下り~平坦基調での逃げ切りを目指す!!

一方のメイン集団は、グルパマFDJ、クイックステップ・アルファヴィニル、UAEチームエミレーツ、チームDSM辺りが牽引。

平坦系のアシスト選手が引っ張るけれども、先頭とのタイム差はなかなか縮まらない…!?

残り40km、2分9秒差。

残り30km、1分44秒差。

…10kmで25秒しか縮まっていない。

残り20km、1分18秒差。

この10kmも26秒しか縮まっていない…!?

しかも、メイン集団はペースアップに加えて横風の影響で、分断している…!

残り10km、…まだ1分3秒の差がある!!

メイン集団はアシストがかなり減っているし、これは…逃げ切るぞ!!

 

残り5km、タイム差は未だに55秒!!

先頭の4人はその協調体制を崩さず、そしてテクニカルなコーナーが続くコースがメイン集団のペースアップを阻む!

残り3km、38秒差!

残り2kmで27秒差、流石に少し詰まってきてたけれども、時すでに遅しか…。

そして残り1kmで21秒差、これは決まった…!

フラム・ルージュを通過して、ここまでは完璧な協調を見せていた4人も、流石に勝利に向けての駆け引きを開始。

先頭を牽かされているのはスプリント力に定評のあるコルト、その後ろにアッフィニ、デボント、ガッブロと続く。

残り200m、真っ先に仕掛けたのはアッフィニ!!

その背中にはデボントが張り付き、そして先頭にいたコルトは後ろに位置を下げてしまう!

残り100m、アッフィニとデボントが横並びで先頭!!

そのまま、そのまま、そのまま…競ったままフィニッシュラインへとハンドルを投げる!!

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手に汗握る逃走劇からのスプリントを制したのは…デボント!!

いや~、凄いものを見させてもらった!!

まさかまさかの、平坦ステージでの「本気の逃げ切り」!!

昨年のツール・ド・フランスや、一昨年のジロでも、最終盤の平坦ステージで逃げ切りはあった。

ただ、それらは牽引力を失ったスプリントチームが早々に逃げを容認した結果の、「逃がしてもらった」ものだった。

この日の逃げ切りは、違う。

スプリントチームも、やる気はあった。

それでも、逃げ切った。

それを成し遂げた4人の力、戦略、見事な協調、そして何より…「やってやる」という心意気。

これぞ、ロードレース。

デボントの勝利を心から祝福するのと同時に、4人全員を讃えたい。

素晴らしいものを見せてくれて、本当にありがとう。

こういう事が起こるから、ロードレース観戦はやめられない。