マリア・アッズーラの強さ
3級・3級・1級・2級と、4つのカテゴリー山岳が登場する山岳ステージ。
逃げ切りの可能性が充分にあり得るレイアウトで逃げを選択したのは12人、その中には山岳賞首位の座をより強固にしたいクーン・ボウマン(チーム・ユンボ・ヴィスマ)が含まれている。
一方のメイン集団は、リーダージャージのリチャル・カラパスを擁するイネオス・グレナディアーズではなく、総合2位のジャイ・ヒンドレーを抱えるボーラ・ハンスグローエがコントロール。
逃げに総合を脅かす選手がいないので、ボーラは先頭とのタイム差が10分以上になるような緩いペースを作っている。
そんな中、メイン集団で予想もしない出来事が…。
まだ本格的な登坂が始まる前の緩い登り基調の部分で、なんとリッチー・ポート(イネオス)が遅れていく…!?
イネオスの最終山岳アシストとして今大会も活躍を見せていたポート、自身最後のグランツールは胃腸のトラブルの為にリタイアとなってしまった…。
悲しいと同時に、これは総合争いの戦局に多大な影響のある大事件でもある。
残す山岳ステージは翌日も含めて2つ、果たしてどうなるのか…。
先頭集団で積極的な牽引を見せるのはエドアルド・アッフィニ(ユンボ)やダヴィデ・バッレリーニ(クイックステップ・アルファヴィニル)、それぞれボウマンとマウロ・シュミット(クイックステップ)のために献身的な走りを続ける。
昨年のジロでステージ1勝を挙げているシュミットは、個人的にはまだ登坂力がよく分からない(あまり登坂をじっくり見た事が無い)選手なんだけれども…、これは期待していいという事か?
アッフィニの助けも借りたボウマンは、目論見通り3級・3級・1級と山岳を先頭通過して、これで完走さえすれば山岳賞獲得が確定。
そしてそのボウマンにシュミット、アッティラ・バルテル(グルパマFDJ)、アレサンドロ・トネッリ(バルディアーニCSFファイザネ)を加えた4人が、1級山岳の登坂で抜け出しに成功。
そこに下りで猛追を掛けたアンドレア・ヴェンドラーメ(AG2Rシトロエン)が合流して、先頭は5人になって最後の2級山岳に突入する事に。
後方のメイン集団は相変わらずボーラの牽引で、先頭とのタイム差は7分以上。
ステージ優勝の行方は、先頭の5人で争われる格好だ。
メイン集団がはるか後方という事で、先頭の5人はお互いに睨み合ったままペースをあまり上げずにフィニッシュまでの距離を縮めていく。
動きがあったのは残り2.9km、勾配が緩んだ区間でボウマンがアタック!
そのカウンターでヴァルテルが加速すると、ヴェンドラーメが若干遅れる格好になりながらも、なんとか食らいついていく。
残り2.2kmでトネッリのアタック、そして再びヴァルテルのカウンターがあると、ここでもヴェンドラーメは少し離されながら…ペース走で粘りを見せて戻ってくる。
一方その頃、メイン集団ではイネオスがペースアップを敢行。
リタイアしたポートの代わりにパヴェル・シヴァコフが猛牽引を見せて、集団の絞り込みを図っている。
そしてアタックを仕掛けたのはカラパス!
その背中を追えるのは、やはりヒンドレーとミケル・ランダ(バーレーン・ヴィクトリアス)のみ。
今大会ここまで何度も見てきた、総合上位3人による山岳決戦に。
先頭の5人は、結局ひと塊のままフィニッシュ付近へとやって来る。
残り200m、先頭はシュミット。
フィニッシュ直前に鋭角コーナーがあるので、そこに先頭に飛び込むべくボウマンが真っ先にスプリントを開始!
残り50mで鋭角コーナー、インコースに位置付けるシュミットに被せるようにボウマンが先頭で進入、シュミットは行き場をなくして若干バイクのコントロールを失ってしまう…!!
この動きに巻き込まれて、ヴェンドラーメとヴァルテルは大きく膨らんでコースアウト…。
勝負権を失った後続を尻目に、ボウマンが余裕のフィニッシュ!!
ボウマン、山岳賞獲得に自ら花を添えるステージ2勝目!!
最後のライン取りは少し議論を呼んだけれども、先頭でコーナーに進入していたという判定か、お咎めなし。
脚を残していたっぽいシュミットなんかとしては悔しいだろうけれども…この日のボウマンが強かったのも事実。
何にせよ、ボウマンはこれで完走すれば山岳賞の獲得が確定!
総合エースを失ったユンボとしては、ステージ2勝と合わせてできる限りの事はしてみせた。
そして後方の総合上位3人は…この日もタイム差無しでのフィニッシュ。
チーム力も含めて拮抗した力を持つ3人、残すは厳しい山岳レイアウトの翌第20ステージと、最終第21ステージの個人タイムトライアル。
果たして、どのような勝負が繰り広げられるのか楽しみだ。