こんな激熱なレースが日本で繰り広げられるとは!
新型コロナウイルスの影響で1年延期、そして直前にも色々とゴタゴタがあった東京オリンピックが遂に開幕!
開催が100%歓迎されてはいない雰囲気もあるけれども、世界トップの選手が日本で本気のレースを行うという事実には、熱くならざるを得ないというのが正直なところ。
そして、日本で開催という事だけでなく、設定されたコースがこれまた熱い!
武蔵の森公園をスタートして西に進み、道志みち、富士山麓、三国峠などを経て、富士スピードウェイにフィニッシュする全長234km、獲得標高はなんと4865mというもの凄い難易度のレイアウト…!
世界最高峰の選手達が自国の誇りを掛けて、一体どんな熱戦を繰り広げてくれるのか。
その中で、日本代表の新城幸也と増田成幸がどんな走りを見せてくれるのか!
神社の境内などを通過した10kmのパレードランを終え、多摩川に架かる是政橋でいよいよアクチュアルスタート!
8人に逃げが早々に確定して、メイン集団とのタイム差は一気に開いていく。
逃げに最大で20分もの差を与えたメイン集団を牽引するのは、前回覇者グレッグ・ファンアーベルマート(ベルギー)とヤン・トラトニック(スロベニア)。
緩めの勾配が続く道志みちでは、ゲラント・トーマス(イギリス)、テイオ・ゲイガンハート(イギリス)などの数人が落車した以外は特に大きな動きが無く、落車した選手達もとりあえずは集団に復帰を果たす。
ただ、せっかく強力な選手を4人揃えていたイギリスは、トーマスがかなり傷んでしまった様子を見せている…。
富士山麓の登坂に入ると、メイン集団でも動きが出てくる。
ここまで献身的な牽引を行ってきたファンアーベルマートは力を使い果たして後退するも、同じく序盤から牽引を続けていたトラトニックが集団のペースを作り続ける。
そして、ファンアーベルマートを失ったベルギーチームは残りの4人、ワウト・ファンアールト、ティシュ・ベノート、レムコ・エヴェネプール、マウリ・ファンセヴェネントがしっかりと集団前方で隊列を組んでいる。
こうやって改めて見てみると、やっぱりベルギーはもの凄くいい選手を揃えてきたな…。
富士山麓の登坂区間の終盤、レースを動かしてきたのはイタリアチーム。
ジュリオ・チッコーネが集団先頭に出てペースを上げて、アルベルト・ベッティオール、ダミアーノ・カルーゾ、ヴィンチェンツォ・ニバリがしっかりとその後方で隊列を組んで待機。
このチッコーネのペースアップで集団からはポロポロと脱落者が出て…。
…あ!
新城と増田が遅れていく…。
ただ、その後の長い下りで結構な数の選手が集団復帰に成功して、その中には新城と増田の姿もあったので、とりあえずは一安心。
フィニッシュ地点になる富士スピードウェイを一旦通過して、散発的なアタックはあったもののメイン集団はほぼそのままの形を維持し、更には逃げ集団も吸収してレースは振り出しに。
そしていよいよ今レース最大の勝負所、三国峠へと突入していく。
登坂距離6.8km・平均勾配10.1%という難所でイタリアチームやベルギーチームがペースを作ると、メイン集団からどんどん選手が零れ落ちていく厳しい展開に。
アレハンドロ・バルベルデ(スペイン)やリッチー・ポート(オーストラリア)、エヴェネプールといった実力者も遅れていく中で、新城も増田もメイン集団から離されてしまう…。
急勾配区間で仕掛けたのは、先週ツール・ド・フランス2連覇を達成したばかりのタデイ・ポガチャル(スロベニア)!
シッティングで静かにペースを上げて抜け出しを図ったポガチャルに反応できたのは、ブランドン・マクナルティ(アメリカ)とマイケル・ウッズ(カナダ)の2人。
このポガチャルという大本命を含んだ危険すぎる3人を放置しておく訳にはもちろんいかず、メイン集団から各チームのエースが自ら追いかけて合流し、三国峠を下ってからの山中湖畔で超精鋭13人の先頭集団が形成される事に。
この超精鋭13人は以下の通り。
- タデイ・ポガチャル(スロベニア)
- ブランドン・マクナルティ(アメリカ)
- マイケル・ウッズ(カナダ)
- ワウト・ファンアールト(ベルギー)
- リチャル・カラパス(エクアドル)
- ヤコブ・フルサン(デンマーク)
- ミハウ・クフィアトコフスキ(ポーランド)
- リゴベルト・ウラン(コロンビア)
- バウケ・モレマ(オランダ)
- アダム・イェーツ(イギリス)
- アルベルト・ベッティオール(イタリア)
- マクシミリアン・シャフマン(ドイツ)
- ダヴィド・ゴデュ(フランス)
精鋭も精鋭、世界のトップ選手たちが日本で熱すぎるレースを繰り広げている!
なんという光景だ…!
