サプライズ連発のツール前哨戦
ツール・ド・フランスを見据えた大事な前哨戦、クリテリウム・デュ・ドーフィネ。
タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)とプリモシュ・ログリッチ(チーム・ユンボ・ヴィスマ)というツールの大本命2人が出場しないという意味では、多少物足りなさがあるのは事実かもしれない。
それでも、ゲラント・トーマス、テイオ・ゲイガンハート、リッチー・ポートというイネオスグレナディアーズの3人や、こちらもトリプルエース体制のモビスターからはアレハンドロ・バルベルデ、ミゲルアンヘル・ロペス、エンリク・マス、他にもステフェン・クライスヴァイク(ユンボ)、ウィルコ・ケルデルマン(ボーラ・ハンスグローエ)、ナイロ・キンタナ(アルケアサムシック)と、グランツール総合表彰台経験者が多数出場するこのレースは、やはり間違いなくツールに向けた注目の一戦なのは間違いない。
「注目のグランツール総合表彰台経験者」という意味では、クリス・フルーム(イスラエル・スタートアップネーション)の回復具合も気になるところ。
2年前のこのレースで(正確には個人TTの試走中に)生命の危機もあるような大クラッシュに見舞われてから、レースに復帰はしたものの以前のパフォーマンスを取り戻せていないフルームの状態は、果たしてツール出場に足り得るレベルまで戻っているのだろうか…。
第1ステージ
第1ステージは、ピュアスプリンターには厳しそうな、それでいて「スプリントにならない」と言い切れるかは微妙な、予想が難しいレイアウトの丘陵ステージ。
この日の逃げは4人、そしてその中で明らかに元気があったのが、ロット・スーダルのブレント・ファンムール。
この23歳の若者は、7つあるこの日のカテゴリー山岳全てを先頭通過するだけでなく、最後から2つ目の山岳では共に逃げるライバルを振り切り、ステージ勝利を目指して独走を開始。
一方のメイン集団は、中盤はUAEやバーレーン・ヴィクトリアスといったスプリントに持ち込みたいチーム、そして終盤はイネオスが牽引してペースをコントロール。
マッズ・ピーダスン(トレック・セガフレード)やブランドン・マクナルティ(UAE)という意外な脱落者が出るぐらいにはペースが上がるけれども、終盤になって単独で先頭を逃げるファンムールとの差はなかなか縮まらない。
流石にイネオスにペースを任せている状況ではなくなった他のチーム、モビスター、グルパマFDJ、チーム・バイクエクスチェンジ辺りも牽引に加わるけれども…それでもファンムールとの差は思うように縮まらない。
ファンムールの勢いは、最終盤でも衰えない。
残り5kmで50秒だったタイム差が、残り3kmを切っても…ほぼ変わらない!
まさかまさかの、ファンムールの逃げ切り勝利!!
1週間前のレースで「オフィシャルモトの誘導ミス」というアクシデントで勝利を逃していたファンムール、嬉しいプロ初勝利!
更に、総合リーダー、山岳賞、ポイント賞、ヤングライダー賞と、4賞独占!
このファンムールの特大のリザルトに対して、チームの先輩で現役屈指の逃げ屋であるトーマ・デヘントから、なんと直々に「ニュー・デヘント」に指名されるサプライズも。
You heard it here first. @Brentvanmoer is the new Thomas De Gendt.
— Thomas De Gendt (@DeGendtThomas) May 30, 2021
果たして「デヘント2世」となれるか、今後に注目!
