ファンが待ち望んでいた姿
1週目最大の難所、絶えずアップダウンを繰り返してから1級山岳へとフィニッシュする第9ステージ。
コースの終わりにそびえ立つ1級山岳は、なんとラスト1.6kmが未舗装路区間であり、しかも最大勾配14%の箇所もその未舗装路区間に登場するという凶悪さ。
間違い無く、総合争いが巻き起こる。
レースは開始から約2時間以上もの間、数人が逃げては吸収されるのを繰り返すという、とんでもなく落ち着かない展開に。
山岳賞でトップを走るジーノ・マーダー(バーレーン・ヴィクトリアス)が逃げに乗ればライバルチームが引き戻し、総合上位のダミアーノ・カルーゾ(これまたバーレーン)やダニエル・マルティネス(イネオス・グレナディアーズ)が逃げを試みれば当然他のチームが黙っている訳が無い…。
そんなあわただしい展開の中、マーダーは上手いタイミングで一時的に先行して最初の2級山岳を先頭通過、18ptの山岳ポイントを獲得する。
レースも残り80kmになろうかという辺りで、やっと17人の安定した逃げが形成される。
そしてこの逃げには山岳賞争いで2位につけるジェフリー・ブシャール(AG2Rシトロエン)が入ったのに対して、首位のマーダーはメイン集団に取り残されてしまう。
一方のメイン集団は、総合リーダーのアッティラ・ヴァルテルを抱えるグルパマFDJが牽引して、逃げとのタイム差を3分ほどにコントロール。
グルパマとしてはなんとかヴァルテルのマリア・ローザを守りたいところだけれども、残り40kmを切って2級山岳に入ると、グルパマの代わりにイネオスが牽引を開始。
イネオスの牽引はこの日も強力で、足並みがそろわずに分裂した逃げとの差を徐々に縮めていく。
2級山岳の先頭を進むのは、逃げから飛び出していたブシャールとサイモン・カー(EFエデュケーション・NIPPO)の2人。
ブシャールはしっかりと山頂を先頭通過して山岳ポイントを獲得し、先ほど3級山岳を先頭通過した際のポイントと合わせて、マーダーを抜き去り山岳賞争いのトップに躍り出た。
逃げから遅れてしまった追走集団から、先頭の2人に追いつこうとバウケ・モレマ(トレック・セガフレード)、マイケル・ストーラー(チームDSM)、クーン・ボウマン(チーム・ユンボ・ヴィスマ)の3人が抜け出し、新たな追走集団を形成したのが残り16km辺り。
先頭では残り10kmを切った辺りでブシャールがカーを突き放して独走を開始して、追走の3人とのタイム差は15秒強、メイン集団とのタイム差は2分強ほど。
残り7kmを切ると追走集団からボーマンが飛び出して、単独でブシャールを捕まえようと差を縮めていく。
一方、メイン集団はイネオスのジョナタン・ナルバエスが猛牽引を見せ、先頭との差を1分ぐらいにまで縮めてきている。
これは…逃げ切るか微妙なタイムになってきた?
残り1.6km、いよいよ問題の未舗装路区間に突入すると、ボーマンがブシャールに追いついて先頭は2人に。
メイン集団は相変わらずイネオスが牽引、ナルバエスに続いてジャンニ・モスコンが…もの凄い勢いの猛牽引を開始!!
一気に先頭とのタイム差を縮め、気が付けばもう15秒差まで迫っている!!
残り600m、アレクサンドル・ウラソフ(アスタナ・プレミアテック)が加速するも、これは決まり切らない。
直後、カウンターでイネオスのエースが、エガン・ベルナルが満を持してアタック!!
元々はマウンテンバイクの選手だったベルナルは、他の多くの選手が苦しむ未舗装路を全くものともせず、とんでもない勢いでかっとんで行く!!
ウラソフを千切り、唯一食らいついてきたジュリオ・チッコーネ(トレック)も重いギアに入れ直しさらに加速して引き離し、そして先頭の2人も一瞬でぶち抜く!!
このリプレーですよ!
— J SPORTSサイクルロードレース【公式】@ジロ開催中🇮🇹 (@jspocycle) May 16, 2021
まさに疾風怒濤
Cycle*2021 ジロ・デ・イタリア 第9ステージ
【カステル・ディ・サングロ 〜 カンポ・フェリーチェ】158km
~J SPORTSオンデマンドでLIVE配信中~https://t.co/y8fXfKx5x9#Giro #jspocycle pic.twitter.com/pvlYiwVxG9
ベルナルはそのまま勢いを失わず、最後まで踏み切ってフィニッシュ!!
圧倒的な強さ!!
2019ツール覇者のベルナル、復活を告げる圧巻のステージ勝利!!
本気で踏んだら誰も追いつけない登坂力、これこそがベルナルの真骨頂!!
ファンはこの瞬間を待っていたぞ!!
ベルナルは、これが意外にもグランツール初勝利(2019年ツール第19ステージは悪天候で途中打ち切りのため「勝者なし」扱い)。
そして、レース後のインタビューでは感極まって涙を流す姿も。
この1年はケガで苦しんだ分、嬉しさや感動もやはり大きい訳だ…。
本当に、苦しい状況を乗り越えてよく頑張った!
おめでとう!!
そして、ステージ前まで総合首位だったヴァルテルは49秒遅れ、総合2位だったレムコ・エヴェネプール(ドゥクーニンク・クイックステップ)が10秒遅れてフィニッシュしたため、ボーナスタイムも含めて、ベルナルが総合首位に浮上!
圧倒的な個の力、最強のチーム力、そして3週間を戦い抜いて勝った経験と、全ては整っている!
このまま総合優勝まで駆け抜けろ!!
頑張れベルナル!!