このまま13人でフィニッシュ地点に雪崩れ込んでのスプリントなら、先日のツール最終日のスプリントを制したファンアールトが明らかに有利なこの状況で、なんとか突破口を開こうと平坦区間で幾度となくアタックが繰り返される!
クフィアトコフスキ、モレマ、ウッズ、フルサン辺りが積極的に動くも、互いに警戒度が高くてアタックが決まり切らないもどかしい展開が続く中、レースが大きく動いたのは残り25km地点。
マクナルティのアタックにカラパスが追随すると、2人での抜け出しに成功!
置いていかれた11人は牽制し合ってしまい、少しギャップが開いた!
独走力に長けたマクナルティと、抜群の登坂力を有するカラパスの組み合わせ、これは面白いぞ!!
「逃げる」という共通の目的のためにガンガンローテーションを回して踏み続ける先頭の2人に対して、追走の11人はお互いに牽制してしまいペースがなかなか上がらない!
50秒近くまで開いてしまったタイム差にファンアールトが業を煮やしたのか、リスク度外視で猛追走を掛けてタイム差を20秒にまで縮めてみせるも、先頭に追いつけないまま富士スピードウェイに突入!
残り6km、富士スピードウェイ内の登りで仕掛けたのはカラパス!!
マクナルティは既に限界が近かったのか、全く追う事が出来ない!!
追走集団はカラパスを捕まえる為の協調ができずに散発的なアタックが繰り返されるだけで、ペースは上がらず逆にタイム差が広がっていく!!
カラパスはそのまま独走を続け、セイフティーリードを保ったまま最終ストレートへ!
残り300mで後ろを振り返ると、最終コーナーをやっと抜けた追走集団ははるか後方!
カラパスは勝利を確信し、ハンドルを叩いて喜ぶ!!
最後は全身で喜びを爆発させながらのフィニッシュ!!
東京オリンピック男子ロードレースを制したのは、エクアドルのリチャル・カラパス!!
三国峠、山中湖畔、そして富士スピードウェイと、勝負所を逃さない抜群の嗅覚を発揮して、見事な独走勝利!
そしてカラパスは、エクアドル人としては史上2人目となるオリンピック金メダル獲得者に!!
おめでとう、カラパス!!
そして後続集団は、メダルを懸けたフィニッシュスプリントの展開!!
スプリントでは圧倒的な実績を誇るファンアールトが前に出され、ファンアールトはフェンス際を走行して片側のラインを消す冷静さを見せている。
誰がどこで飛び出すのか、息をのむようなスローペースでの牽制状態に。
ファンアールトの真後ろにポガチャル、その真横にはモレマがいて、後ろにウッズ、ウラン、ゴデュ、アダム・イェーツ、マクナルティと固まっているような形。
残り300m、少し早めにフェンスから一番遠い位置で仕掛けたのはアダム・イェーツ!
アダム・イェーツの後ろにはマクナルティが張り付き、ファンアールトはその動きを見てから落ち着いて自分のラインでスプリントを開始!
残り100m、ファンアールトの後方で力を溜めていたポガチャルがファンアールトの横に上がってくる!
ファンアールトとポガチャルが真横に並ぶ!!
ポガチャルの加速は鋭いが、ファンアールトも粘ってもう一伸びを見せる!!
これは際どいぞ…!!
カラパス独走優勝の後の、ポガチャルとファンアールトの激しい2位争い!#東京2020 #オリンピック #五輪 #自転車 #ロードレース pic.twitter.com/nNcFfsWP8G
— 週刊少年モンデー (@mondeeee) July 24, 2021
厳しい山岳を超えてから、この激熱のスプリント!!
写真判定の結果、数cmの差で勝ったのは…ファンアールト!
これでファンアールトが銀メダル、ポガチャルが銅メダル獲得!
おめでとう!
そして先頭のカラパスから約10分遅れて、新城幸也が35位でフィニッシュ。
残念ながら勝負に絡む事はできなかったかもしれないけれども、世界の最前線で戦う日本の第一人者として、堂々たる走りを見せてくれたと思う。
そこから更に9分ほど遅れて、増田成幸も84位でフィニッシュ。
選手選考では色々と大変だったけれども、しっかり完走してくれたのは本当に素晴らしい事だと思う。
2人とも、本当にお疲れさまでした。
いや~、本当に熱いレースだった!
日本で開催されたオリンピックという点を差し引いても、今年のベストレース候補に挙がるような、素晴らしいレースだったと思う!!
色々と厳しい環境の中で最高の戦いを見せてくれた選手達、そしてレースに携わった関係者の方々に、心から感謝したい!
本当に、素晴らしいレースをありがとう!!
願わくば、この素晴らしいレースがこれで終わるのではなく、多少形を変えてでもいいから「日本で開催されるラインレース」として何らかの形で残ってくれたら、本当に嬉しい。
今回のオリンピックは非常に難しい状況での開催というか、「オリンピックにどんな意義があるのか」という事が強く問われての開催だったと思うけれども、少しでもポジティブな要素が残ってくれれば嬉しいかな。
それでは、また!!