第2ステージ
第2ステージは、獲得標高が3000m以上とアップダウンの多い丘陵ステージ。
この日の逃げは5人。
昨日鮮烈な勝利を挙げたファンムールのチームメイトであるマシュー・ホームズが、1級を含む序盤3つの山岳を先頭通過に成功、ステージ終了後のの山岳賞獲得を確定させる。
一方のメイン集団は、この日も主にイネオスが牽引役を担い、そこにバーレーンも加わるような形でコントロールして徐々に逃げとの差を詰めていき、気が付けば先頭とのタイム差は3分を切っている。
しかし、そこから終盤の2つの山岳へ向けたダウンヒルで、ルーカス・ペストルベルガー(ボーラ・ハンスグローエ)とシェーン・アーチボルド(ドゥクーニンク・クイックステップ)の2人が抜け出す。
元チームメイトの2人は協力してペースを上げ、メイン集団との差を再び3分以上に戻す事に成功。
そして2級山岳に入る手前の勾配で、ペストルベルガーがアーチボルドを突き放して独走を開始。
メイン集団とのタイム差はまだ2分半ほど残っていたけれども、メイン集団は2級山岳と4級山岳、ほぼ繋がっている2つの連続した登坂でペースを上げてくる。
しかし、逃げるペストルベルガーもかなりの粘りを見せ、タイム差は残り3kmで約20秒。
そして、そこから…なかなか縮まらない!
残り1kmでも、まだ20秒のまま!!
前日に続いてのサプライズ!
ペストルベルガーが逃げ切り勝利!
ペストルベルガーは2017年のジロ・デ・イタリア開幕ステージでの逃げ切り以来の勝利!
今回の逃げ切りは、なんと「数週間前から計画していたもの」との事。
出場選手リストを見て「スプリンターが少ない(積極的に牽引するチームが少ない)からチャンスがありそう」だと判断したらしいけれども、それでしっかり勝つのは凄すぎる!
そして、この日のタイム差でリーダージャージも獲得。
インタビューやポディウムでの陽気で楽しそうな姿は、見ているこっちも嬉しくなるような素晴らしいものだった!
いや~、いいもの見られたな~。
第3ステージ
恐らく今大会で最も難易度の低い、それでもフィニッシュ付近はピュアスプリンターには厳しそうなレイアウトの第3ステージ。
流石にこのステージで「本気で」逃げ切り勝利を狙うような選手はいないようで、ロイック・ヴリーヘン(アンテルマルシェ・ワンティゴベールマテリオ)とオマール・ゴールドスタイン(イスラエル・スタートアップネーション)の2人だけが逃げる展開に。
メイン集団は総合リーダーを抱えるボーラが中心となってコントロールして、最大で4分ほどあったタイム差を残り50km辺りで1分にまで縮めてくる。
残り30kmを過ぎると、ヴリーヘンが余力の無くなったゴールドスタインを切り捨て、少しでも長く逃げようと試みるけれども、このヴリーヘンの動きも残り20km辺りで集団がキャッチ。
今大会初の集団スプリントに向けて、レースは進んでいく。
残り3km、イネオス、ロット、UAE、トレック、ドゥクーニンク、ボーラ、ユンボと、スプリント狙いのチームと総合狙い(危険回避)のチームが入り乱れて集団前方で位置取りを激しく行う展開に。
残り800mのラウンドアバウトを抜けて、先頭はイネオスのミハウ・クフィアトコフスキ、そしてその後ろにはステージ優勝候補のソンニ・コルブレッリ(バーレーン)。
残り400mでクフィアトコフスキが牽引を終えると、コルブレッリは先頭には出たがらず、逆サイドからUAEの選手が2人と、アスタナ・プレミアテックのアレックス・アランブルが前方へと出てくる。
残り300m、アランブルが少し早めに仕掛けると、コルブレッリは「待ってました」とばかりにその背中に張り付く!
コルブレッリは残り100mでアランブルの横に並び、そして抜き去る!!
第1・第2ステージと連続で2位だったコルブレッリ、3度目の正直となる勝利!!
登坂力で粘るアランブルをスプリント力で、そして仕掛けるタイミングで見事に差し切った!
ギリギリまで我慢した判断力、お見事!
第4ステージ
今大会唯一の個人TTステージは、中盤以降はアップダウンが続くという、あまり個人TTらしくないレイアウト。
54番出走で意外な好走を見せたのが、ヨナス・ヴィンゲゴー(ユンボ)。
TTに強いマクナルティでさえ更新できないようなタイムで走り、しばらくはヴィンゲゴーが暫定トップに居座る事に。
終盤に入り総合勢の出走が始まると、やはりトップ選手による好走、そして予想外の展開が連続する。
まずは、リッチー・ポート、続いてウィルコ・ケルデルマン、更にはゲラント・トーマスが中間計測のトップタイムを更新する中、中間計測ではトーマスより16秒遅かったヨン・イサギレ(アスタナ・プレミアテック)がトップタイムを記録!
そして予想外の展開はヨン・イサギレの好走だけでは無く、なんと中間計測で断トツのトップタイムをマークしていたトーマスの記録が伸びず、最終的にステージ10位となるタイムでフィニッシュ。
更に予想外の展開は続く…というか、ここからが最大のサプライズ。
誰もがあまり期待していなかったであろう(失礼!)アレクセイ・ルツェンコ(アスタナ)が、まさかのトップタイムを叩き出す!
まさかまさかの、ルツェンコの個人TTステージ勝利!!
正直言って、今まで見てきた個人TTの勝者の中で、一番予想外だったかもしれない…。
ルツェンコの中間計測はケルデルマンから3秒遅れと、ヨン・イサギレ同様に前半は抑えた走りをしていた模様。
これはコース終盤に起伏があるレイアウトのこなし方を上手く見極めたアスタナの戦略勝ちかな?
それとも、ジロ・デ・イタリアの個人TTでアレクサンドル・ウラソフも好走を見せていたので、アスタナがチーム全体としてTT能力を向上させてきている?
いずれにしても、アスタナはルツェンコとヨン・イサギレのワンツーフィニッシュおめでとう!
そしてこの日最後のサプライズは、リーダージャージを失うと予想されていたペストルベルガーが、ルツェンコから1秒差でギリギリ総合リーダーの座をキープした事!
いや~、何が起こるか分からないね~。
第5ステージ
一応「平坦」カテゴリーだけれども、獲得標高2360m、カテゴリー山岳が5つ、そしてフィニッシュから11.9km手前の2級山岳は登坂距離1.4km・平均勾配11%・最大勾配23%という、ピュアスプリンターはまず残れないようなレイアウト。
スタート直後の3級山岳のダウンヒルで形成された逃げに乗った選手は8人いたけれども、道中でじわじわ人数を減らしていき、フィニッシュまで40kmも残した地点で集団に捕まってしまう。
直後の3級山岳でスヴェンエリック・ビストラム(UAEチームエミレーツ)が単独で抜け出しを試みるも、これも最後の2級山岳の入り口辺りでメイン集団に吸収される事に。
そして、問題の2級山岳。
集団を牽引するのはイネオスだけれども、ペースはそこまで速いわけではなく、あまり激しい絞り込みは行われていない様子で(もちろん、登れない選手は落ちていくけれども…)、コルブレッリなんかは集団に残っている。
そんな中、単独で飛び出したのはローソン・クラドック(EFエデュケーション・NIPPO)。
そのまま山頂を先頭で通過して、その独走力を活かして下りでも先行する形に。
この動きを許すまいと集団を牽くのは、2級山岳でコルブレッリを残す事に成功したバーレーン。
バーレーンはディラン・トゥーンスやジャック・ヘイグといった総合系のエース格の選手を惜しみなく使って、残り2km辺りでクラドックを捕まえる事に成功する。
ラウンドアバウトが連続で登場するテクニカルなレイアウトの中、先頭を牽くのはイネオスのミハウ・クフィアトコフスキ、そしてそのすぐ後方ではバーレーンのコルブレッリがスプリントに備えている。
残り1km、イネオスのトーマスがスルスルっと前方に出てきたかと思ったら、まさかの鋭角コーナーを利用したアタック!
先頭を牽いていたクフィアトコフスキがタイミングを合わせてペースを緩めた事もあり、一気にギャップが開く!
コルブレッリのスプリントで勝負をしたいバーレーンはアシストを使い切っていて、なかなかその差が詰まらない!
残り200m、まだトーマスとの差はあるけれどもコルブレッリがスプリントを開始!
流石に勢いの落ちてきたトーマスと、ギリギリまで溜めていたコルブレッリ、その差はグングン縮まっていくけれども、残り距離も僅か…!
一瞬振り返って後方を確認したトーマス、コルブレッリはもう真後ろに迫っている!
コルブレッリが横に並びかけ、トーマスの前に出ようかと言うその瞬間、2人はほぼ同時にフィニッシュ!!
手に汗握るギリギリの勝負、勝ったのはゲラント・トーマス!!
まさかのコーナーを利用したアタック、そしてまさかの平坦ステージでの勝利!!
いや~、これはとんでもなく面白かった!!
そしてトーマスはボーナスタイム10秒のボーナスタイムを獲得!
前日の個人TTで失ったタイムを、すぐさま取り返して見せた!!
第6ステージ
アルプス山岳3連戦の初日は、終盤に2級・2級・3級・3級(最後の3級2つはほぼ繋がっていて、実質2級山岳ぐらいの難易度?)とカテゴリー山岳が連続するレイアウト。
総合勢に大きな差が付くような厳しさは無いようにも見えるけれども、調子の悪い選手は脱落するかもしれない。
スタート直後からハイペース(50km/h以上!)のアタック合戦が続き、14人の逃げが形成されたのは1時間以上経ってから。
総合2分40秒遅れのグレッグ・ファンアーベルマート(AG2Rシトロエン)が逃げに乗ったため、あまり大きなリードは許されないままレースは進んでいく。
序盤は総合1位・2位を抱えるボーラとアスタナがメイン集団を牽引、中盤以降にはユンボが誇る牽引役トニー・マルティンもコントロールに加わる。
全体的にハイペースな展開に、逃げもメイン集団も2つの2級山岳でどんどん人数を減らしていき、気が付けば逃げはクラドック1人、メイン集団も50人を切るぐらいになっている。
クラドックは最後から2つ目の3級山岳も先頭通過をするけれども、メイン集団とのタイム差はわずか15秒。
残り3km辺りでクラドックが捕まると、総合上位陣による激しいアタック合戦がスタート!
ミゲルアンヘル・ロペス、ヨン・イサギレ、ダヴィド・ゴデュ(グルパマFDJ)、ゲイガンハート、クライスヴァイク、セップ・クス(ユンボ)と、次々と有力選手によるアタックが掛かる激熱な展開に!
ただ、最後の3級山岳は勾配の厳しい区間が短く、残り1.6kmで勾配が緩むとメイン集団はまた1つに合流し、最後は登りスプリントの流れに。
集団先頭で全力牽きを見せるロペス、そしてその少し後ろの絶好のポジションに登りスプリントで圧倒的な強さを誇るバルベルデと、モビスターは狙い通りの展開。
ただ、ロペスの真後ろにはゲイガンハートとトーマスというイネオスのダブルエースも控えている。
ロペスが残り400mで牽引を終えて下がるのと同時に、ゲイガンハートが早めのアタック!
そしてトーマスは敢えて少し脚を緩めてギャップを作るという、前日に続くイネオスのコンビネーションアタック!!
ゲイガンハートの踏みは軽快で、「このまま行けるかも」と思うほどだったけれども、後ろからバルベルデがじわじわと追い上げてくる。
バルベルデは残り100mでゲイガンハートの背中を捉え、そして最後の最後に前に出る!!
これぞベテランの妙技!
勝負所を完全に把握し切っていたバルベルデによる貫禄の勝利!!
しっかり背中を捉えるペースで追いかけ、差し返されないように最後に抜き去るという、完璧なレース運び!
いや~、参りました。
そしてバルベルデは、13年振り(!!)となるドーフィネのステージ勝利!
御年41歳、まだまだ最前線で戦い続ける姿に感動!
第7ステージ
アルプス3連戦2日目は、4級・超級・2級を超えてからの超級フィニッシュという、今大会のクイーンステージ。
前日同様に激しいアタック合戦(50km/h以上で2時間…)の末に5人の逃げ、そして10人の追走集団が形成される展開に。
最初の超級山岳で先頭と追走は人数を減らしながら合流し、山頂を先頭で通過したのはクラドック。
クラドックは連日の積極的な走りで山岳賞トップに躍り出る事に成功し、更には続く2級山岳も先頭通過して、山岳賞獲得への意志をはっきりと見せてきた。
一方のメイン集団は、序盤は前日に総合リーダーとなったルツェンコを抱えるアスタナ、2級山岳通過後はモビスターが主に牽引役を担う形に。
そしていよいよ距離17km・平均勾配7.4%の超級山岳に突入。
カルロス・ベローナ(モビスター)が牽くメイン集団は、最後まで逃げ残っていたケニー・エリッソンド(トレック)とピエール・ローラン(B&Bホテルス・p/b KTM)の2人を残り11kmを切った辺りで吸収。
ベローナの牽引が終了すると前日の勝者バルベルデが先頭を牽き、当たり前かもしれないけれども、モビスターは総合タイムの最も良いロペスで勝負を仕掛ける構え見せる。
残り8.5kmでバルベルデが仕事を終えて一旦下がると、ここでなんとイネオスのポートがアタック!
この動きに反応したのは、マス、クス、マーク・パデュン(バーレーン)の3人のみで、メイン集団の牽引はアスタナのヨン・イサギレが担う格好に。
残り7.8km、先頭でパデュンが加速すると、付いていったのはクスのみで、ポートとマスは10秒程後方でペースを刻む。
パデュンは残り4.7kmでクスも突き放し、単独で先頭をひた走る!
残り2.5km、メイン集団から抜け出したロペスとベン・オコーナー(AG2R)がポートとマスに合流するけれども、先頭のパデュンはその20秒前方。
パデュンの踏みは最後まで勢いを失わず、そのままフィニッシュ!
ドーフィネのクイーンステージという晴れ舞台で、ワールドツアー初勝利!!
逃げ切りでは無くメイン集団からの飛び出し、それもポート、マス、クスといった超一流のクライマーを突き放しての勝利という、驚きの内容!!
フィニッシュ手前のリアクションも含めて、本当に素晴らしかった!
おめでとう!
そして後方では、白熱の総合争いが繰り広げられる!
マスが追いついてきたロペスの為に牽引を見せ、オコーナーをふるい落とし、そしてクスを捕まえる事に成功。
しかし、ここから強さを見せたのはポート。
残り400mから加速してマスを突き放すと、そのままダンシングでロペスも引きちぎり、ステージ2位でフィニッシュ!
これで、ポートが総合リーダーの座に!!
イネオスは2日前のトーマス、前日のゲイガンハート、そしてこの日のポートと日替わりで積極的な動きを見せ、そしてリーダージャージも獲得。
やはりその力は、紛れもなくロードレース界の頂点と言っていいだけの強さを見せている。
残すはあと1ステージ、一体どんなレース運びを見せてくれるのか。
第8ステージ
最終日は147kmという短い距離ながら、最終盤の超級を含む6つのカテゴリー山岳を超えていく、なかなか厳しいレイアウト。
この日の逃げは、前日勝者であり山岳賞2位にランクインしているパデュンを含む19人。
超級山岳に突入すると、パデュンはギヨーム・マルタン(コフィディス)とパトリック・コンラッド(ボーラ)と共に逃げ集団から飛び出すだけでなく、ほどなくして2人を突き放して2日連続となる独走を開始!
超級山岳を難なく先頭通過してまずは山岳賞を確定させ、更にはステージ勝利目指してペダルを踏み続ける!
一方のメイン集団も、超級山岳に入ってから動きが活性化。
まずは総合では少しタイムを失っているクライスヴァイクやキンタナ、更には総合6位(+38秒)のロペスもアタックを見せるけれども、メイン集団をコントロールするイネオスは落ち着いてペース走で対応して、これらの動きをしっかり吸収する。
頂上付近で総合5位(+34秒)のヘイグが飛び出すと、イネオスもすかさずトーマスがマーク。
イネオスは総合首位のポートを総合3位(+29秒)のトーマスが守るという、流石は完璧な流れ…と思っていたら、なんとトーマスがダウンヒルで落車!?
幸いトーマスはダメージが少なかったようですぐさま再スタートするけれども、なかなか集団に追いつけない。
フィニッシュまでのカテゴリーのついていない登坂に、ポートはタイム差1分以内のライバルに囲まれながら、裸の状態で突入する事に…。
総合逆転を狙って、総合4位(+33秒)のケルデルマンや総合7位(+38秒)のヨン・イサギレがアタックを仕掛けると、もちろんポートは自ら反応して潰しに行く。
これが続くとどこかでポートも限界が来るであろう厳しい展開に。
しかし、アタックが続き一旦牽制状態になってペースが落ちると、トーマスが集団に復帰!
トーマスはそのまま集団の先頭を牽き、ペースを作ると共にライバル達を牽制し続ける!
メイン集団の2分前方をひた走るパデュンは、コンラッドやヴィンゲゴーの追走を寄せ付けず、余裕の独走状態!
残り1kmを切ると勝利を確信し、表情を緩めてガッツポーズを見せたりしながらフィニッシュまでの時間を楽しんでいる!!
喜びを全身で表現しながら、2日連続の独走勝利!!
ドーフィネの山岳ステージで2連勝とか、ちょっと凄すぎやしないかい!?
これはまた、えらい選手が出てきたのかも…。
後方のメイン集団は、そのままトーマスが先頭でフィニッシュ!
これで、ポートの総合優勝が確定!!
2013年、2017年と2度の総合2位を経て、遂にドーフィネ総合優勝!!
ポート、おめでとう!!
そして総合2位はルツェンコ、総合3位はトーマス!
ルツェンコの総合2位は、正直言ってかなり意外。
TTも登坂も、弱くはないけど今までは決して「超1流」ではない印象だったけれども、まさかのTTでステージ勝利、そして山岳ステージもメイン集団でフィニッシュとは…。
トーマスは総合3位に入っただけではなく、最終ステージでポートを守り切った走りは、本当に素晴らしかった!
相変わらずの「落車癖」が出てしまったのは少し不安要素かもしれないけれども、ツールに向けて仕上がりは上々と言っていいはず!
やっぱりイネオスが強い!
改めて、総合順位を確認。
総合優勝:リッチー・ポート(イネオス・グレナディアーズ)
総合2位:アレクセイ・ルツェンコ(アスタナ・プレミアテック)
総合3位:ゲラント・トーマス(イネオス・グレナディアーズ)
なんだかんだ言って、やっぱりイネオスが強い!
ゲイガンハートも総合10位にいるし、アシストも強力だった印象。
ツールではポートはアシストに回る予定みたいだけれども、果たしてどうなるか。
展開次第では早めのエース交代だってできる選手層の厚さと質は、未だに他チームには真似できないレベルにあると思う。
イネオス以外では、ケルデルマンやロペス辺りも好調そうだったし、モビスターとアスタナはチーム力も上手く発揮できていた印象。
特にモビスターは、「日替わり」でアシストをさせて「脚試し」をしていたようにも感じたし、ツールに向けて良いレースをしていたと、個人的には思う。
「エース不在」のユンボはイマイチで少し心配だけれども、まぁプリモシュ・ログリッチが入ればある程度は機能するような気もするかな。
ただ、今シーズンを通してクスの調子が上がっていないのは不安要素ではあるか…。
いずれにしても、今回のドーフィネはツール前哨戦としてとても見応えがあったと思う。
ツール開幕まであと僅か、本番も熱戦を期待したい!
それでは、また!!